2016 Fiscal Year Research-status Report
幕末維新期における唐通事の英語学習と西書翻訳に関する書誌学的研究
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15K02823
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Research Institution | Kyoto Notre Dame University |
Principal Investigator |
朱 鳳 京都ノートルダム女子大学, 人間文化学部, 教授 (00388068)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
塩山 正純 愛知大学, 国際コミュニケーション学部, 教授 (10329592)
奥村 佳代子 関西大学, 外国語学部, 教授 (10368194)
内田 慶市 関西大学, 外国語学部, 教授 (60115293)
千葉 謙悟 中央大学, 経済学部, 准教授 (70386564)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 唐通事 / 唐船 / 域外中国語資料 / 西書翻訳 / 漢字翻訳語 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は幕末期長崎で活躍していた唐通事の西書翻訳活動及びその翻訳方法、翻訳語を考察し、日本語に西洋概念を受け入れる際の唐通事の貢献を明らかにすることを研究目的の一つとしている。H28年度はH27年度に引き続き、次のように、唐通事の翻訳、通訳などの言語活動及びそれらの影響、意義について調査を行った。 1.何礼之の『政治略原』についての調査。本調査で、何礼之以前に翻訳された西書あるいは唐通事らの中国語教材と、『政治略原』の漢字翻訳語とを比較研究した結果、漢訳語はほとんど既存のものを継承したものであるのが明らかとなった。興味深いのは、中国語に由来する漢字語は中国語のままで使っているものが多いことである。それは、唐通事という職業に強く影響されたと思われる。彼は、漢字語に左訓をつけ、丁寧に解釈することで、中国語と日本語との隔たりをうまくカバーすることを可能にした。 何礼之が西書翻訳に使った中国語に由来する漢字語の多くは、明治以降殆ど日本語として成立しなかったが、幕末明治の西洋文化の啓蒙期において、その翻訳方法は、有効な手段の一つであったと言える。また、日本人の翻訳者と違って、和製漢語を作らず、在来の中国語の漢字語彙を利用するのも唐通事である彼の特徴と言える。 2.唐通事の通訳活動についての調査。本研究は江戸幕府の唐船漂流記録を資料に唐通事の通訳活動を研究したものである。また、域外(日本を含む外国)での中国語資料の使用についての研究も行った。 3.唐通事を含む域外で使われた中国語の現状、意義及びその日本を含む周辺諸国の言語における影響についての研究も行った。 本研究は代表者、分担者がそれぞれの視点から、唐通事の中国語、唐通事の西書翻訳について、研究発表を行った。それらの研究活動を通して、近代日本語の成立、特に日本語が西洋概念を受容した際の唐通事の貢献を見いだしたことに意義があると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画内容とやや前後しているが、おおむね計画通りに順調に進展していると考えられる。 当初の研究計画において、H28年度はアメリカで来日した宣教師と唐通事の言語交流についての記録資料(Papers of American Board of Commissioners for Foreign Missions「アメリカ海外宣教委員会文献」)等を調査する予定だったが、研究代表者がH28年度7月に本務校においてH29年度在外研究(半年)申請が許可されたことを受け、研究分担者と相談し、H28年度のアメリカでの調査を研究代表者の在外研究にあわせて、H29年度に変更したことによる。
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Strategy for Future Research Activity |
H29年度においては、唐通事の西書翻訳、特に宣教師との言語交流及びその近代日本語史への貢献について調査していく予定である。具体的な計画は次ぎの通りである。 1.H28年度に実行しなかったアメリカYale Univeristy での資料調査を行う。具体的には、来日した宣教師が残した報告書(Papers of American Board of Commissioners for foreign Missions「アメリカ海外宣教委員会文献」)、新聞雑誌への投稿文、日誌などを調査し、来日した宣教師と唐通事との言語交流の詳細を見出したい。さらに、研究代表者が在外研究の滞在先のUniversity of San Francisco、 Ricci institute での調査も加えたい。 2.宣教師ロバート・モリソンが編纂した中国語資料の唐通事への影響についての資料調査。 3.国際シンポジウムで発表する。海外調査で得た資料を代表者と分担者のチームで分析、検討した上、それぞれの視点から考察した内容をまとめ、発表する。
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Causes of Carryover |
本研究の分担者の一人がH28年度に在外研究に行くことになり、一緒に研究活動ができなかったため、一部の助成金は次年度使用額とした。また、H29年度はアメリカでの調査を行う予定で、旅費、調査費などの金額が大きくなると予想されるため、H28年度の助成金を少し残して、H29年度にまとめて使用する計画もたてていることによる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
1.アメリカの Yale University で宣教師と唐通事の言語交流についての資料を調査するための旅費と調査費。 2.アメリカのUniversity of San Francisco、Ricci Instituteで宣教師の中国での言語活動についての資料を調査するための旅費と調査費。 3.上記の調査に必要なパソコン、プリンター等の機器、事務用品、関連図書資料の購入費。
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Research Products
(8 results)