2015 Fiscal Year Research-status Report
電子教科書システム『優しい数学・微分積分と線形代数』構築とその有効性に関する研究
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15K01110
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Research Institution | Ishikawa National College of Technology |
Principal Investigator |
阿蘇 和寿 石川工業高等専門学校, その他部局等, 嘱託教授 (80110154)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 電子教科書 / 数学 / 微分積分 / 線形代数 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は高専および大学で用いられる数学(とくに微分積分と線形代数分野)の電子教科書システムを作成し,その有効性を検証するというものである。本研究で提供しようとする電子教科書システムは,数学を専門としない者を対象にしたものであり,実際に本システムを利用する学生や連携研究者との意見交換を通じて,「微分積分学と線形代数の全体像を理解するために不可欠な項目は何か」,「効率的に学ぶためには,内容をどのような配列とすべきか」,「各項目の内容をわかりやすく,かつ,正確に伝えるにはどのように表現すべきか」,「学習内容を定着させるために必要な補充教材はどのようなものか」などについて検討する。この電子教科書システムは,あらゆる数学の基礎となる微分積分および線形代数を扱い,この教材全体を通して,図版,動画などを効果的に用いる。 各科目の執筆方針は「微分積分では,微分(無限小),全微分の概念および数値計算を積極的に用いる」,「線形代数では,基本的に2次元空間,2次行列を扱い,そこで学んだ定義や定理を3次元空間,3次行列に拡張するにはどのようにしたらよいか,という問いかけを行いながら進めていく」という方法を採る。さらに,全体として,線形代数と微分積分との関連がわかるように配慮する。たとえば,ロンスキー行列式,ヘッセ行列式やヤコビ行列式などは,そのための有効な教材となると考えている。 本研究の課題名にある[優しい数学]は易しい数学ということではない。たとえば,入門書では扱わない「ベクトル空間,固有空間」など,必要な数学用語はすべて扱う。そうでないと,これを基礎として他の学問を学ぶときに支障が出るからである。数学用語と数学記号を正確に使うことができる能力をつけることを,本システムの一貫した方針とする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成27年度に行った作業のうちの中心となったものは,電子教科書システムのためのプログラムの開発である。すでに,必要な機能はすべて備えられており,tams.bitstream.co.jp/からアクセスすることができる(IDは tams,パスワードは 2016)。このシステムの整備は本年度も継続して行っていく予定であり,とくに,ページデザインや種々のリンクの方法について,一層のなじみやすさが必要と考えている。また,現在はサーバー上で稼働するシステムであるので,これを個人のパソコン上で稼働できるシステムへの移行も必要と考えている。 そのコンテンツは本文の一部の執筆を開始し,十分とはいえない。補助教材としての解説,動画教材はまだ未着手の状態である。このためやや遅れているとした。その理由は研究代表者が3回にわたって長期入院し,ほぼ5ヶ月間,研究の進捗に支障を来したからである。しかし,現在では体調も回復している。 今後は,以上の未着手部分の整備を急ぎ,平成28年度前期には基礎的な部分の完成を目指している。今年度後期からは,部分的に授業等での活用と,それに伴うシステムの評価が可能になるものと思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度の主要な計画は,電子教科書のシステムの整備に関すること,電子教科書のコンテンツの充実に関すること,作成した電子教科書システムの活用と評価の3つの点に分類される。 電子教科書のシステムの整備に関することでは,「ロゴを入れるなどのホームページ画面のデザインの修正および使い良さの向上」,「数学事典(そのコンテンツはすでに作成済み)の利用環境の作成」,「解説へのリンク環境の整備」,「現在のプログラムをパソコン上に展開できるようにすること」などが挙げられる。このための予算限度額50万円の範囲でできる限りの作業を業者に依頼する。 電子教科書のコンテンツの充実に関することでは「電子教科書本文の完成(年度内には8割程度の完成を目指している)」,「補助教材の整備(これには解説・問題と解答・ビジュアル教材があり,年度内は4割程度の作業が可能と考えている)」などがある。 また,電子教科書システムの活用と評価の開始は平成28年度後期を予定している。
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Causes of Carryover |
教材の作成と利用のため,ノートパソコンの購入が必要となったが,研究者の現在の設備の状況と希望機種の発売時期の関係からこれを平成28年度に使用することとしたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度のうちの次年度使用額を含めた,平成28年度の直接経費はおよそ97万円である。このうち,システムの整備として業者に依頼する経費は50万円程度,次年度使用額が生じた理由に記載したパソコンの購入が20万円程度,平成28年度に予定している日本数学教育学会での発表に要する旅費(連携研究者を含めて3名分)が15万円程度,その他の出張(研究打合せ,近隣の研究会への出席)が10万円程度,その他(消耗品費,参加費等)が2万円程度と見込んでいる。
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Remarks |
ID:tams パスワード:2016
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