2015 Fiscal Year Research-status Report
古文書字形の機関横断的デジタルアーカイブの拡充・活用を支援する情報技術
Project/Area Number |
15K02841
|
Research Institution | J. F. Oberlin University |
Principal Investigator |
耒代 誠仁 桜美林大学, 総合科学系, 講師 (00401456)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 古文書解読支援 / 類似字形検索 / 情報検索 / パターン認識 |
Outline of Annual Research Achievements |
「字形共有のためのネットワークシステムの実現」については、2016年3月に、奈良文化財研究所・東京大学史料編纂所と共同で、字形画像をキーとしたデジタルアーカイブ検索Webサービス「MOJIZO」を公開した(http://mojizo.nabunken.go.jp)。このサービスは、研究代表者が研究・開発を進めてきたクライアント・サーバモデルに基づく古文書字形検索技術をコアエンジンとして搭載しており、多人数同時アクセスにも対応する。Webブラウザ経由で検索キーとなる字形画像を入力すると、類似した字形を含む古代木簡を「木簡字典」から検索し、結果を表示できるようになっている。現在、初版公開ということで検索速度などは慎重を期した運用となっているが、今後サービスの運用状況などを見極めながら利用しやすいシステムに改善していく予定である。 「古文書字形検索の高精度化」については、上記サービスの提供に合わせて字形情報データベースの整理・拡充を行い、これまで以上に多くの字形を高精度に検索できるように改良することができた。今後、さらに多数の字形情報に対応するとともに、検索精度の向上を図っていく。 「画像処理・ユーザインタフェース等の周辺技術の高次化」についても、上記サービスの公開に合わせて、利用者が十分な墨抽出処理を行っていない画像を検索キーとして入力した際にも対応できるように改良を行った。また、プロトタイプの段階ではあるが、利用者がスマートフォンのカメラで撮影した画像を簡単に処理して適切な検索キーを生成できるアプリの実装を行った。こちらについては近日中に公開できるようテスト等を重ねているところである。 なお、以上の成果に関する研究報告は、2015年12月の情報処理学会シンポジウムにて報告を行ったところである。また、奈良文化財研究所と共同で、以上の成果に関する特許3件の出願も行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度の研究計画目標として掲げた4項目のうち、「字形共有のためのネットワークシステムの実現」、「古文書字形検索の高精度化」、「画像処理・ユーザインタフェース等の周辺技術の高次化」については、研究実績の概要の欄で示した内容に対して十分な成果をあげることができた。特に、Webサービス「MOJIZO」の公開については、平成28年度以降に完成させる予定であったいくつかの目標を前倒しで達成することで実現しており、この点では当初の計画以上の成果をあげることができたといえる。さらに、これらの成果に関しては、奈良文化財研究所と共同で3件の特許出願も行った。 また、平成27年度の研究計画目標として掲げたもう1つの項目である「他の古文書デジタルアーカイブとの連携」については、技術面で必要となる「横断検索のための複数サーバ連携機能」の実装および「フォーマットが異なるデジタルアーカイブに対応した情報検索機能」の実装を完了した。これらは、東京大学史料編纂所の「電子くずし字字典データベース」を用いた実証実験の最中である。こちらについても、MOJIZOのような形でできるだけ早く一般公開できるよう今後の研究活動に努めていく所存である。 さらに、情報処理学会・人文科学とコンピュータシンポジウム、国立国語研究所での公開シンポジウムを通した研究報告も実施することができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
まず、プロトタイピングまで完成しているスマートフォン用アプリを広く公開できるように開発、検証、その他の活動を行っていきたいと考えている。開発、検証に必要となる一部ハードウェア、ソフトウェアについては平成28年度のできるだけ早い時期に入手し、効率的な研究の遂行に努めたい。 続いて、MOJIZOで公開しているデジタルアーカイブの範囲を拡大し、さらに多くのデジタルアーカイブとの連携を図りたい。これについては残り2年の研究機関の中でどれだけ多くの情報を公開の対象に追加できるかという挑戦になるが、「奈良文化財研究所が保有している各種情報の追加公開」、「東京大学史料編纂所が保有している電子くずし字字典データベースなどのデジタルアーカイブとの連携」を当面の目標とし、可能であれば「そのほかの機関などが保有するデジタルアーカイブへの適用対象拡大」を目指したい。 その他、平成28年度以降の研究計画目標とした各種項目に対しては予定通り活動を遂行していく予定である。
|
Causes of Carryover |
次年度使用額については、古文書字形検索のためのスマートフォンアプリ開発・公開に必要となる各種開発機材購入・調査などを予定していたものであるが、【研究実績の概要】および【現在までの進捗状況】の欄で記載したWebサービスMOJIZOの公開に向けて平成28年度以降に予定していた研究課題を一部前倒しで実施した結果、こちらの工程の一部が平成28年度以降にずれ込んだために生じた差額である。前倒し分と相殺で研究の進捗全体への影響はないと考えている。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
当初予定通り、古文書字形検索のためのスマートフォンアプリ開発・公開に必要となる各種開発機材購入・調査などに利用する。平成28年度の早期に執行し、研究全体の進捗に影響しないよう配慮する。
|