2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K01287
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
福島 修一郎 大阪大学, 基礎工学研究科, 助教 (40362644)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
紀ノ岡 正博 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (40234314)
橋本 守 大阪大学, 基礎工学研究科, 准教授 (70237949)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 再生医工学 / 組織工学 / マイクロ流体デバイス / 低酸素 / 光学的酸素計測 |
Outline of Annual Research Achievements |
細胞スケールの微小培養領域の環境因子として酸素濃度に注目し,マイクロ流体デバイスを作製して酸素濃度の制御と実測を行った. マイクロ流体デバイスはシリコーン(PDMS)を材料としてソフトリソグラフィー法で作製した,デバイス中央の培養チャンバの近傍に酸素濃度を調整したガスを流すための2本の流路を配置し,PDMS壁内の拡散により培養チャンバの酸素濃度の制御を可能にした.2本のガス流路に異なる酸素濃度のガス(0%, 5%)を流して培養した場合は,培養チャンバ内で勾配がある酸素濃度分布を実現可能であり,培養チャンバ内の細胞のなかで低酸素となる一部の細胞のみで低酸素誘導因子が発現することを免疫染色で確認した.従来の低酸素培養実験では均一な酸素濃度場における細胞応答の解析しかできないのに対し,本デバイスを用いた場合では異なる酸素環境の細胞を共培養できるので,より生体内の環境に近い空間分布をもつ酸素濃度場に対する細胞応答の解析への応用が期待される. 酸素濃度の実測にはりん光の酸素依存消光性を利用した光学的計測を利用した.デバイス底面にりん光体微粒子を付着させ,既知酸素濃度のガスで平衡した状態でりん光画像を取得後,りん光強度と酸素濃度の校正をした.フィブリンゲル内に高密度播種した線維芽細胞をデバイス内で培養して酸素濃度を計測した結果,細胞が死んでいる場合は数値計算結果と一致したが,細胞が生きている場合は低酸素の領域が増加した.この結果は培養中の細胞の酸素消費が無視できないことを示しており,数値計算モデルを細胞の酸素消費を考慮して構築する必要がある.従来の酸素濃度計測法では培養組織内の酸素濃度分布を細胞スケールで実測することは困難だったため,本研究で確立した酸素濃度計測法で実際の酸素分布を把握できる意義は大きい.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の課題であった酸素濃度計測法の確立は達成できており,酸素濃度分布に応じた細胞応答も確認できたため
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Strategy for Future Research Activity |
当初計画に従って非線形光学顕微鏡を用いた評価指標の探索を行う.追加する観測試料として低酸素状態と関連が深い血管新生の培養モデルを用いる.血管新生過程では,低酸素刺激により増殖因子を産生する線維芽細胞と通常酸素環境で血管を構成する内皮細胞の相互作用が重要である.これまでに構築した不均一な酸素場の培養系を適用することにより,従来の培養モデルとは異なる共培養モデルの構築が見込まれるので,これを実現して細胞外基質内の細胞遊走を解析し,培養組織への血管誘導を想定した基礎的な知見を得ることを目指す.
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Causes of Carryover |
使用を予定していた顕微鏡システムの制御系が故障して交換が必要となり,当初購入予定だった顕微鏡用培養システムの購入を取りやめて,制御ソフトウェアとカメラの更新に充てたため,計画段階の所要額と実支出額に差が生じた.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
顕微鏡用培養システムはヒーターを購入して安価に自作することで対応する.その他は当初計画に従って使用する.
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Research Products
(3 results)