2016 Fiscal Year Research-status Report
科学概念と生活とのつながりを意識させる小・中学校理科教材モジュール集の開発
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15K00917
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Research Institution | Kyoto University of Education |
Principal Investigator |
広木 正紀 京都教育大学, 名誉教授 (30115977)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
村上 忠幸 京都教育大学, 教育学部, 教授 (20314297)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | カリキュラム / 科学概念 / リテラシー / 日常生活 / 自然環境 / 地球市民 / 水 / 食物 |
Outline of Annual Research Achievements |
「平成27年度 研究実績の概要」に述べたように、「自然環境とつながる日常生活」という視点から本研究に取り組んでいる。 この視点をより具体的にするために、生活を支える大切な基本要素として、「水と食」および「衣と住」に着目した。「水と食」は身体の生命活動を支える物的要素として、「衣と住」は、寒暑など外界の厳しい環境に対して、身体の“小規模気象環境”を調節する要素として、地球上の多様な自然環境に暮らす誰にとっても重要と考えたからである。 この考えを「科学リテラシー教育のカリキュラム開発」すなわち「基本的科学概念群の系統化」に活かす方策として、28年度は、「水と食」および「衣と住」がカリキュラムの柱となる骨組みづくりに、次のように取り組んだ。 1.平成27年度の「国内外の、過去及び現在のカリキュラム資料の調査」を通して抜き出した基本的科学概念に加え、「カリキュラムを直接扱っていないが、自然環境や人々の生活をテーマとした書籍や新聞記事などの諸資料からも、リテラシーとして大切だと判断される基本的科学概念を抜き出した。 2.1で抜き出した基本的科学概念が、2本の柱である「水と食」および、「衣と住」にどのようにつながっているかの検討を進め、カリキュラムの骨組み暫定案を作成した。 3.1で抜き出した基本的科学概念の獲得に寄与する活動教材の50モジュールについて草稿をつくり推敲に取り組んだ。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1.当初の研究計画では、基本的科学概念を抜き出す対象資料として、既成のカリキュラム関係資料だけを想定していたが、研究開始後、それでは不十分だと考えるようになった。そこで、カリキュラムを扱ってはいないが、「自然環境と人々の生活」をテーマとした文献資料(書籍や新聞記事など)や、フィールド調査からの情報も、科学概念を抜き出す対象とした。 2.海外出張についても、当初は教科書などカリキュラム資料の入手を主な目的にして計画していたが、1を踏まえてフィールド調査に重きを置くことにした。調査は、開発カリキュラムの基本要素のひとつである“水”の入手が日本に比べて困難な“乾燥”と“暑”とを特徴とする地域として、オーストラリアの中・西部を選んで行った。“食”についても、これらの地帯における、先住民アボリジニの食文化などをヒントに基本的科学概念を探った。 上記の2点について、研究の進展が当初の計画そのままでない部分もあるが、カリキュラムを構成する活動教材モジュールをこれまでに50テーマ設定し、草稿づくりに取り組んでおり、進捗状況は概ね良好と捉えている。
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Strategy for Future Research Activity |
1.29年度は開発カリキュラムの基本要素のひとつである“寒暑”の条件のうち“寒”に着目したフィールド調査をグリーンランドで行う。これらの地域の“衣と住”および“食”についての人々の工夫やイヌイットの食文化などをヒントに基本的科学概念を探る。(5月上旬に既に出張を済ませた) 2.カリキュラムを構成する活動教材モジュールとして設定した50のモジュールの草稿を、必要に応じ、観察・実験・フィールドワーク・教育実践等を通して推敲する。 3.「水と食」および「衣と住」を柱として暫定的に作成したカリキュラムの骨組み案を、科学概念と生活体験や自然体験とのつながりや、概念間のつながりを吟味することを通して、推敲する。 4.1,2,3を踏まえ、「水と食」および「衣と住」を柱としたカリキュラム骨格と、骨格の各所に活動モジュールを配した教材集(教師用)を作成する。
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Causes of Carryover |
1.当初の研究計画でノートパソコンの購入を計画していたが、個人所有のものが使える状態で、まだ購入していない。 2.当初、海外出張において多くの学校訪問を計画していた。しかし、「現在までの進捗状況」の欄で述べたように、自然環境などのフィールド調査を中心に行うことにしたので、計上していた学校訪問に伴う現地のコーディネート料を使用せずに済んでいる。 3.科研費での図書購入については、大学の図書として登録される手続きに一定の時間を要することなどが、研究開始後、分かってきた。書籍は早急の使用を要することが多いので、私費で購入することが増え、図書費を当初計上していたほど使っていない。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
1.「今後の研究の推進方策」の欄で述べたように、寒冷地の調査のためにグリーンランドへ10日間の出張を行った(5月上旬に既に終えた)。旅費の精算はこれからだが、航空機運航の遅延が3回繰り返されたことの影響で、最終的に航空賃と宿泊費と現地コーディネート料の計が90万円を超える見込みである。 2.教材モジュールの作成・推敲にあたり、観察・実験・フィールド調査・教育実践等に関わる機材や謝金(10万~20万円)。 3.活動教材モジュール集の印刷・製本費用(20万~30万円)。 4.プリンターのインクなど消耗品。
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