2017 Fiscal Year Research-status Report
日本アルプスにおける岩盤重力変形による地形・景観形成システムの解明
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15K01171
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Research Institution | Senshu University |
Principal Investigator |
苅谷 愛彦 専修大学, 文学部, 教授 (70323433)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 地すべり / 深層崩壊 / 岩盤重力変形 / ノンテクトニック断層 / 第四紀 / 地形発達 / 広域テフラ |
Outline of Annual Research Achievements |
南アルプスの前縁山地である山梨県巨摩山地において、地すべり地形、ならびに岩盤重力変形現象とそれに起因する地形(線状凹地や低崖列)の地形学・地質学的調査を重点的に実施した。特に、甘利山・千頭星山では野外・室内双方のデータに基づく微・小スケールの地形分類を行い、地すべり地形・岩盤重力変形地形を中心とする地形分布図を作成した。また大規模地すべり地=3カ所、線状凹地=1カ所における掘削調査を実施し、広域テフラ(火山灰)や年代測定試料の採取に成功した。 例えば、甘利山東面の桐沢地すべり地では約9.5万年前の広域テフラ=御岳第1を含む地すべり性堰き止め湖沼堆積物が発見され、更新世中期に遡る古期地すべり現象の存在が明らかとなった。また同東面の堅沢地すべり地では、地すべり移動体上面に形成された閉塞凹地の埋積層から約3.1万年前の広域テフラ=姶良丹沢が検出された。この結果、更新世後期における地すべり活動の可能性が浮上した。さらに、甘利山山頂の線状凹地埋積層からは、完新世中期の14C-較正暦年代を示す木片が見出され、甘利山南面の御庵沢流域では完新世中期に発生した大規模地すべりとそれに関連した堰き止め湖沼堆積物が発見された。以上のように、巨摩山地では更新世中期から完新世に至る約10万年以上の期間において、山体の各所で岩盤重力変形とそれに起因する大規模地すべりが発生してきたことが判明した。中部日本の大起伏・高標高・非氷食山地では、主に岩盤重力変形と地すべりにより山地の景観発達の枠組みが決定されているといえる。 この他、山梨県北杜市白州町において、大規模地すべり移動体から御嶽火山起源と推定される更新世後期のテフラを発見した。 研究成果は、2018年日本地理学会春季大会や日本地球惑星科学連合2018年大会等で発表したほか、論文も公表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本務先における教育校務等の増加のため、野外調査に充てることのできる時間を当初の計画より減らさざるをえなかった。このため巨摩山地における地形・地質調査をもっぱら行うのみとなり、その他の山域まで調査を拡充することが難しかった。ただし「5.研究実績の概要」に記したように、巨摩山地における新たな発見項目は多く、研究成果は当初の予想以上のものであった。 他方、次の問題が生じた。平成29年度には日本アルプス全域における空撮(地形観察)及び測量(標高数値データ獲得)のため、長野県松本空港よりセスナ機をチャーターしての飛行を予定していた。しかし委託予定先の民間航空会社の営業自粛等のため、空撮等が実施できなかった。この対応については、次項以下で述べる。
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Strategy for Future Research Activity |
民間航空会社に委託し、セスナ機をチャーターして行う予定であった空撮及び測量は、上記の理由により実施できなかった。このため執行予定であった助成金を繰り越し、平成30年度に同様の作業が実施できないかを目下検討している。 費用や日程、委託先等の事情により、平成30年度もセスナ機をチャーターしての空撮等が実施困難な場合は、ドローンを使った撮影及び測量に切り替えるか、地上からの撮影・測量で当初の目的を達成するよう計画を変更する。 研究成果の学会発表や論文発表は、平成30年度も継続して行う。
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Causes of Carryover |
民間航空会社に委託し、セスナ機をチャーターして実施を予定していた日本アルプスの空撮(地形観察)及び測量(地形標高データ獲得)が、航空会社の事情で実施できなかったため。 平成30年度に同様の委託が可能かどうかを現在検討中である。セスナ機のチャーターによる空撮等が困難な場合は、ドローンを用いた作業に切り替え、なおかつ地上からの撮影・測量も検討する。その場合、ドローン周辺機器の購入やメンテナンス、現地出張のための旅費に、繰り越した助成金を充てることとする。
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[Journal Article] Age determination on a catastrophic rock avalanche using tree-ring oxygen isotope ratios - the scar of a historical gigantic earthquake in the Southern Alps, central Japan2018
Author(s)
Yamada, R., Kariya, Y., Kimura, T., Sano, M., Li, Z., and Nakatsuka, T.
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Journal Title
Quaternary Geochronology
Volume: 44
Pages: 47-54
DOI
Peer Reviewed
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