2015 Fiscal Year Research-status Report
元代江南における財務官僚群の動向と在地農商諸勢力の伸張に関する研究
Project/Area Number |
15K02899
|
Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
矢澤 知行 愛媛大学, 教育学部, 教授 (60304664)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 元代 / 社会経済史 / 江南デルタ |
Outline of Annual Research Achievements |
元代江南における社会経済政策史の展開,財務官僚や在地農商諸勢力に関する基礎史料と先行研究の再検討を進めるとともに,国内外の多様な史資料の蒐集を行い,その整理と講読を進めた。 具体的には,『元史』食貨志,『元典章』戸部,『永楽大典』所引の元代社会経済関連史料などに記載されている既知の実証的データを再点検する作業を行ったほか,江南における税,通貨,商業,貿易,塩政,漕運,水利など社会経済史の展開を整理して年表を作成するとともに,『大元一統志』等の地理書を活用し,当時の人口動態を考慮しながら,主要都市や官署,塩場,屯田の分布などを一覧できる歴史地図を作成した。また,関連史料の蒐集・補充と整理・講読にもとりかかった。文集・碑刻・地方志などの形で伝存する墓誌銘や頌徳碑,行状などを渉猟するとともに,『元典章』の財政関連条項や黄シン『金華黄先生文集』中の社会経済政策記事などの講読を開始した。なお,蒐集した史資料は,PC 上の文献データベースEndNote に入力して分類と整理を行った。 以上の作業内容をふまえて,「元代江南デルタにおける空間単位の変化と産業動態 ~平江・嘉興・松江の人口増加を起点として~」,「元代平江城の空間構造とその変化」と題する二件の研究発表を行ったほか,「モンゴル元朝治下の江南地域社会をめぐる諸論点 -元代中後期の社会経済史を中心として-」,「元代江南デルタにおける空間単位の変化」と題する二編の研究論文を発表した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
元代江南における社会経済政策史の展開,財務官僚や在地農商諸勢力に関する基礎史料と先行研究の再検討を進めるとともに,国内外の多様な史資料の蒐集を行い,その整理と講読を進めた。これらの作業内容をふまえ,モンゴル元朝治下の江南地域社会をめぐる諸論点を整理して提示したほか(「モンゴル元朝治下の江南地域社会をめぐる諸論点 -元代中後期の社会経済史を中心として-」),平江・嘉興・松江の人口増加を手がかりにして元代江南デルタにおける空間単位の変化とその意義を考察した(「元代江南デルタにおける空間単位の変化と産業動態 ~平江・嘉興・松江の人口増加を起点として~」,「元代平江城の空間構造とその変化」,「元代江南デルタにおける空間単位の変化」)。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は,財務官僚群の動向と農商諸勢力の実態解明に向けての研究を進展させる。 まず,元代の中~後期に江南の諸行省,転運塩司,海道万戸府などにおいて財務行政に関与した財務官僚群の動向を明らかにする。すでに分析を進めている両浙地域の財務官僚50余名に加え,「元人総合DB」内の人物データ検索や諸史料の整理・講読を通じて江南地域の財務官僚を網羅的に掘り起こし(おそらく総数200~300名に及ぶ),各々の出自や異動歴,官僚としての事績といった諸項目について関連情報を逐次入力する。そして,リレーショナル・データベースとしての利点を活かし,相互の人間関係や官僚の群体としての動向などを分析する。
|
Causes of Carryover |
ほぼ計画的に使用してきたが,最終的に若干の未使用額が残ってしまった。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
今回生じた次年度使用額は少額なので,次年度の配分額と合算して,物品の購入などに使用する計画である。
|
Research Products
(4 results)