2015 Fiscal Year Research-status Report
「児童養護施設における就学支援システムの確立に向けた実践的研究」
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15K01754
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Research Institution | Osaka Kyoiku University |
Principal Investigator |
上田 裕美 大阪教育大学, 教育学部, 准教授 (80302636)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小崎 恭弘 大阪教育大学, 教育学部, 准教授 (20530728)
池谷 航介 大阪教育大学, 学内共同利用施設等, 准教授 (60740321)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 児童養護施設 / 就学支援 / 児童虐待 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、我が国の児童養護施設で生活する子どもたちの義務教育終了後の就学に関する支援システムを確立するために、当該の子どもたちの進学の実現と就学の継続をめぐる困難とニーズを把握し、児童養護施設の内外で取り組むべき就学支援の内容と方法を明らかにすることを目指している。平成27年度は、次年度に予定している全国の児童養護施設を対象にした質問紙調査の項目作成に向けて、児童養護施設内外の関係者を対象に、半構造化面接によるインタビュー調査を行った。 調査協力者は、大阪府および兵庫県内の児童養護施設の職員3名、児童養護施設での生活経験がある当事者1名、兵庫県内の児童養護施設の子どもたちを担当する公立学校教員2名、大阪府および東京都内で児童養護施設を仕事として支援する学習支援者2名である。インタビューで得た回答内容を精査した結果、以下のような課題が明らかになった。
①発達の偏りや遅れ、愛着形成上の課題など、施設入所以前から子どもたちが抱える課題が大きく、学習の定着に苦戦する状況があること。②施設職員のマンパワー不足、突然の措置変更や施設側の事情によって子どもと職員との関係が途切れやすいことが共に進路を考える上での壁になっていること。③学力に恵まれ進学の意思がある子どもには、経済的問題が最大の壁である。大学等への奨学制度は極めて不足している。④保護者のいない子どもにとっては、保証人がいないために退所後の住居等の確保にも困難がある。⑤経済的な理由で進学よりも就職を優先せざるを得ないケースも多く、進学が最善の選択肢にはなりにくいこと。 このような課題を踏まえ、就学支援の個別化の必要性、学習の定着力の弱い子どもへの学習支援アプローチの開発、大学等への進学に関わる奨学制度の充実、施設退所後の生活への移行を支援する制度の必要性、といったニーズと課題が明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2015年度は、次年度における質問紙調査の基礎を作るために、児童養護施設内外における就学支援の実態とニーズに関する聞き取り調査(①社会的養護当事者、②児童養護施設職員、③学校教員、④学習支援専門家、を聞き取り対象とする)を行うことを計画していた。結果的に、児童養護施設職員3名(大舎制、小舎制)、社会的養護当事者の方1名、学校教員2名、児童養護施設への学習支援を専門に行う支援者2名、から協力を得ることができ、児童養護施設の子どもたちの就学をめぐる現状、ニーズ、課題を一定程度把握することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
2015年度に行った聞き取り調査による結果を踏まえて、2016年度は、全国の児童養護施設を対象に、郵送による質問紙調査の実施を行う計画である。
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Research Products
(4 results)