2015 Fiscal Year Research-status Report
高地・低酸素環境下での運動トレーニングによる身体の適応過程の性差を探る
Project/Area Number |
15K01585
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Research Institution | Nippon Sport Science University |
Principal Investigator |
前川 剛輝 日本体育大学, 付置研究所, 助教 (50336351)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 高地トレーニング / トレーニング効果 / 性差 |
Outline of Annual Research Achievements |
生体が高地環境に暴露されると、酸素分圧の低下に対する代償作用として造血が促進される。造血に至る過程では性ホルモンが関与することが報告されていることから、高地暴露による赤血球性状の変化にも男女による差異が生じるかもしれない。研究の初年度は、高地滞在が赤血球性状に与える影響の性差を検討した。 対象者は16歳から18歳の男子7名、女子8名であった。対象者は標高2,200mの自然の高地に15日間滞在した。高地滞在の前後に海面レベルにて、ヘマトクリット値(Hct値)とヘモグロビン濃度(Hb濃度)を測定し、これら測定結果から平均赤血球ヘモグロビン濃度(MCHC)と血漿量の変化(ΔPV)を算出した。また、高地滞在中は、3日目、8日目、12日目にHb濃度を測定した。 高地滞在中、男子のHb濃度は3日目に有意に高い値を示し、8日目は3日目と比べて低下、12日目は再び有意に高い値を示した。高地環境への急性適応として血液濃縮が生じ、その後、血液濃縮の緩和を経て造血が亢進していたことが推察される。女子のHb濃度は、男子と同様に3日目に有意に高い値を示したが、8日目、12日目は高地滞在前の水準と同程度であった。女子においては、血液濃縮が緩和された後の造血応答の個人差が大きいことが推察される。 高地トレーニング前後で比較すると、男子はHct値、Hb濃度、MCHCは有意な変化は示さなかったが、ΔPVは増加した。赤血球の質的変化を伴わない血液の量的増加がもたらされた可能性が考えられる。一方、女子のHb濃度は低下する傾向を示し、MCHCにおいては有意な低下を示した。Hct値は有意な変化を示さなかったが、ΔPVは増加した。男子と同様に、血液の量的増大がもたらされた可能性が考えられるが、女子においては赤血球の質的変化が生じていたかもしれない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
総ヘモグロビン量及び低酸素に対する化学感受性を測定する為のシステムの作成は、当初の計画通り完了した。 当初、予備実験として行う予定だった3日程度の常圧低酸素暴露は、自然の高地を利用した15日間の低圧低酸素暴露に変更となったが、確認すべきデータを取得することはできた。
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Strategy for Future Research Activity |
先ず、人工低酸素環境システムの構築を行うこととする。構築後、速やかに本実験を実施する予定である。人工低酸素環境システムの構築が著しく遅れた場合は、自然の高地(低圧低酸素環境)での実験も視野にい入れ、変更案を考えることとする。
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Causes of Carryover |
人工低酸素環境システムの構築を次年度に行うこととしたこと、また、無償ボランティアによる検者と被験者により予備実験が行われた為、これらにかかる経費の支払いが生じなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
人工低酸素環境室システムの構築に使用する。被験者数の増加を予定している為、それらにかかる実験消耗品に使用する予定である。
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