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2016 Fiscal Year Research-status Report

レジリエントな心的システム確立のための発達現象学的治療理論の構築

Research Project

Project/Area Number 15K02015
Research InstitutionToyo University

Principal Investigator

稲垣 諭  東洋大学, 文学部, 教授 (80449256)

Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) 齋藤 慎之介  自治医科大学, 医学部, 助教 (40726288)
西依 康  自治医科大学, 医学部, 助教 (40749529)
Project Period (FY) 2015-04-01 – 2018-03-31
Keywordsレジリエンス / 臨床 / オートポイエーシス / システム / 自己 / サイバネティクス / 最近接領域
Outline of Annual Research Achievements

人間の精神ないし心が「安定化」し、「レジリエント」な強さを備えるための条件の吟味を引き続き行っている。より詳細には、初年度に明らかにした問題設定として①「患者」、②「臨床家」、③「医学臨床プロセス」、④「医学システムとその境界」のそれぞれにおける「レジリエンス」の内実を追及している。
研究代表者の稲垣は、レジリエントなシステムを理解するためのモデルとして、オートポイエティックな「二重の自己性」の仕組みの詳細な展開を取りまとめている。この二重の自己性とは、可変性を伴い次々と展開可能な自己の働きと、安定性や構造を維持する反復する自己の働きからなり、その二重の自己性が均衡することで安定するシステムモデルが構築できると予想される。これは、心の発達における「拡張経路」と「抑制経路」という安定化に対する二重の収束のモードの分析に必要な考察である。
分担者の齋藤は、社会システム理論に準拠し、精神科臨床をシステム論的に記述することを試みた。特に人間の精神に治療的変化を与えるものとして発展してきた精神療法というコミュニケーションについて、オートポイエーシスの観点からその機能と構造について論じた。レジリアントなコミュニケーション・システムが、レジリアントな精神に関連するという視点を打ち出し、今後の議論する上の基盤を作成した。
分担者の西依は、学知としての精神医学が、病を精神病理学をもとに探求するのではなく、むしろ病という出来事から(精神)病理学を構築するといういわば逆説的な仕方で展開してゆくということ、またそれによってある種の人間像とともに、精神医学における問題そのものをも構築・再生産しているという点について指摘した。その上で医療における最小単位であるところの医師(医療者)―患者という対と、こうした学知としての精神医学の作動との関係についても可能な限り考察をおこなった。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

今年度は、研究代表者が大学を異動したため、研究の遅れが予想されたが、研究分担者の先生とメールおよびskypeにて綿密に連携を取り、かつ、自治医科大学でのミーティングを最低月一回のペースで継続するよう鋭意努めた。そのため研究を遅延させることなく進めることが出来たと確信している。また、整形疾患の臨床家の先生を招くことで、臨床データを収集するだけではなく、臨床という経験に含まれる不確定要素をどのように扱うべきかの貴重な示唆もいただけたことが、研究の進展に大きく寄与する結果となった。

Strategy for Future Research Activity

これまでの年度で精錬された作業仮説および論点、臨床データをもとに、問題設定としての①「患者」、②「臨床家」、③「医学臨床プロセス」、④「医学システムとその境界」のそれぞれにおける「レジリエンス」の内実を統合的に追及していく。しかも、そうした内実が発達現象学的に、臨床家に対してどのような示唆を行えるかを提示するところまで展開することを目指す。そのために月一度の研究ミーティングにとどまらず、研究分担者と緊密に論じあえる研究体制を構築する。

Causes of Carryover

昨年度は、研究代表者が大学の異動を行ったため、新しい職場での業務の流れをつかむまで研究の進行に遅れが生じた。とはいえ、研究活動および成果そのものは業績およびミーティングの内容からも明らかなように、それなりに取り戻すことができたと考えている。ただし研究費の使用に関しては、学会参加や必要図書の購入ができなかったことも確かであり、そのため残額が生じてしまった。平成29年度は最終年度ということもあり、適切、効率的な使用を心がけて運用する。

Expenditure Plan for Carryover Budget

平成29年度は研究費使用に関する遅れを回復するために、4月段階から必要図書の購入および学会出張等の旅費を適切に計画的に使用する。平成28年度は、他の研究費および他の業務との関係性に不明確かつ非効率的なところが多々あったため、平成29年度はその反省を生かすことで最終的な成果の統合を行う。

  • Research Products

    (16 results)

All 2017 2016 Other

All Journal Article (9 results) (of which Peer Reviewed: 5 results,  Acknowledgement Compliant: 2 results) Presentation (4 results) (of which Invited: 1 results) Book (2 results) Remarks (1 results)

