2015 Fiscal Year Research-status Report
ハイデッガーと京都学派を軸とする「場所的‐情意的知」の検討
Project/Area Number |
15K01999
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Research Institution | Kyoto Institute of Technology |
Principal Investigator |
秋富 克哉 京都工芸繊維大学, 基盤科学系, 教授 (80263169)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 場所論 / ギリシア悲劇 / アリストテレス / 構想力 |
Outline of Annual Research Achievements |
第一年目に掲げた3つの課題と予定していた海外出張に即して説明する。 研究課題の第一は、ハイデッガーのギリシア悲劇解釈の検討である。既発表の3本の論文をもとにソポクレス解釈の整理に携わるとともに、新たに刊行された『黒ノート』と1930年代の覚書きの読解を進めながら、アイスキュロスの『縛られたプロメテウス』についての言及とその思想的背景の考察に着手した。その研究の一部は、共編著として取り組んだ『続・ハイデガー読本』の寄稿論文の執筆にも活かした。 第二の課題、西田の場所論の掘り下げについては、前期のテクストの読解を中心に、場所概念に至る過程を改めて検討した。具体的には、『善の研究』と『自覚に於ける直観と反省』をもとに、純粋経験から自覚(絶対自由の意志)に向かう展開を、特に「意志」に留意して検討するとともに、同じく前期ハイデッガーの思想において「意志」が際立った位置を占めることに着目し、一昨年度から「哲学の家郷」のタイトルのもとハイデッガーと西田を比較対照する論考として連載を開始したシリーズの第2回目分として発表した。また、同じくハイデッガーと西田それぞれの「場所」概念を位置づける論文(未公刊)を執筆した。 第三に、ハイデッガーと三木・西谷の関係の考察については、上記『続・ハイデガー読本』への寄稿論文執筆に向けて、三木と西谷それぞれのアリストテレス論と構想力論を取り上げ、ハイデッガーの立場との比較対照を行なった。とりわけ、三木と西谷両者の取り組みの背景に西田の場所論との対決があることが明らかになり、ハイデッガーと西田という主題に対しても大きな光を投げかけることになったのは、大変有益であった。 海外出張としては、当初の予定通り、テュービンゲン大学で資料調査を行うとともに、メスキルヒ市で開催されたハイデッガー哲学シンポジウムに参加して、ドイツの研究者たちと研究交流を行なった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記のように、第一課題については、既発表分の内容の再検討と新たなテクスト読解を通して、「ハイデッガーのギリシア悲劇論」として計画している研究の全体像がいっそう明らかになり、そのことによって既発表分を全体のなかに位置づける展望、さらに今後の課題も明らかになった。 第二、第三課題については、いずれも研究成果を論文執筆の形で実行できた。 以上のことから、計画している研究は、ほぼ順調に進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
第一課題については、関係テクストの読解を重ねながら、「ハイデッガーのギリシア悲劇論」全体の執筆を積極的に進めていく。その研究の一部を、ドイツで発表予定の論考に活かするつもりである。 第二課題については、西田の場所論を、アメリカで公刊予定の西田哲学英文論文集に担当執筆する予定なので、まずはその論考執筆を目標にして研究を進めていく。この準備のために、プラトン哲学のコーラ概念とアリストテレス哲学のトポス概念を検討する予定であるが、その作業は同時に第三課題に通じていくもので、一年目に行なった三木と西谷のアリストテレス論、構想力論との連関を探る作業となるはずである。西谷については、それと並行して前期の構想力論を再検討するとともに、主著『宗教とは何か』を読解するつもりである。
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Research Products
(2 results)