2015 Fiscal Year Research-status Report
ロボットによる対麻痺者歩行再建のための練習支援システムの開発
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15K01437
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Research Institution | Fujita Health University |
Principal Investigator |
田辺 茂雄 藤田保健衛生大学, 保健学研究科, 准教授 (50398632)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 脊髄損傷 / 対麻痺 / 歩行 / リハビリテーション / ロボット |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,ロボットによる対麻痺者歩行再建のための練習支援システムを開発することである.まず,トレッドミル上の一定位置でのロボット補助歩行を可能にする自動ベルト速度制御手法を確立する.次に,ロボット補助歩行の動作解析によって,習得すべき運動課題を明らかにする.最後に,実時間での視覚提示などから構成されるシステムを開発し,有用性を検討する. 平成27年度は,自動ベルト速度制御手法を検討した.提案法の基本的な制御概念は,歩行者の位置が一定となるように両側の単脚支持期においてベルト速度を調整する手法である.はじめに,ロボットの設定項目である単脚支持時間,両脚支持時間,重複歩長から歩行速度の理論値を算出する.加えて,中心位置で歩行した際の単脚支持期終了時の足部位置の理論値を求める.両値を算出した後,まず歩行速度理論値でベルトを駆動し,歩行を開始する.次に,両脚支持期から単脚支持期となった時点ごとに,設定された単脚支持時間で足部を単脚支持期終了時足部位置の理論値まで移動させる速度を算出し,両脚支持期となるまでその速度で駆動する.提案法の有用性を検討するため,提案法と従来法(一定速度)でロボット補助歩行を行い,歩行練習中に生じ易い異常歩行2種類(早期接地、骨盤回旋)を模擬した.その結果,トレッドミル歩行練習初期を想定したベルト速度条件(0.12km/h)において,提案法でのベルト前後中心位置からの有意な変位減少を認めた. ロボットの時間距離因子および足部位置情報を用いたベルト速度調整方法を考案した結果,提案法では定速のベルト駆動と比較して一定位置での歩行が可能であった.今回模擬した異常歩行は,実際の対麻痺者の歩行練習で生じる回数よりも頻回に設定しており,臨床での歩行練習においても十分な有用性を持つと考えられる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は,ロボットによる対麻痺者歩行再建のための練習支援システムを開発することである.まず,トレッドミル上の一定位置でのロボット補助歩行を可能にする自動ベルト速度制御手法を確立する.次に,ロボット補助歩行の動作解析によって,習得すべき運動課題を明らかにする.最後に,実時間での視覚提示などから構成されるシステムを開発し,有用性を検討する.研究全体での具体的な目標は以下の3項目である. ①トレッドミル上の一定位置でのロボット補助歩行を可能にする自動ベルト速度制御手法を確立する. ②ロボット補助歩行時の動作解析によって,習得すべき運動課題を明らかにする. ③各種センサ情報を基にした実時間での視覚提示・聴覚提示などから構成される練習支援システムを開発し,その有用性を明らかにする. 平成27年度の研究実施計画では,①について実施予定であったが,予定通り完了した.両脚支持期はロボット設定値から求めた歩行速度理論値でベルトを駆動し,単脚支持期に歩行位置がベルト前後中心位置となるようベルト駆動速度を制御した.その結果,本制御が必要となるトレッドミル歩行練習初期を想定したベルト速度条件において,異常歩行を模擬した際にもベルト前後中心位置での歩行が可能であった.この提案法を用いることによって28年度に予定していた②の実施が可能となった.
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度の研究において,トレッドミル上の一定位置でのロボット補助歩行を可能にする自動ベルト速度制御手法を確立されたことから,当初の計画で28年度に実施予定であった,歩行器を用いたロボット補助歩行の動作解析によって,習得すべき運動課題を明らかにする. 今回の研究に関するインフォームド・コンセントが得られる健常者20名程度を,研究実施機関などで研究内容を掲示して募る.その際に,研究への参加・不参加は個人の自由であり,個人の意思に基づくものであること,研究に不参加または中止の時も何ら不利益を得ることはないことを十分に説明する.また,すべての実験は倫理委員会承認後に行う. 対象者は、トレッドミル上でロボットを装着し,手摺または歩行器を用いて歩行を行う.定位置での歩行を補助するために,すべての試行で提案法を用いてベルト速度を調整する. 計測順序は個人毎にランダムに設定し、1施行の計測時間は20秒間程度とする.主な評価項目は,手部の力覚情報と体幹の移動量,体幹の角度変化とし,それぞれ力覚センサと3次元動作解析装置を用いて計測する.上肢支持具の比較によって,歩行器を用いたロボット補助歩行時に行うべき両側上肢および体幹を用いた左右への重心移動動作と歩行器の前方移動動作を明らかにする. 主な購入物品は,力覚センサおよび歩行器用部品である.研究計画の申請時には,6軸力覚センサを用いる予定であったが,今後行う予備実験を通して最も適したセンサおよび計測手法を精査し,必要となる物品を購入する.
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