2016 Fiscal Year Research-status Report
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15K02108
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Research Institution | Kyoto Institute of Technology |
Principal Investigator |
永井 隆則 京都工芸繊維大学, デザイン・建築学系, 准教授 (60207967)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 自然 / 感覚 / finiの否定 / アンガジュモン |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度に未調査に終わった、セザンヌ書簡(ゾラ宛)をパリの国立図書館で調査し、前度度に引き続き、セザンヌの芸術論形成にボードレールとゾラの芸術論が果たした役割を考察した。社会科学高等研究院教授に面談をお願いし、教授の下で作成中の博士論文に関して指導を受ける事で、セザンヌに於ける<芸術論>に関する現段階での研究成果に対する批判検討を行った。エクス・アン・プロヴァンスのメジャヌ図書館に所蔵されるセザンヌ書簡(ギャスケ宛)を調査した。 7月30日に開催された「ダリオ・ガンボーニ教授来日記念講演会およびシンポジウム <ゴーギャンとルドンに関する最新研究>」で「ゴーギャンのセザンヌ」と題して発表し、ゴーギャンとの比較からセザンヌの<芸術論>を明らかにした。前者が複製技術時代の到来に順応した「引用」に表現の可能性を求めたのに対して、セザンヌは、そうした既製イメージを一切拒否して自然から独自のイメージを形成しようとした点に特殊性があることを論じた。 9月25日に開催された国際シンポジウム「Appreciating the Traces of an Artist’s Hand」で、「How Paul Cezanne Rejected the Fini Concept」と題して発表し「fini」の否定という観点からセザンヌの芸術論を論じ、シンポジウム報告集に論文を寄稿した。 12月17日開催された「国際シンポジウム;<ゾラの美術批評を再考する>」で「アンガジュマンとしてのゾラの美術批評」と題して発表し、ゾラの芸術論の意義を形式主義とも自然主義とも異なる「社会参加」として明らかにした。 当該テーマを巡って、海外の研究者と意見交換を進めるため、論文「セザンヌ於ける<模写>の意味」を英訳して雑誌『Aesthetics International』(Nr.21)に投稿した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年パリで同時多発テロが起きたためパリでの調査が叶わなかったが、本年はパリでの調査を行い遅れを取り戻した。 シンポジウムに三回参加して、当該テーマに関わる発表を行い、かつ、国内外の研究者と意見交換することが出来たため格段に研究が進展した。
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Strategy for Future Research Activity |
Mchael Doranの編纂した『セザンヌとの会話』に登場する文献をフランス国立図書館等で網羅的に収集する。 エクス・アン・プロヴァンスのセザンヌのアトリエでセザンヌが所有していた書籍を調査し古書店等で収集する。 当該テーマに関連する博士論文の執筆を継続しつつ、セザンヌの芸術論を特にエミール・ベルナール、ジョワシャン・ギャスケの芸術論との比較から明らかにする。 社会科学研究院名誉教授、パリ第一大学名誉教授、オルセー美術館主任研究員などセザンヌ研究者の前で当該研究の成果を口頭発表し指導を受ける。 「セザンヌ肖像画展」(オルセー美術館、パリで開催予定)、オルセー美術館とオランジュリー美術館のセザンヌ・コレクションで作品調査を行い、実制作からセザンヌの芸術論について検討する。
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Causes of Carryover |
初年度(平成27年度)にパリで同時多発テロが生じ海外調査を控えた関係上、平成28年度に於いて、若干の未使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度内に、未購入資料を購入するなどして、次年度使用額を使用する。
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Research Products
(7 results)