2016 Fiscal Year Research-status Report
日本語教育の知見を生かした、看護現職者の発信技能向上支援方法の開発
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15K02671
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Research Institution | The Japanese Red Cross Kyushu International College of Nursing |
Principal Investigator |
因 京子 日本赤十字九州国際看護大学, 看護学部, 教授 (60217239)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
力武 由美 日本赤十字九州国際看護大学, 看護学部, 准教授 (70514082)
松村 瑞子 九州大学, 言語文化研究院, 教授 (80156463)
森山 ますみ 国際医療福祉大学, 成田看護学部, 准教授 (90565722)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | アカデミック・ライティング / テンプレート / スキーマ / 問題の認識 / 学習過程の想定 / メタ認知 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、現職看護師によるライティング活動の実態の調査、現職看護師および長い現職経験を持つ看護教育従事者のアカデミズム色の強い発信活動における困難の分析、起業を目指す現職看護師の発信活動における困難の観察を行った。 現職看護師のライティング活動の実態については、看護師が400名程度以上勤務する規模の病院の管理職および教育担当者に対する聞き取りを行った。その結果、認識されているニーズは、業務の一部として書く機会のある報告や記録を作成する技能の向上と、昨今その必要性が高まっている「看護研究」に関連したラィティング技能の向上とがあり、後者の指導の困難がより強く認識されているが、この種の文章の「スキーマ」および学習過程が前者とは違って「テンプレート」の提示およびその参照による効果が期待できないという認識が支援担当者にも不十分であり、このことが、修士号取得後の活動不活発にも通じている可能性が示唆された。 アカデミック・ライティングについては、論文執筆や提言を含む活動報告・研究計画の作成を「コメント」「修正案の提案」を通じて支援し問題を観察した。問題の中でも、語彙力の不足は意識されやすいが、「最終的主張への収斂を意図して情報を選び表現を調整する」という作成方針の認識の弱さは意識されにくく、「語彙力の不足」という問題として理解されがちである。修正案を示すだけでなく、アカデミズム色の強い文章のスキーマとの関連についてのメタ認知を促すことの必要性が示された。 一般的発信活動における問題も基本的には共通しており、テンプレートの利用がある程度可能な場合にもそれが難しい場合にも、課題の核心は、発信の最終目的の認識が重要であるということの理解を促すことであると考えられ、テンプレート利用を意図的に選択できるように導く支援をコースデザインに反映させることが今後の課題である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
想定とは多少実行方法が異なった点はあるが当初認識していた活動を進めることができ、新たな状況認識によって追求すべき発展的課題も明らかになったため、概ね順調に進展していると考える。 現職看護師の、学術的・実務的発信活動の実態および認識については、少なくとも大規模病院に勤務する看護師の教育や管理を担当する看護師の視点からの認識と、若手および中堅の現職者の認識を、複数の情報源から詳しい情報を得て掴むことができた。また、管理者や教育担当者がどれだけの人数・範囲を教育・支援の対象として認識しているかによってニーズの認識が異なることが明らかになり、支援提供方法についての貴重な示唆が得られた。 カリキュラム作成については、当初基本形として想定していた「10回コース」は実施できる可能性がかなり限られることが判明し、むしろ、「2コマを3回」など縮約した形で実施する内容とすべきことが判明し、この形で2015年および2016年に試験的な実施を行って、成果の観察を行った。これを契機として、具体的執筆活動について個人的支援を行う複数の機会が得られた。コースとしての授業とは支援の形式が異なるものの、支援の核となる内容が共通しており、学習者の認識およびその変容過程についてのより詳しい観察を行うことができた。ネットと電話を利用した個人支援の形式は参加を進めやすいと思われ、この形式による支援方法の開発は、併せて追求すべき目標であると考えられた。 提供する支援の内容としては、「モデル素材」による分析活動、修正活動、解説等によって導入し、自分の創作についての分析・修正を行うに至ることが望ましいことは言うまでもないが、導入を受けた段階からの移行が円滑に進まない場合もあり、こうした例の分析が次の課題として浮上した。
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Strategy for Future Research Activity |
2017年度は、機会の得られる限り、発信技能向上支援活動試行の実践および実施成果の評価を行いつつ、昨年の研究結果を公表することと、縮約型の発信技能向上支援カリキュラムおよび教材の作成、および、関連機関への提供を行いたい。 発信技能向上支援活動の試行は、昨年・一昨年に続き、小集団での授業の形式で行う予定が一件ある。個人支援についての具体的計画は未定であるが、問題点の洗い出しに資するスクリーニング方法など、個人のニーズを具体的に把握する方法を準備し、集団形式での支援試行に参加する人々に対して使用したいと考えている。 研究結果の公表については、1)昨年までに実施した聞き取り調査の結果を報告する、2)個人的支援を行った記録に基づく問題点の分析を報告する、3)集団形式の支援方法の成果と課題について報告する、以上の3つを計画している。 カリキュラム案および支援内容については、研究の最終年度であるため、モデル素材と活動方法とを教材化して冊子の形にまとめ、昨年度からの持ち越し分を含めた研究経費を用いて印刷し、関連機関や関心を持つ人々に提供したいと考えている。
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Causes of Carryover |
経費を慎重に使用していたため、未使用分が生じた。代表者と同じ大学に所属していた研究分担者1名が他大学に転出したため、打ち合わせを行うための旅費等が多く発生すると予測していたが、他の理由で出張した際の空き時間を利用して打ち合わせを行うなどの方法で、予測したほど経費を使う必要がなかったため、余剰が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
194970円の繰越金は、本年度中に作成する教材の印刷費の予定額に加えて使用する予定である。
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Research Products
(2 results)