2017 Fiscal Year Research-status Report
シェイクスピア演劇とエリザベス朝・ジェイムズ朝の説教との比較文献学研究
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15K02372
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Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
鶴田 学 福岡大学, 人文学部, 教授 (60352225)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 演劇 / 宮廷説教 / シェイクスピア / ジェイムズ朝 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は本科研費の研究成果の発表として平成29年10月7日(土)に近畿大学において開催された第56回日本シェイクスピア学会にて「『我々の宴』再考 ―『あらし』の宮廷上演と宮廷説教」と題して個人研究発表を行った。発表の主旨は、ジェイムズ朝の著名な宮廷説教師であるラーンスロット・アンドルーズの1615年春イースターの説教とシェイクスピア最晩年の単独作である『あらし』の関係とを指摘したものである。発表では、これまで指摘されることのなかった説教の文言と演劇の台詞の重複するところを検討し、微妙な影響関係があった可能性を示唆した。また、本研究の過程で副産物として見つかった『あらし』における名台詞に関する従来の英米の注釈本における注の誤り(具体的には、劇の台詞の元とされる聖書からの引用がこれまで間違って指摘されている)を訂正する説を公表した。研究のその部分はイギリスの伝統ある学術誌であるNotes & Queries誌に投稿し、2018年3月号に掲載された。本研究は、説教と演劇とのダイナミックな文化交流を捉えることを目的の一つに掲げていたが、平成29年度後半の研究は、まさに当初の目的を達成しつつある。また、宮廷上演という演劇のあり方と宮廷説教が従来の研究によって理解されていた以上に深い関連を持つ可能性も指摘することができた。さらに宮廷内、各種の公衆劇場で上演された演劇の状況をも視野に入れる考察を進めるつもりである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の完成年度としていた平成29年度までには目標を完全に達成することができなかった点において遅れている。しかしながら、上の「研究実績の概要」にも記したように、平成29年度の後半は、当初の目的とした演劇と説教との動的な文化交流という視座に辿り着き、成果の一部ではあるがイギリスの学術雑誌に論点を掲載することがかなった。平成30年度は研究機関の延長を活用し、更なる成果の発表を試みる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、平成29年度後半に目標を達成しつつあった、シェイクスピア演劇と説教の動的な文化交流史という立場からの研究を推進する。細かな語句の解釈や演劇と説教の間の文言の一致という点では、重要な論点を発見しているが、それらを整合性のある論文にまとめ、発見の主旨を明晰化した論考を発表することが課題である。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は主に二つある。一つは、当初の予測に反し、旅費による予算の執行額が低くなったことである。場合によっては海外(英国)の調査も考えていたが実行に至らなかった。また、図書費の執行が適切で必要な図書を選書するために時間を要した。平成30年度は承認いただいた期間延長を活かし、図書の充実に充てる予定である。
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Research Products
(2 results)