2017 Fiscal Year Research-status Report
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15K02455
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
長崎 広子 大阪大学, 言語文化研究科(言語社会専攻、日本語・日本文化専攻), 准教授 (70362738)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ヒンディー文学 / 韻律 / 音韻 / バクティ |
Outline of Annual Research Achievements |
Sukhdev Mishra著Pingalaの2写本の書き起こし作業で一部欠けていたものについて、現地調査を行い、すべての頁での書き起こしを完成させた。また2写本で異なる部分を対象させた表を作成した。今後も改訂は行うが、現時点での校訂テキストを基に、英訳した。詩論書Pingalaで用いられている専門用語に英語で意味を記した用語集を完成させた。 校訂したSukhdev Mishra著Pingalaのなかから、音韻の規則部分と、Varna韻律とMatra韻律の数種類の詩形を取り上げ、ブルガリアのBanskoで開催されたFifth Braj bhasha/early Hindi workshopで解説した。 インドでの写本調査を行い、PatnaのRashtra Bhasha Hindi Parishadのカタログに記されたSukhdev Mishraの写本は同協会に所蔵されていないことが分かったが、VaranasiのNagari Pracarini SabhaにはSukhdev Mishraの著した詩論書の写本が数点見つかり、その写しを入手することができた。 ヒンディー韻律の音韻の歴史的変遷を明らかにした論文1点「ヒンディー詩における音韻的リズム」を学術雑誌『南アジア言語文化』で発表した。また、英語論文'Duality in the Language and Literary Style of Raskhan's Poetry'(Text and Tradition in Early Modern North India, New Delhi: OUP)では、古ヒンディー詩人ラスカーンの用いたサワイヤー韻律の音韻的リズムの分析を行った。論文「ムガル皇帝アクバルとふたりのスールダース―聖者伝文学の記述をとおして―」(『印度民俗研究』所収)で、同名の古ヒンディー詩人の作品分析を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Sukhdev Mishra著Pingalaの2写本の書き起こしは完成し、マートラー韻律とヴァルナ韻律の部分を英訳した。だが、韻律の種類の数を導き出す計算式や、その表作成の方法を記した部分は、完全に理解できていないため、英訳が進んでいない。 現地調査では予想以上にSukhdev Mishraの詩論書の写本が見つかり、これらは、Pingalaの校訂作業でも大いに参考になる文献であった点が収穫であった。 古ヒンディーのブラジ・バーシャーのワークショップ(バンスコ、ブルガリア)でセッション・リーダーをつとめ、本課題で作成してきたPingalaの校訂テキストを使用しヒンディー韻律を解説した。そこでの議論によって、詩論書独特の分析方法が難解とされ敬遠される理由の一端が明らかになった。これらを分かりやすく説明したヒンディー韻律の概説書の必要性を認識し、執筆の準備をはじめた。 ヒンディー韻律の音韻リズムの論文にくわえて、関連する古ヒンディーのブラジ・バーシャー文学の詩人と作品分析の論文を執筆し、精力的に研究成果を公開した。 成果公開用のサーバーのリニューアルに時間を要し、古ヒンディーの詩文学の電子テキスト化の作業はできなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
Sukhdev Mishra著Pingalaの校訂の完成版を作る。前年度までに2写本に基づいた書き起こしは終了しているが、昨年度新たに収集した写本もくわえて校訂する。また、校訂作業では語彙(サンスクリット由来の韻律用語と古ヒンディーのブラジ・バーシャーで著された用例)の統一をはかり、語彙と韻律用語のIndexを作成する。英訳つきのヒンディー詩論書の校訂本の出版を念頭において、ヒンディー詩論書と音韻について、分かりやすい概説を英文で執筆する。 ヒンディー詩論書の形成と発展、またそこに著された韻律の概念を明らかにし、記されるべきでありながら記されてこなかったヒンディー独特のリズム単位の重要性に着目した研究発表を行う。13th International Conference on Early Modern Literatures in North India(ワルシャワ、ポーランド)での口頭発表を予定。またそこでの議論をもとに論文を執筆する。 韻律分析のために、古ヒンディーの詩文学の電子テキスト化を行い、公開専用のサーバーで公開する。
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Causes of Carryover |
古ヒンディー韻文の電子テキスト化に人件費を使用しなかったため、次年度使用額が生じたが、今年度は海外での研究発表および、校訂本の英訳の英文チェックに充当し、効率的に使用する。
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