2016 Fiscal Year Research-status Report
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15K02265
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Research Institution | Tokyo Woman's Christian University |
Principal Investigator |
光延 真哉 東京女子大学, 現代教養学部, 准教授 (70586388)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
倉橋 正恵 立命館大学, 文学部, 非常勤講師 (90425017)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 歌舞伎 / 江戸 / 年代記 / 劇書 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、従来の歌舞伎研究において十分に活用されてこなかった、『役者名声牒』、『続名声戯場談話』、『続芝居年代記』という3点の「年代記」資料の翻刻を行ない、それを発表することで、当該分野における資料の面での研究環境の整備を行なうことを研究の第一ステップとしている。 本年度(平成28年度)では、この3点の歌舞伎「年代記」資料の翻刻データおよび解題原稿を出版社(新典社)に入稿し、数度にわたる校正作業、および索引作成作業を経て、『新典社研究叢書291 未刊江戸歌舞伎年代記集成』(倉橋正恵・桑原博行・小池章太郎・齊藤千恵・光延真哉編、A5判、966頁)と題した翻刻集を2017年2月に刊行した。同書の目次は次の通りである。 凡例/役者名声牒/続名声戯談話/続芝居年代記/解題(役者名声牒 光延真哉/続名声戯場談話 桑原博行/続芝居年代記 倉橋正恵)/あとがき/名題索引/執筆者紹介 本書の刊行の意義としては、歌舞伎研究に際して最も基本的な資料であるこうした「年代記」資料を、解題や索引まで付した、手に取りやすい形で提供し、広く研究者の利用に供することで研究基盤の底上げにつなげることにある。また、同書は、歌舞伎研究のみならず国際的な広がりを見せる浮世絵研究の分野においても、特に歌舞伎役者を描いた「役者絵」の考証において、作品や上演年月、配役といった情報を得る際の基礎的文献として活用されることが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の第一ステップの成果物となる翻刻集の刊行という当初の目標を達成することができた。校正作業の方針調整のための打ち合わせ回数が、想定していたよりもやや多くなってしまったが、索引作成のためのアルバイト雇用も含め、おおむね計画通りに進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度では翻刻集の刊行という第一ステップの完遂を踏まえ、年代記資料を文芸的な視点から考察するという第二ステップに入る。 具体的には、翻刻集収録の『役者名声牒』『続名声戯場談話』『続芝居年代記』を中心に年代記資料の役名索引を作成すること、また、年代記資料の歴史的変遷をたどってそれぞれの資料の特徴を探るとともに、番付・役者評判記・浮世絵等の周辺資料の情報との比較を通じて、年代記資料さらには歌舞伎資料の編者の文学的営為が、それぞれの資料にどのような形で顕れているかを考察することなどを予定している。 研究分担者および研究協力者との研究集会を年に数回開催し、学会発表、シンポジウムなどを通じて、その研究成果を発表していきたい。
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Causes of Carryover |
校正作業のための研究集会の開催が当初想定していた回数よりも多く必要となり、その分、旅費が増えてしまった。それに伴い、他の費目の支出を抑えたため、こうした差し引きで次年度使用分が生じてしまった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度も研究集会を開催する予定なので、そこで用いる文具代あるいはコピー代として使用する予定である。
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