2016 Fiscal Year Research-status Report
自然倫理思想の比較研究―F・G・ユンガーの戦後思想と現代のコスモロジー
Project/Area Number |
15K02013
|
Research Institution | Shimonoseki City University |
Principal Investigator |
桐原 隆弘 下関市立大学, 経済学部, 教授 (70573450)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
今井 敦 龍谷大学, 経済学部, 教授 (10380742)
中島 邦雄 独立行政法人水産大学校, その他部局等, 教授 (00416455) [Withdrawn]
小長谷 大介 龍谷大学, 経営学部, 教授 (70331999) [Withdrawn]
増田 靖彦 龍谷大学, 経営学部, 教授 (50350369)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 道徳の社会理論 / マルクス主義 / 内的自然の改善 / 類倫理 / 生命の自然発生性 / 自己の生の自律的形成 |
Outline of Annual Research Achievements |
最も重要な研究成果は、桐原隆弘(代表者)「道徳の社会理論――マルクス主義から社会学理論を経由してアドルノとハーバーマスの自我論へ」(下関市立大学論集第60巻第2号)である。同論文は一昨年度の桐原論文「自然の隔離か自然の取り込みか?――文化の位置づけの観点から見たドイツ生殖医療技術論争」(下関市大論集第59巻第3号)の問題意識を受け継いでいる。後者ではハーバーマスとビルンバッハーの見解の相違を中心に、「自己存在可能性」のための不可欠の条件と見なされ得る人間の生命の自然発生性や、「物件と人格」の枠組みでの初期胚の取り扱いの問題を自然観の文脈で検討した。 これに対し前者では、マルクス主義と道徳ないし自然観との関係に関する20世紀初頭以来の議論を踏まえたうえで、ハーバーマスとミヒャエル・クヴァンテとのマルクス主義理解をめぐる論争に焦点を当てて、そこで取り上げられた生殖医療技術論論争を再構成した。人間の内的自然の改善は、まさしくハーバーマスの標榜する、そして初期マルクスに淵源するとも見なされ得る「類倫理」として要求されてしかるべきではないかとクヴァンテは主張する。このある種の挑発に対し、ハーバーマスはあくまでも生命の自然発生性と自己の生の自律的形成との二元論に固執する。この論争においては、生殖医療技術に対する、さらには生命操作技術全般に対するアンビバレントな見方が反映されていると言えよう。 以上の研究成果は研究計画のうち、現代の自然観ないし「コスモロジー」と生命倫理分野におけるアクチュアルな課題との結び付きに関する一般的テーマを扱うものである。また昨年度は、3回の研究会における討議を通じて、ユンガーの技術論・自然観について分担者、協力者各自の理解を深めた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究計画のうち、現代の自然観ないし「コスモロジー」と生命倫理分野におけるアクチュアルな課題との結び付きに関する一般的テーマについてはおおむね順調に進展している。ただし、F・G・ユンガーの生命哲学そのものについては、研究会開催における討議を通じてユンガーの技術論・自然観について分担者、協力者各自の理解を深めたものの、計画で挙げていたテキストへの論及は十分ではなかった。そのため、今年度は各自がそれぞれの観点からユンガーの生命哲学について踏み込んだ見解をまとめたい。
|
Strategy for Future Research Activity |
現代の自然観ないし「コスモロジー」と生命倫理分野におけるアクチュアルな課題との結び付きに関する一般的テーマについてはおおむね順調に進展している。また、昨年度は3回の研究会における討議を通じて、ユンガーの技術論・自然観についての分担者、協力者各自の理解を深めた。今年度はこれらの成果に基づいて、F・G・ユンガーの生命哲学にアプローチする。具体的には、各自がそれぞれの観点からユンガーの生命哲学についてのテキストにアプローチし、各自の見解をまとめたい。
|
Causes of Carryover |
研究会開催の回数が3回とやや少なかったことが最大の理由である。分担者、協力者の居住地がそれぞれ離れており(下関、京都、東京)、勤務校の都合等でタイミングが合わない状況がある。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
最終年度でもあるため、研究会開催回数を増やし、確実に成果を残す。
|