2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K02213
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
渡部 泰明 東京大学, 人文社会系研究科, 教授 (60191813)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 百人一首 / 文献学 / 古注釈 / 注釈学 / 家集 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、1)『百人一首』の文献学的研究、2)『百人一首』の古注の相互関連の研究、3)『百人一首』の注釈学的研究の三本柱からなるが、1)については、国文学研究資料館所蔵の資料や、岡山大学等の所蔵資料を閲覧・調査した。2)については、国文学研究資料館および東京大学・内閣文庫等の資料を調査し、その相互の関係や、グルーぷ化の可能性について分析・考察した。3)については、『百人一首』所収歌人のうち平安前期以前の歌人(1~30)、および後期の歌人(藤原基俊・西行・藤原定家・源実朝・藤原公経・後鳥羽院・順徳院)について考察した。その際、それぞれ個人の家集における位置づけや意味が極めて重要であり、それによって和歌の解釈や撰者の選定意図があらたに意味付けられるという事実を発見し、その新視点に基づいて、当該歌人のの家集を徹底的に調査することによって、当該歌にあらたな解釈や意味付けを行った。そこで得られた知見は、西行学会大会シンポジウム(8月)の「西行の恋の題詠歌」の発表や、和歌文学会大会シンポジウム「和歌をつくる」などで随時口頭発表し、また西行の家集の和歌の主体表現の独自性について、「西行和歌の作者像」という論文を、『二〇一四年パリ・シンポジウム 源氏物語とポエジー』に掲載した。また、神奈川県立教育センター主催の講演(8月24日)においても、定家の歌をめぐっての考察を発表した。これは同県の教員研修のための講演であるが、『百人一首』が中等教育における必須の教材でもあるために、本研究の社会還元を図ったものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
おおむね計画通りに進められている。想定外の状況としては、所属機関の学務日程の体制の変更(4ターム制への移行)によって夏休み期間が大幅に縮小され、予定していた出張が限られてしまったことだが、これは首都圏に所在する文献資料の調査によってカバーすることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度以降も、『百人一首』および『百人一首』古注の諸伝本の博捜と調査分析を進展される。ただし、当初予定して九州地方に所蔵されている文献の調査が、3月14日以降発生した、熊本を中心とする一連の大規模地震によって支障を受ける可能性があるので、その場合は、適宜東北地方所蔵文献の調査などに振り替え、研究を滞りなく継続させる。当該歌人の家集との関連に着目するという方法の重要性が増したことによって、私家集の調査分析をも範囲を広げて調査し、考察する。
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Research Products
(4 results)