  • [Journal Article] 個はいかにして立ち上がるのか?―個体化の現象学に向けて2017

    • Author(s)
      稲垣 諭
    • Journal Title

      国際哲学研究 別冊

      Volume: 9 Pages: 99-114

  • [Journal Article] 最近接領域の現象学―臨床経験はどこまで拡張できるか2017

    • Author(s)
      稲垣 諭
    • Journal Title

      臨床心理学

      Volume: 17 Pages: 252-256

  • [Journal Article] 整形疾患という問い―ある理学療法士の臨床から2017

    • Author(s)
      稲垣 諭
    • Journal Title

      白山哲学

      Volume: 51 Pages: 85-104

  • [Journal Article] 疼痛性障害入院例の臨床像と精神病理学的背景2017

    • Author(s)
      齋藤慎之介、吉成美春、小林聡幸
    • Journal Title

      精神神経学雑誌

      Volume: 印刷中 Pages: 印刷中

    • Peer Reviewed
  • [Journal Article] 現象学の可能性を再考する―実践的学科との結びつきを中心に2016

    • Author(s)
      稲垣 諭
    • Journal Title

      現象学年報

      Volume: 32 Pages: 59-65

  • [Journal Article] 吉行淳之介の憂鬱―うつ病による創造と喪失について2016

    • Author(s)
      齋藤 慎之介
    • Journal Title

      日本病跡学雑誌

      Volume: 91 Pages: 7-19

    • Peer Reviewed / Acknowledgement Compliant
  • [Journal Article] 赤線地帯の愛そして夢―吉行淳之介が描こうとしたもの2016

    • Author(s)
      齋藤 慎之介
    • Journal Title

      日本病跡学雑誌

      Volume: 91 Pages: 45-56

    • Peer Reviewed / Acknowledgement Compliant
  • [Journal Article] 緊張病(カタトニア)を呈した「神経症」の一例2016

    • Author(s)
      稲川優多、井上弘寿、齋藤慎之介、小林聡幸、須田史朗
    • Journal Title

      東京精神医学会誌

      Volume: 31 Pages: 1014

    • Peer Reviewed
  • [Journal Article] 宮古島「オトーリ神話からアルコール依存症へー飲酒を巡るあるEthnopsychotherapieの試み2016

    • Author(s)
      西依康
    • Journal Title

      こころと文化

      Volume: 15 Pages: 21-29

    • Peer Reviewed
  • [Presentation] 疼痛性障害入院例の精神病理学的検討2016

    • Author(s)
      小林聡幸、齋藤慎之介
    • Organizer
      第39回日本精神病理学会
    • Place of Presentation
      アクトシティ浜松 コングレスセンター
    • Year and Date
      2016-10-08
  • [Presentation] 信仰におけるおそれとおののき:ある宗教的主題の文化結合性妄想について2016

    • Author(s)
      西依康
    • Organizer
      第112回日本精神神経学会学術総会
    • Place of Presentation
      幕張メッセ国際会議場
    • Year and Date
      2016-06-04
  • [Presentation] 健康と持続可能性2016

    • Author(s)
      稲垣 諭
    • Organizer
      一般社団法人サステイナビリティ・サイエンス・コンソーシアム(SSC) /東洋大学国際哲学研究センター(「エコ・フィロソフィ」学際研究イニシアティブ)共催研究集会
    • Place of Presentation
      東洋大学
    • Year and Date
      2016-06-03
  • [Presentation] 精神科臨床のシステム論的記述の試みー精神科医の視点から2016

    • Author(s)
      齋藤慎之介, 西依康, 稲垣諭
    • Organizer
      神経現象学リハビリテーション研究センター 第29回コロック
    • Place of Presentation
      東洋大学
    • Year and Date
      2016-05-14
    • Invited
  • [Book] 現象学のパースペクティヴ2017

    • Author(s)
      河本英夫・稲垣諭・植村玄輝・武藤伸司・坂本邦暢・山口一郎・廣瀬浩司・岩崎 大・加藤敏・吉永和加・武内大・中山純一
    • Total Pages
      220(100-119)
    • Publisher
      晃洋書房
  • [Book] 医と知の航海2016

    • Author(s)
      永井良三監修
    • Total Pages
      354(38-60)
    • Publisher
      西村書店
  • [Remarks]

    • URL

      http://synodos.jp/welfare/19064

URL: 

Published: 2018-01-16  

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