2017 Fiscal Year Research-status Report
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15K02108
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Research Institution | Kyoto Institute of Technology |
Principal Investigator |
永井 隆則 京都工芸繊維大学, デザイン・建築学系, 准教授 (60207967)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ユートピア / アプロプリアシオン / 先駆者 / セザンヌの不安 / 近代絵画の父 |
Outline of Annual Research Achievements |
パリ同時多発テロのため、実施年度を順送りにしていた、セザンヌのアトリエ(エクス・アン・プロヴァンス)での調査を同館館長の協力を得て実施した。具体的にはアトリエ内に残された書籍を同館が作成済みのリストと照合しながら確認して写真撮影した。さらに、調査で確認した書籍を古本屋で探し可能な限り購入した。Michael Doran編集のConcersation avec Cezanne(1978)に抜粋されたセザンヌと同時代の批評や証言を網羅的に蒐集した。 パリに滞在し、本テーマと関連して準備中の博士論文の概要をパリ第一大学名誉教授、、オルセー美術館学芸員の前で口頭発表し助言を求めた。さらに、指導教授のパリ社会科学高等研究院名誉教授には序論(A4、ダブルスペース、約30枚)を提出し指導助言を得た。教授の指導に従って、Georg Simmelの生の哲学,Simmelを継承したHans Blumenbergの人間学に関する著作を精読し、セザンヌの「ユートピア芸術論」のための哲学的、理論的根拠を探した。 オルセー美術館で開催中の「セザンヌ肖像画展」を調査した。 国際シンポジウム「ピカソと人類の美術」で「セザンヌに変身するピカソ」と題して口頭発表し、ピカソが継承したセザンヌの芸術論を明らかにした。 共著『セザンヌー近代絵画の父とは何か?』を執筆し、セザンヌの芸術論に関する基礎知識を整理した。 同時代の批評家、ギュウターヴ・ジェフロワのセザンヌ論を精読し、セザンヌの個展を初めて企画した画商のアンブロワーズ・ヴォラールの活動に関する先行研究を調査して、生前、フランスで形成された最初のセザンヌ像を確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
パリ同時多発テロに伴う遅れを取り戻すのみならず、本科研のテーマに関して、フランス人研究者の指導助言を得る事ができ、当初の計画にはなかった新しい調査対象を得て、新しい視点を獲得できた。 国際シンポジウムで発表することで、国内外の研究者と情報交換、意見交換が出来た。
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Strategy for Future Research Activity |
オルセー美術館学芸員から指摘を受けたセザンヌとゾラとの創造的関係に関して深く掘り下げるために、国際シンポジウムを企画し、国内外から8名(セザンヌとゾラ、それぞれ4名、内フランス人3名)を招き、この問題について討議する。 来日中のポール・セザンヌ協会会長とは、本科研テーマを巡って意見交換する。 これまで、据え置いてきたジョワシャン・ギャスケの芸術論との比較からセザンヌの芸術論を明らかにする。ガレ、ロダンの芸術論、ベルクソンの哲学との比較からセザンヌの芸術論の特徴を明らかにする。 以上の成果を、科研と連動して準備中の博士論文に盛り込む。Skypeでオルセー美術館学芸員から、パリに滞在して面談でパリ第一大学名誉教授から、メールでパリ社会科学高等研究院名誉教授から指導助言を受ける。
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Research Products
(6 results)