2017 Fiscal Year Research-status Report
太平洋におけるディアスポラ文学―オーストラリアとニュージーランドの場合
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15K02355
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Research Institution | Japan Women's University |
Principal Investigator |
三神 和子 日本女子大学, 文学部, 教授 (90134171)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
有満 保江 大妻女子大学短期大学部, 文学部, 教授 (20097075)
大場 久恵 日本女子大学, 文学部, 学術研究員 (20409270)
加藤 めぐみ 明星大学, 人文学部, 教授 (30247168)
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Project Period (FY) |
2015-10-21 – 2019-03-31
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Keywords | ディアスポラ / オーストラリア / ニュージーランド / 文学作品 / アボリジナル / マオリ / 帰属意識 / イギリス |
Outline of Annual Research Achievements |
「ディアスポラ」と呼ばれる人々の作り出す文学の可能性を探るために、英国の元植民地であったオーストラリアとニュージーランドに焦点を当て、これらの国々のディアスポラと考えられる作家たちの文学作品(主にkatherine Mansfield, Keri Humlme, J.M.Coetxee, Roza Pread, P. L. Travers)に関して考察した。 ディアスポラの考察を発展させたことから、太平洋戦争に関する伝記とフィクション、オーストラリア、中国、日本の相互接続の可能性、また、文化研究に関して学会誌に論文を発表、学会での口頭発表、講演などを行った。 全体として広い視野を獲得するため、オーストラリア。ニュージーランドの他の作家(Janet Frame, Kate Granville など)の作家の作品、また同時代のヨーロッパのディアスポラと考えられる作家(例えば、Katherine Mansfield ならば、James Joyce, D.H. Lawreceなど)と比較し、ディアスポラとしての生き方、故郷への思い、帰属意識の有無、自国への思いなどについて比較、また、共通項を考察した。 これらを通して、両国の人々との心的かかわりの変化、帰属意識の必要性の有無、帰属意識の超越、先住民への姿勢、先住民の自国への意識の変化のなどを見ることができた。すなわち、人々の心に相反する二つの心が見て取れる。一つは帰属意識を超越して、現在どこに住んでいるのかを気にすることなく生きる気持ちと、もう一つは先住民、移住者、それも時代の異なる移住者、それらのハイブリッドの人々が、自国へ帰属意識を持ち、共存しながら生きていき、新しい国を再生させようとする気持ちとである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究メンバーのそれぞれの家庭の事情(出産、育児、介護)、本務校での役職就任により学務が増えたこと、さらには、大学へ新任したことにより、研究の進み方がゆっくりになった。文学作品、先行研究などを研究資料を読み、調べ、考察を深めることはできたが、それを論文へと仕上げるまとまった時間がなかなか取れなかった。 昨年3月末に今までの研究成果を『オーストラリア・ニュージランド文学論集』(彩流社)にまとめ、世に発表したこともあり、さらに研究を深めるために、ここで落ち着いて研究を進める必要があり、すぐに論文という形することができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き Katherine Mansfiled, J.M. Coeztee, Rosa Pread の作品を読み進めながら、オーストラリア、ニュージーランド文学の特質を考察する。先住民たち(アボリジナル、マオリ)の人々のつづった文学も併せて考察し、両国において、先住民とヨーロッパからの移住者が違和感、帰属意識、共存の願いなどをどのように文学においてつづってきたかを考える。また、オーストラリア、ニュージーランドに移住しなかったイギリスのディアスポラたちの文学とくらべて、共通項や違いを考える。そして、アジアからの難民や移住者を迎えている現代のオーストラリアやニュージーランドにおいて、人々の中にどのような願いや問題が生まれてきているかを文学を通して考える。
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Causes of Carryover |
(理由)昨年、論文集を単行本という形にまとめたため、本年は新しい角度から、また、さらに深めた文学作品の読み込みが必要であった。また、研究を深めるために新しい資料が必要であり、その資料を手に入れるための時間が必要であった。文学作品の読みはある程度できたが、そして新しい資料も少し入手できたが、資料の収集がもっと必要である。また、家庭の事情(妊娠、育児、介護))及び、新しい役職の就任、新しく本務校への着任などで時間を取られ、自由に時間が使えなかった研究員もいる。
(使用計画)資料収集のために、積極的に海外の図書館に行く。その資料を読み込む。学会発表、学会に参加し、他の国の研究者と交流し、研究の視野を広げたい。
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