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2015 Fiscal Year Research-status Report

新自由主義・新保守主義下でのジェンダー再編の理論整理および日英韓比較研究

Research Project

Project/Area Number 15K01928
Research InstitutionKanto Gakuin University

Principal Investigator

細谷 実  関東学院大学, 経済学部, 教授 (10209249)

Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) 海妻 径子  岩手大学, 人文社会科学部, 准教授 (10422065)
千田 有紀  武蔵大学, 社会学部, 教授 (70323730)
Project Period (FY) 2015-04-01 – 2018-03-31
Keywords新自由主義 / ネオリベラリズム / 市場化 / 福祉政策 / 家族賃金 / 保守主義 / 伝統主義 / 家父長制
Outline of Annual Research Achievements

2015年2月17日に、「サッチャー・ブレア時代の政治と人々」というテーマで研究会をおこなった(6名参加)。豊永郁子氏の二著『新保守主義の作用 中曽根・ブレア・ブッシュと政治の変容』2008、『サッチャリズムの時代 作用の政治学へ』1998 を主要参照対象とし、考察をおこなった。
4月17日に、チャン・クンスプの論文「個人主義なき個人化」<『変容する親密圏/公共圏1 親密圏と公共圏の再構成:アジア近代からの問い』(2013)を取り上げ、韓国における新自由主義化の時代の個人と家族の問題を考察し、続けて、「韓国の新自由主義化と民主主義政権」というテーマで、裴 海善(筑紫女学園大学アジア文化学科教授)著「韓国経済の50年間の政策変化と成果」および申 光榮(韓国中央大学社会学科教授)著「韓国におけるグローバリゼーションと社会的不平等」の二つの論文を中心に考察した。 二つの論文では韓国における保守派の動きと保守的政策が見えてこなかったので、ローサ・リー氏に、同問題についての文献探索・解読・翻訳と報告を依頼することにした。
12月18日に、大著『福祉国家と新自由主義――イギリス現代国家の構造とその再編』(2014)と論文「イギリスの新保守主義と新自由主義」<『市場原理の呪縛を解く』(2011)に基づく二宮元氏の報告「サッチャー政権下イギリスにおけるネオリベラリズム改革とサッチャー的保守主義との関連性」を聞き、多様な論点について意見交換をおこなった。
2016年3月17日に、ローサ・リー氏による中間的報告「韓国における新保守派と右翼 -グローバリゼーションに対する旧来保守と2000年以降の保守の比較」と意見交換をおこなった。
なお、研究分担者の海妻は、秋以後フランスに留学し、英仏独の「新自由主義化とジェンダー」というテーマでの研究状況についてのリサーチをおこなった。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

韓国にあっては、20世紀の終わりにIMF管理下において民主主義・左派政権による新自由主義化が進行した。これは、ピノチェト政権、サッチャー政権、小泉政権が、保守政権であったことに照らして、特異な事態であった。また、韓国では、福祉システム・福祉社会が未だ成立していない中での新自由主義化という特徴も指摘される。この点は、日本の福祉システムの評価、福祉社会未成立のチリ(但し社会主義政策の始動)との異同が問題となる。さらに、韓国では民主主義政権の成立はあったものの、保守的社会勢力の存在も考えられる。それが主張する社会秩序、ナショナリズム、伝統的家族主義とどのような関係を新自由主義化は有したのか、がなお不明瞭である。
イギリスについては、福祉社会の解体(水準の切り下げ)・労働組合の弱体化、市場化・金融経済化、などが進行したが、サッチャーの伝統的家族賛美言説は政策化されなかったし、キリスト教保守主義が唱える理念も政策化されなかったし、民族排外主義的政策はむしろ忌避されていた(大陸ヨーロッパで広まったネオナチ的運動は、イギリスではむしろ押さえこまれている)。この政策の組み合わせがジェンダーとどのように関連するのか、さらに考察が必要である。
日本に関しては、まだ主題化して研究会をおこなっていない。日本における新自由主義化は、福祉国家秩序を変革するものではなく、開発主義的・日本的経営型システムを変革するものであったことは、渡辺治・後藤道夫他の研究で論じられてきたが、20世紀後半のジェンダー平等化への政策に対するバックラッシュ的言説と同時進行してきたという事態もある。逆に、新自由主義化と経営・雇用の脱ジェンダー化が共鳴しあって来たという見方もある。
改めて、諸外国との比較において、日本における新自由主義化とジェンダー政策の連関について統合的にとらえる研究を進める必要がある。

