2016 Fiscal Year Research-status Report
構造化技能情報による溶接技能教育支援システムの開発
Project/Area Number |
15K01019
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
松浦 慶総 横浜国立大学, 大学院工学研究院, 特別研究教員 (70282960)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高田 一 横浜国立大学, 大学院工学研究院, 教授 (20154792)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 技能教育 / 技能継承 / 溶接技能 / 情報構造化 / 技能要因分析 / 教授支援システム |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は品質工学の手法である特性要因分析を応用した技能要因解析を行い,対象技能である被覆アーク溶接の技能情報構造化を実施した.さらに,構造化情報から技能学習の初期段階で重要な情報を抽出し,学習者に提示することで,効果的な学習を実現する教育支援システムの開発を行った. 具体的には,まず前年度で実施した文献・資料による被覆アーク溶接技能の技能要因解析に基づいて,教師側の熟達者にインタビューを実施した.従来の熟達者に対するインタビューでは,対象が身体に関する技能の場合はいわゆる暗黙知とされている情報であり,話し手側の熟達者も技能のパフォーマンスと関係する身体要因を把握できていないため,十分な説明をすることが困難である.また,聞き手側も技能に関連する要素とその構造が理解できないため,的確なインタビューを実施できないことが極めて多い. そこで,本研究で提案している技能要因分析により,技能のパフォーマンスの評価とパフォーマンスに影響を及ぼす要因を構造化して提示することで,熟達者とインタビューの聞き手双方に共通のイメージを創出することが可能となる.ここで,インタビューの聞き手とは教育支援システムの開発者を意味する.昨年度の技能要因分析の結果から,溶接品質に影響を及ぼす身体要因であるホルダ保持手から肩部までの上腕部の動作と,その制御に関わる体性感覚要因が特に技能修得初期段階で重要であることが,熟達者,学習者のインタビューと動作解析,筋活動解析の結果から抽出することが出来た. この結果から新たな学習支援プログラムとして,従来の教授法では用いられていない上腕部の動きとその体性感覚を第一教授情報として提示して,学習向上の効果を検証する実験を行った.その結果,1回の教授で溶接結果の評価指標であるビード形状の向上が得られた. 技能要因解析と教授支援システムに関して国内学会での口頭発表を2件実施した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成28年度では研究計画の1つである「学習情報を学習過程の適切な時期に提示するティーチング・コーチング機能を有する教育支援システムの開発」については,前年度で開発した技能要因分析の結果から,熟達者とシステム開発者による技能修得に重要な要因の創出が可能となった.また,得られた情報から新たな学習支援プログラムを提案し,実際に被覆アーク溶接実技において検証して,従来教授法と比較して効率的な学習効果を得ることが出来た. ただし,前年度からの若干の遅れの影響と,被覆アーク溶接実験を学内の工場で行う関係で,工場との実験実施の日程調整による遅れが生じ,実験解析の予定が遅れてしまった.そのため,熟達度を基にデータベースの該当する技能情報をマルチタッチディスプレイ上に提示するティーチング機能を有したシステムの開発において,マルチタッチディスプレイ上で関係する技能知識の上位,および下位の知識が提示され,技能改善のための気づきを促すシステムの開発に遅れが生じているため,区分の通りとなった.
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は最終年度であるので,溶接技能教育支援システムの開発,およびシステムの検証実験実施を目標とする. 前年度までに開発した(1)技能要因解析による技能教育情報構造化システム,(2)MT法による技能定量評価システム,(3)ティーチング・コーチング機能を有する教育支援システムを統合化し,溶接技能教育支援システムの開発を行う.実際に大学付属工場において運用し,溶接技能情報のデータベース構築,および情報共有のための知識構造化を行う.さらにこのシステムを使用してその学習効果を検証する. これらの結果を国内発表2件,および学術論文3件の投稿を予定している.
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Causes of Carryover |
溶接実験の被験者の人件費の予算額に対して,予定していた人数および時間が確保できなかったため,次年度使用額が生じた.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度においても,検証実験を行う予定であるため,速やかに被験者の確保を行い,予定より多い人数・時間を確保してその人件費として使用する予定である.
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