2016 Fiscal Year Research-status Report
近代日本のラジオ放送における音楽文化とアイデンティティ形成に関する基礎的研究
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15K02183
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Research Institution | Okinawa Prefectural University of Arts |
Principal Investigator |
三島 わかな 沖縄県立芸術大学, 付置研究所, 研究員 (60622579)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大畑 亮子 (長嶺亮子) 沖縄県立芸術大学, 付置研究所, 研究員 (30589784)
酒井 健太郎 昭和音楽大学, 付置研究所・オペラ研究所, 准教授 (60460268)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 共時性 / 愛郷心 / 国民統合 / 国際交換(交歓)放送 / 海外放送 / ラジオ体操 / 村芝居の再編 / 宣伝 |
Outline of Annual Research Achievements |
三島(代表者)の実績は次の5点。①沖縄本島内のラジオ放送の受信環境に関する解明、②日本放送協会の「北米向け放送」に関する新聞記事の収集、③日本放送協会の「国際交換放送」に関する新聞記事の収集、④沖縄本島・宮古島・台北でのラジオ聴取者に対する聴き取り調査、⑤ハワイ在日系人への(放送音源のアーカイヴ情報に関する)予備調査。 上記①の解明点は次のとおり。受信器の主な設置機会は小学校創立記念にあった。受信器は県外や海外への出稼者や移民の成功の証として象徴的なモノであり、郷里を離れた人々は母校の記念日に受信器を寄贈した。ラジオ体操は1940年前後の国策と相まって県内で普及した。大政翼賛会の指導下で従来の村芝居の観衆に媚びる不面目な遊興気分が見直され、新たに「巴祭り」が提唱された。そこでラジオ体操は「特殊な娯楽」として組み込まれ、琉球舞踊や古典劇、民俗芸能や新作歌曲等とともに享受された。教育関係者は標準語教育の促進をめざしてラジオ放送へ大きな期待を寄せた。 大畑(長嶺)(分担者)は、日本統治期における聴取経験を確認するべく、「湾生(台湾生まれの日本人)」や台湾人、短・長期滞在日本人による記録(手記、新聞、雑誌)や当時を回顧する会合に出席した。また、1930から40年代に台北放送協会の番組に出演していた「湾生」の方へのインタビューから、当時の放送や音楽の状況を確認した。 酒井(分担者)は、日本を中心とするラジオ放送の黎明期の歴史を概観し、「国際放送」(「国際交換(交歓)放送」等を含む)と「海外放送」の相違を確認した。その上で1930年のクリスマスに際しておこなわれた、アメリカと日本および他国・地域間での「国際放送」の実施の経緯と内容を、『東京朝日新聞』ならびに『読売新聞』の記事をもとにして整理した。以上をもとに、当時の日本の対外文化政策において「国際放送」をいかに位置づけうるか検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
三島(代表者)は、平成28年度後半に身内の介護への対応が生じ、予定していた調査出張(複数)を遂行することができなかったため。 大畑(長嶺)(分担者)は育児期間にあり、やむを得なく研究時間が削減されたため。
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Strategy for Future Research Activity |
三島(代表者)の今後の推進方策は次の3点となる。①「国際交換放送」のコンテンツに関する史料調査および実態解明と分析、②「北米向け放送」のコンテンツに関する史料調査および実態解明と分析、③ハワイ州の諸機関および個人を対象とした戦前の放送音源(アーカイヴ)調査の3点である。 三島は上記①および②の実態解明をつうじて、とりわけ「沖縄」に注目しながら、それぞれの放送枠が対外的(国際社会、北米の日系人社会)にどのような機能や意義をもっていたのかについて考えたい。具体的には①「国際交換放送」の番組では「沖縄」の歴史や文化がどのようにとりあげられ、そこでは日本人(沖縄人)のどういった特性が、どのような放送内容をもって、どのように表象されたのかを解明する。なかでも「沖縄人」の特性が敷衍されて「日本人」全体の特性として発信された番組に注目したい。同様に②「北米向け放送」の番組では、北米の日系人コミュニティに向けて、どのようなコンテンツ(メッセージ、音楽)が放送され、彼らはそれらの番組をどのような思いで聴取したのかを明らかにしたい。 大畑(長嶺)(分担者)の今後の推進方策は、台湾放送協会製作の番組とその音楽が内地向けに放送されるなかでどのように変化したのか整理する。そこから、外地台湾のアイデンティティ形成の方向性を明らかにしたい。 酒井(分担者)の今後の推進方策は、1つに日本と諸外国との放送協定の締結の経緯を明らかにし、2つに協定の締結前後において日本放送協会の放送内容がどのように変化したのかを調査することにある。平成29年度は、特に戦時下の「国際放送」(「海外放送」ではなく) の実施状況とそれらのコンテンツを詳細に検討する。
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Causes of Carryover |
三島(代表者)は身内の介護への対応が生じたため、平成28年度後半に予定していた調査出張(複数回)を遂行することができなかったため。 大畑(長嶺)(分担者)は育児期間にあり、平成28年度に予定していた計画の一部を実施することができなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度以降の使用計画については、三島(代表者)による海外調査(ハワイ州)および国内調査(東京ほか関東圏)を遂行する際の旅費、謝金、印刷費等に、次年度使用額を充当する予定である。 あわせて海外調査(ハワイ州)の際には研究協力者(1名)も同行予定である。その際の協力者の旅費として次年度使用額を充当する予定である。
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Research Products
(7 results)