2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K02108
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Research Institution | Kyoto Institute of Technology |
Principal Investigator |
永井 隆則 京都工芸繊維大学, デザイン・建築学系, 准教授 (60207967)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 気質 / 想像力 / 野蛮 / 挑発性 / アナキスム |
Outline of Annual Research Achievements |
セザンヌ書簡の中に現れたセザンヌの芸術論に関する言葉を分析する事でセザンヌの芸術論を整理した。書簡を精読しセザンヌが所持していたと推定される書物や雑誌をリストアップした。古書店や図書館等で、それらを収集しそれらとセザンヌの芸術論との関係を検討した。特に、詩人で美術批評家のボードレールの著作の中でどれを確実にセザンヌが所持したかを同定しつつ、ボードレールの芸術論の中でも、「野蛮」、「想像力」の概念、さらに、反アカデミスム、反近代主義の立場をセザンヌがどのように継承したかを明らかにした。また、小説家で美術批評家のゾラの美術批評を精読し、それらに現れた「気質」、「個性」、<一切を忘却して自然を自身の気質で感じ表現する>といったゾラの芸術論にセザンヌが着想を得て自らの芸術論を形成した可能性を明らかにした。ゾラはサロン評で第三共和制下のサロン絵画がブルジョワに媚びへつらう商業主義絵画に転落していることを批判しているが、これにセザンヌが共鳴し、反商業主義の立場から「絵画における真実」の表明を芸術的スローガンとして形成するに至った事を明らかにした。生涯一度も顔を合わすことのなかったクールベの作品をセザンヌがいつ、どこで実見する機会を得たかを明らかにしつつ、セザンヌがクールベの「醜の美学」、「挑発性」を継承したこと、アカデミー・スイスで初めて出会った後、ピサロとセザンヌがどのような交流を続けたかを実証的に追跡しつつ、ピサロの「アナキスム」がその程度、セザンヌの芸術論形成に作用を及ぼしたかを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
11月末にパリの「国立図書館」、「手紙と手稿の博物館」でセザンヌ書簡を調査し、書簡で言及された図書をパリの古書店で収集し、社会科学高等研究院教授に会って当該研究に関して専門知識の提供を求める予定であったが、パリ同時多発テロが起こり急遽、パリでの調査を中止した。
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Strategy for Future Research Activity |
産業革命、都市改造、消費革命の進んだ時代にあって、セザンヌが「アンチ・モダニスム」の思想を形成し制作を通して社会参加したことを明らかにする。「アンチ・モダニスム」の思想が晩年、特に、詩人、ジョワシャン・ギャスケとの交流を通して「ユートピア思想」へと変容したことを明らかにする。
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Causes of Carryover |
11月パリで調査を行う予定でったが、同時多発テロが起こり、滞在を取りやめたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2015年度の海外調査内容は、2016年度海外調査期間に併せて行う。当該テーマを巡って、テキサス大学教授を招聘し専門知識の提供を受け意見交換する。
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Research Products
(3 results)