2015 Fiscal Year Research-status Report
元明時代の法制に関する基礎的研究-『皇明条法事類纂』の分析を中心として-
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15K02890
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
徳永 洋介 富山大学, 人文学部, 教授 (10293276)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中村 正人 金沢大学, 法学系, 教授 (60237427)
小島 浩之 東京大学, 経済学研究科(研究院), 講師 (70334224)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 律例 / 刑罰制度 / 法典編纂 / 官僚制 / 典籍 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の課題は、元代と明代の法制の連続性に着目し、この時代の一貫した特徴とも言うべき「先例中心主義」の内実を問い直すと同時に、明代後期に至り、ある意味でこうした法実務のかたちに修正を迫る「問刑条例」が登場してくる歴史的意義を明らかにすることにある。その第一年目にあたる平成29年度は、第一に、隔月単位で東京大学経済学部資料室にて『皇明条法事類纂』の会読作業を行い、明代の成化・弘治期(1465~1505)の法令や裁判例に即して明代の法実務のあり方を検証し、『元典章』などとの比較対照を通じて元制と明制の関係についてもあわせて考察した。また東京大学附属図書館収蔵本の写真版にもとづきテキストの校訂や基本語彙の収集・分類も並行して行った。とくに従来ほとんど未整備のままであった目録については、全体の三分の二にあたる第1巻から第50巻までほぼ整理作業を終えることができた。 第二に、元明時代の法制に関する主要な研究業績を整理する作業の一環として、内藤湖南『中国近世史』(岩波書店)の校注・解説を行い、内藤史学の近世中国論を分析・紹介した。本書は戦後の中国近世史の出発点となったいわば金字塔ともいうべき業績であり、その検証作業は今後の研究を深化させていくためにも欠かせない意義を有している。 第三に、平成27年11月には富山大学人文学部にて科研費メンバーはもとより、学内外の研究者の協力を得て、「分裂する中国―二つの南北朝―」と題する共同シンポジウムを開催し、後漢末から元の統一に至る政治的分裂の時代の政治と法制に焦点をあてた討論を行い、元代以降の中国との差違についてもあわせて活発に議論した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
先行研究の蓄積がきわめて少ない領域であるうえに、テキストの精確な校訂と分析作業に当初の想定以上の時間を費やしているため。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の予定どおり、『皇明条法時類纂』の精読と整理・分析を重点的に進める。研究作業の遅延は、対象となる史料の性格上、些かやむを得ないところもあるが、目録の整理・集成については、ほぼ順調に進んでいることから、今後は法律文書の構造分析や法律用語の集成作業など、これまでに得られた成果をふまえ、さらなる効率化に向けて努めたい。
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Causes of Carryover |
購入予定の図書資料が年度内に入手できなかった事情に加え、研究の進捗の遅れから、成果報告書の公表・刊行を見合わせたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
史料整理の成果としての分類目録の刊行とシンポジウム開催のため遠方からの研究者への旅費の支給を計画している。
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Research Products
(4 results)