2016 Fiscal Year Research-status Report
世界経済への再統合がミャンマーの都市近郊農村に与える社会経済的インパクト
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15K01881
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
水野 敦子 九州大学, 経済学研究院, 准教授 (10647358)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松田 正彦 立命館大学, 国際関係学部, 教授 (60434693)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ミャンマー / 農村 / 都市化 / 工業化 / 農業 / 労働力移動 |
Outline of Annual Research Achievements |
ミャンマー国内における総選挙の実施やその後の政権移行などの政治情勢を考慮して昨年度延期した農業畜産灌漑省との調整および予備調査を平成28年4月に実施した。農業畜産灌漑省より調査について承諾を得るとともに、同省のヤンゴン地域区タンダピン郡事務所において聞き取り調査を実施するとともに、同郡内で予備調査によって調査対象の3村落選定した。 今年度は選定した村落のうち2村落について、8月にラムダンレー村落(以下、LD村)、3月にオウッポ―村落(OP村)において個票を用いた世帯悉皆調査を実施しデータを収集した。収集したデータの入力については、LD村は完了しOP村は次年度に行う予定である。 予備調査、および本調査(村落調査)から、①村内外における非農業部門への就労が増加しつつある一方、②農業の機械化進展してきていること、③村内の農業労働力が減少する傾向にあること、④雨季終盤へ作付け時期を繰り下げたり、あるいは乾季に主に耕作する農家が増加していることなどが確認できた。以上の観察は、ミャンマーの世界経済への再統合に促され、都市が拡大し工業化が進展すると同時に、農村における労働市場、生業に変化が生じていることを示していると考えられる。 また、④については、雨季における稲作の不振が要因となっており、近年の降雨パターンの変化と洪水の発生による影響が大きいと推測される。本研究の目的として考慮していなかった気候変動が、農事歴を変化させる要因となっている可能性が高いことが示唆され、今後の研究を遂行する上で重要な視角を得ることが出来た。 なお、データ入力を完了したLD村では、特に①村外就労の拡大が顕著であることに着目して、暫定的な分析を進めている。この分析については平成29年6月に開催される東南アジア学会研究大会において発表する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度にミャンマー国内の政治情勢を考慮して延期した関係機関との調整および予備調査を平成28年4月に実施した。ヤンゴン地域区タンダピン郡で実施した予備調査によって調査対象の3村落選定し、8月にラムダンレー村落および3月にオウッポ―村落において個票を用いた世帯悉皆調査を実施した。ほぼ計画通りに調査を実施しデータを収集し、データ入力を進めており、おおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は本調査となるヤンゴン地域区タンダピン郡で村落調査を引き続き行うが、既にデータ入力を完了したLD村については暫定的な分析を進めており、村外就労の拡大に着目した研究報告を6月に開催される東南アジア学会研究大会で行う予定である。学会で得られたコメントなどを今後の研究遂行にフィードバックする。 並行してOP村調査で収集した資料の整理、データ入力を行い、データの記述統計量などを整理し村落の概略をまとめる。8月に最後の村落世帯悉皆調査としてチャーホン村(KH村)で実施予定である。9月以降、OP村調査で収集した資料の整理、データ入力を行う。その後、本研究で世帯悉皆調査を実施した3村落のデータを統合し、精査、分析を進める。また、関連資料の収集、先行研究の分析を並行して行い、検討を深める。これらの作業によって、研究成果を取りまとめるうえで、不足している情報、補足調査の課題を明らかにしていく。 平成30年度は、補足調査によって、不可欠な情報を収集したうえで、研究の取りまとめを行う。これまでの調査からは①村内外における非農業部門への就労、②農業の機械化の進展、③村内の農業労働力減少、④雨季終盤へ作付け時期を繰り下げたり、あるいは乾季に主に耕作する農家が増加していることなどを確認している。これらの変化の相互関連や要因分析、また村落経済に及ばした変化について考察を進めたい。ミャンマーの世界経済への再統合に促されている都市化や工業化の進展が、近郊農村の変化と如何に関係しているかを明らかにするという本研究の課題に接近する。 研究成果は、学会で報告するとともに、論文にまとめて公表することと致したい。また、残された課題を精査し、本研究の成果を、発展させた今後の研究課題を設定したい。
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Causes of Carryover |
調査対象の一村落における世帯悉皆調査を3月に実施したため、当該調査票の整理、データ入力は年度内に実施できなかったため、主にそれに関連して要する費用が残された。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
主に、3月に実施した世帯悉皆調査の調査票の整理、データ入力に使用する計画である。
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