2016 Fiscal Year Research-status Report
平戸藩楽歳堂文庫をめぐる書物環境と文庫形成過程に関する基盤的研究
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15K02866
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
岩崎 義則 九州大学, 人文科学研究院, 准教授 (60294849)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 楽歳堂文庫 / 佐伯文庫 / 松浦静山 / 毛利高標 / 壱岐国続風土記 / 松浦史料博物館 / 佐伯歴史資料館 |
Outline of Annual Research Achievements |
◯平成28年度は、研究計画にもとづき、松浦史料博物館における文献調査を集中的に実施した。 主たる研究成果は、昨年度来調査を実施してきた『壱岐国続風土記』(全117冊)についての全冊調査の完了と、関連した地誌類の調査研究である。『壱岐国続風土記抄』(1冊)・『壱岐史拾遺』(全16冊)・『田舎廻』(全23冊)など、静山が作成を指示し、あるいは収集した平戸藩領の地誌類を網羅的に調査した。その一方、民俗学者・山口麻太郎氏が残した『壱岐郷土研究所日誌』(全19冊・長崎歴史文化博物館蔵)を調査して、近世期から昭和期にいたる楽歳堂文庫における地誌類の伝来状況などを解明した。中でも、松浦家が作成に大きく関与し、今は散逸している松浦本『壱岐名勝図絵』について、その青焼複製本が山口文庫中に伝来していることが確定できた。 ◯研究計画において定めた文人大名との交流と書物の集積については、『佐伯侯蔵書目録』(天明6年と寛政5年の2冊が存在)及び毛利高標の静山宛自筆書簡(松浦史料博物館蔵)をもとに、佐伯藩主毛利高標との交流実態についての研究を行った。特に、天明年間の佐伯市歴史資料館蔵「御用日記」から、高標による輸入漢籍の入手実態が復元できた点は大きな成果である。こうした研究成果は、佐伯市主催の講演会(平成29年2月19日)の場で、その一端を公にした。 ◯静山が隠居した後の蔵書目録『新増書目』については、収録したデータについて、洋書以外のデータを完成させた。http://yosi-iwa.sakura.ne.jp/programs/essay/contents/public/のデータべースへのデータアップロードを平成29年度の予算を用いて、近日中に実施したい。また、『新蔵書目』の研究として、『観惣清志』全40冊など、能楽関連の書物についての調査を実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
配偶者の治療が長引いたことから、九州域外への出張が計画実施できなかった。そのため、研究計画で予定していた静山と交流があった文人(朝川善庵・木村蒹葭堂)らの関係史料の調査収集が困難であった。また、論考を準備していた『甲冑故実』を中心とした松浦家の蔵書研究について、機関雑誌『松浦党研究』への投稿を計っていたが、書物の伝来に関係した忠孝山小童寺とその所蔵史料の調査ができず、最終的な論考が完成できなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
木村蒹葭堂及び朝川善庵ら静山と交流があった文人らの蔵書目録の調査を、大阪市立図書館と国立国会図書館について実施し、その関連する蔵書目録のデータベースを作成する。 毛利高標と静山との交流について、佐伯歴史資料館所蔵の「御用日記」の分析を、寛政年間のものについて、継続実施して、漢籍入手の実態とその全容を解明する。 その他、論文を完成するに必要な補足的な調査を、松浦史料博物館・長崎歴史文化博物館・忠孝山小童寺(兵庫県川西市)などで実施する。 平成29年度は、最終年度にあたるため、楽歳堂文庫とこれに関連した文人大名・文人らの書物データベースを完成させる。
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Causes of Carryover |
配偶者の治療が長引いたため、家族看護の必要もあり、九州外への出張計画が実施できなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
大阪市内への旅費として使用予定。
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