2016 Fiscal Year Research-status Report
749年パレスティナ大地震に関する変動地形学的研究
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15K01173
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
東郷 正美 法政大学, 名誉教授 (70061231)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 749年パレスティナ大地震 / ヨルダン・ヴァレー断層帯 / 古地震 / 活断層 / 変動地形学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、中東史に名を残す大地震、749年パレスティナ大地震の実像を、その震源とされるヨルダン・ヴァレー断層帯(JVF)の最新活動痕跡を精査して解き明かそうとするものであり、2年目に当たる本年度においては、以下を試みた。 [断層変位地形に関する空中写真再判読]:初年度、JVFの主要部(ガリラヤ湖南東端~死海北西岸までの約110km)を対象に、主断層帯の位置およびこれが伴う断層変位地形に関する空中写真判読を試みたが、本年度においても、再度全域を対象とした写真判読作業を実施し、前年度得た知見についての確認・再検証を行った上で、JVFの最新活動期を特定するためのトレンチ掘削調査候補地などを検討した。この作業を通して活断層線の正確な位置、新旧変位地形の発達状態を改めて確認するとともに、詳細現地地形調査の対象やトレンチ掘削調査候補地を具体化し得た。 [現地調査]:空中写真判読結果の実地検証を主なる目的とする現地調査に加えて、JVF中部を対象とするトレンチ掘削調査を計画した。しかし、前年度に出来した現地社会情勢悪化は俄に改善することなく引き継がれおり、そのため、今年度も現地調査は不十分のまま終わらざるを得なかった。しかし、ザルカ川左岸に保存されるJVFの最新活動跡について、現場観察ができ、その定量的資料も得られたことは貴重な成果といえる。 [749年パレスティナ大地震に関する既存資料・文献の収集]:インターネットを利用し、また、ヨルダン国内でもこれらの収集に引き続き努めた。しかし、初年度と同様に749年パレスティナ大地震発生当時の出来事を記載した文献・資料の収集は難しく、多くは得られなかった。今後も多面的に探索を続ける必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究初年度に顕在化した「シリアやイラクに拠点をもつイスラム過激派組織の活動」は引き続き継続中で、本研究がフィールドとするヨルダンでも、日常における危険性が高まったとする危惧は払拭されないでいる。そのため、現地調査は、思うように進めることができず、本年度においては、年度末期に1度実施するにとどまった。そのため、空中写真判読結果に関する現地検証作業は、一部試みることができ、成果を上げたが、予定したトレンチ掘削調査については実施に至らなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
上記のような特殊な事情で、研究の軸となる現地調査を計画通りに進められずにいる。しかし、空中写真判読作業成果を利用することで、JVFの最新活動特性に関する基礎資料が大いに整いつつあり、残された重要課題は「最新活動の時期特定」のみとなっている。懸案のトレンチ掘削調査を実現して関係基礎資料を得たうえで研究のまとめに入る予定でいる。
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Causes of Carryover |
当面の中東情勢を勘案して現地調査が予定通り実施できなかったため、旅費の多くが未使用となり、次年度へ繰り越しとなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
現地調査員や現地調査の回数を増やすことで生ずる旅費増加分にあてる予定である。
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