Strategy for Future Research Activity

新自由主義により女性の労働力化が政策的に推し進められるなかで、かつて女性のアンペイドワークとして担われてきたケア労働(主に介護労働と育児労働)が、今後誰によって、どのように担われるのかという問題が、新自由主義が進展する諸国で浮上している。
日本では財政削減上、引き続き女性たちにアンペイドで担わせようという新保守主義的な政治的・社会的動向もあり、新自由主義的な女性活用とのあいだでのジェンダー政策の二重化を生じさせている。このような二重化がどのように草の根保守主義を生み出しているのか、あるいは新自由主義と保守主義とのあいだでの女性の分断を生んでいるのかについて、英韓との比較をさらにおこないつつ、分析をおこなう。
また近年の自民党政権で女性活躍が積極的に謳われている。もしもこれがジェンダー的バイアス下のものであるならば、従来私的領域で無償労働としておこなわれてきたケア労働を市場化された領域での仕事として、女性を動員していくものであり、そこでは、やはりジェンダー化された低賃金構造が導入・維持される危惧も大きい。
そのようなジェンダーバイアスを考える際、一方でケア労働に対する男性の配置ならびに彼ら自身のスタンスと、他方で安価な外国人労働力(主に女性)の利用、という論点を考察していく必要がある。そのような論点に対して、現在の日本の政策・企業の意思・人々の意向がどのような方向を指向・志向するものであるのか、考察を進めたい。

Causes of Carryover

今年度はまず理論的な基礎固めをすることを優先させてたため、今年度は資料収集に時間をかけることができなかった。そのため、次年度以降に精力的に資料収集を行うこととし、次年度使用を決定した。

Expenditure Plan for Carryover Budget

資料収集、ならびに資料翻訳(主に韓国語)。

  • Research Products

    (6 results)

All 2016 2015

All Journal Article (2 results) Book (4 results)

  • [Journal Article] 「増田レポート」を読む : 「輝き」と「死」のはざまで2015

    • Author(s)
      千田有紀
    • Journal Title

      ピープルズ・プラン

      Volume: 68 Pages: 23-30

  • [Journal Article] 文化の中の子ども虐待 関係性としての虐待2015

    • Author(s)
      千田有紀
    • Journal Title

      子どもの虐待とネグレクト

      Volume: 17巻1号 Pages: 58-64

    • DOI

      http://search.jamas.or.jp/link/ui/2015255340

  • [Book] 仕事と就職活動の教養講座2016

    • Author(s)
      細谷実、中西新太郎、小園弥生
    • Total Pages
      254(うち11-22頁,153-182頁を細谷が執筆)
    • Publisher
      白澤社
  • [Book] ジェンダー研究/教育の深化のために 早稲田からの発信2016

    • Author(s)
      小林富久子、村田晶子、弓削尚子、細谷実、他
    • Total Pages
      483(うち279-296頁を細谷が執筆)
    • Publisher
      彩流社
  • [Book] 身体と親密圏の変容 (岩波講座 現代 第7巻)2015

    • Author(s)
      菅原和孝、下條信輔、熊谷晋一郎、千葉雅也、門林岳史、千田有紀、赤川学、高谷幸、樫村愛子、風間孝
    • Total Pages
      288(うち163-188頁を千田が執筆)
    • Publisher
      岩波書店
  • [Book] 万博と沖縄返還―1970年前後 (ひとびとの精神史 第5巻)2015

    • Author(s)
      吉見俊哉、千田有紀ほか
    • Total Pages
      336(うち207-230頁を千田が執筆)
    • Publisher
      岩波書店

URL: 

Published: 2017-01-06  

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