2017 Fiscal Year Research-status Report
生命40億年全史をタイムラインで可視化する科学教育コンテンツの開発
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15K00990
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
木村 政司 日本大学, 芸術学部, 教授 (00307886)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
渡辺 政隆 筑波大学, 広報室, 教授 (70356286)
工藤 光子 立教大学, 理学部, 特任准教授 (90594078)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 生命の多様性と共通性 / 生物系統樹 / 進化マップ / タイムラインの可視化 / 大陸移動 / 生命のつながり / 科学教育コンテンツ / ミュージアム |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでに類のない生物多様性のタイムラインを大陸移動の学説とリンクした「見える化」によって実現する。知識だけでなく、人間の感性と感覚を刺激するインタラクティブな科学教育コンテンツを構築し、世界中に無償で配信・提供することを目的とした研究である。 最終年度として行った研究実績は、生命進化史、系統樹の学説および大陸移動の文献調査と検証を進め、地球の誕生から生命の多様性の繋がりを確認した。同時に、科学教育コンテンツを構築するために重要な、魅力的で新規性のあるデザイン発想を導き出す検討をクリエイターたちと共に繰り返した。またその結果を、パイロット版の制作によって、科学教育コンテンツとしての魅力を導き出すことに時間をかけた。この研究の繰り返しによって、当初考えていた発想よりもこのコンテンツを使う側が楽しんで学び、感じる、インタラクティブ性の高い機能にたどり着くことができた。 この研究では、今まで誰もなし得なかった46億年の地球の歴史と大陸移動、40億年の生物多様性の繋がりを等間隔で実感できること。それによって、生物多様性の大爆発がごく最近起きたことが実感できること。そして、自ら46億年の歴史の壮大なドラマを旅することができること。以上を実現するために情報整理と確認、検証ができたことに大きな意義を感じている。 今までの生物多様性に関する系統樹の表現では、重要な地球のタイムラインの大半を占める、古細菌、原核生物、真核生物、単細胞生物の時代を実感できないものが多かった。そして、3回に渡る全球凍結による大量絶滅にも生き残り、今に生命を繋いでいる生き物たちの命の繋がりがあることはあまり伝わっていない。ここを丁寧にデザインすることが重要であることに行き着いた。共同研究者の助言により、専門家の学説の違い等を如何に見せるか、デザインによって解決する糸口を掴んだことが大きな成果となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
最終年度で、学部長に就任したことで学部運営に多くの時間を費やすことになり、研究を一時中断した。しかし、成果を出すために、一年研究期間を延長したことで、今までの研究蓄積から目的を達成し、今年度の完成を目指す目処を立てることができた。それは、最終目的である生命40億年全史のタイムライン上の可視化を、科学教育コンテンツとして配信するためのプログラミングを研究協力者に先行して進めてもらっていたことで、遅れを取り戻すことが可能になった。 生物多様性の系統樹および大陸移動の学説、文献調査と検証を進め、科学教育コンテンツを構築するための新規性あるデザインを導き出す検討をクリエイターたちと考える中で、既成概念上の系統樹から180度視点を変えたデザインに挑戦できる可能性にたどり着いた。それは、パイロット版コンテンツのプログラミングを繰り返すことによって、分かっていない系統樹の整合性の不具合や繋がりの不確実な部分を解消し、より魅力的なコンテンツデザインが発明できる可能性が見えた。系統樹という既成概念を取り払うことで、地球誕生から生命大爆発のタイムライン、現在に至るまでを魅力的に表現できる発想である。 現状、生物多様性と地球誕生から大陸移動の動きをスムーズにリンクさせて、数字の系統樹という新しい考え方とネーミング、40億年の壮大なドラマが実感できる科学教育コンテンツのデザインに遅れをとって入るものの、研究の完結へと着実に進んでいる。40億年の壮大なドラマを地球46億年史からスタートできるコンテンツにデザインを変更した。 タイムライン上で感覚的に学ぶことができる驚くべき生物の多様性と地球の歴史が、全て繋がっているかけがえのないものであることを共感・共有できることを目的としている、科学教育コンテンツのグローバル配信を2019年2月に設定した。
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Strategy for Future Research Activity |
タイムライン上で起こった地球の重要なイベント、生物進化、大陸移動、系統樹から発見した出現した生き物の表現方法をリンクさせた見える化を、今年度6月中にプログラミングを依頼する研究協力者に渡す。それに伴って、学名と日本語、または英語での表記を同時に進める。 古生代、カンブリア紀以降の生命の登場が膨大に膨らむことで、従来の系統樹による表現が困難を極めた。生物系統学的な表現の難しさと宗教的な配慮も考えたデザインを選択することにした。そこで、今回新しく発見した今までにないタイムライン表現の方法によって、系統樹の概念をしなやかに変えることができ、研究のスピードを増すことができる。 登場させる生物は、絞り込んだ2冊の系統樹研究資料をベースに監修者の意見を聴きながら、生物の目(もく)と科(か)で選択する作業は既にできている。大陸移動の動画に関しても、多くの新しい資料からパイロット版を制作し検証している最中である。タイムライン上のリンク表現にも全く問題はない。地球46億年史の膨大な長さを実感しながら、地球の重要なイベントや生物進化と大陸移動のしなやかなリンクと動きで、可視化するサイト構築を今年度12月を目指して完成させる。 今後の推進方策は、構築した全てのコンテンツを今までパイロット版の実験とサイト構築のプログラミングデザインを共に支援してくれた研究協力者とその企業に依頼し、最終段階の構築に入る。研究結果のコンテンツ配信は2019年2月予定している。また、完成したコンテンツサイトは、子供を対象にしたワークショップ、科学イベント等で紹介しアウトリーチしていく。さらには、2019年度のグッドデザイン賞やウェブコンテンツに関わる賞等に応募することを予定している。
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Causes of Carryover |
生物系統関係の文献調査、検討、議論に予測以上に時間がかかったことで、最終目的としているウェブ上でのコンテンツ配信に係るプログラミングとデザインに関する研究協力技術者、デザイナーへの依頼が延びてしまったことが、次年度使用額が生じた大きな理由である。 企画・コンテンツを構築しても、この研究の最終目的であるウェブ上の「見える化」デザインが、最大のアウトリーチの力となるため、申請当初に明記できなかった、プログラミングデザインのプロである研究協力技術者への依頼が遅れた。この技術依頼に係る使用額と、完成した科学教育用コンテンツを海外で発表するための使用額が次年度に繰り越すこととなった。 この研究の根幹である、新規性のある生物多様性と大陸移動の文献の検討に時間がかかったものの、より良い発想で、より良い研究目的到達の道を発見できたことは、さらに深化した継続的チャレンジができる。次年度使用額内でのウェブ・コンテンツサイトのデザインおよび技術構築と配信、さらには、グッドデザイン賞、ウェブコンテンツ関係のコンペティション等への応募のための費用に使用する計画である。また、海外機関における発表等、将来的に目標を掲げる。
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