• Search Research Projects
  • Search Researchers
  • How to Use
  1. Back to project page

2016 Fiscal Year Research-status Report

西北周縁領域の歴史的展開からみた中国古代史の再構築に関する基礎的研究

Research Project

Project/Area Number 15K02911
Research InstitutionMeiji University

Principal Investigator

高村 武幸  明治大学, 文学部, 専任准教授 (90571547)

Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) 渡邉 英幸  愛知教育大学, 教育学部, 准教授 (00615502)
Project Period (FY) 2015-04-01 – 2018-03-31
Keywords中国古代 / 周縁 / 秦・漢
Outline of Annual Research Achievements

平成28(2016)年度は、前年度の実績を踏まえて、研究分担者・連携研究者・海外研究協力者らとともに甘粛省東部地域・寧夏回族自治区南部地域の戦国・秦漢時代遺跡の踏査を実施した。
甘粛東部においては、史書に「西垂」と記された礼県を訪れ、同地の遺跡並びに遺物を調査することで、周辺をいわゆる「西戎」系勢力に囲まれ、自らも「西戎」の出身とされる秦の国家形成期の状況を確認することができた。周王朝を中心的な存在とする「中原」的な視点からすれば「周縁」の一勢力に過ぎなかった秦が、周とのかかわりを利用しつつ自らを中心的存在と位置づけ、近隣の「戎狄」勢力を討伐・勢力下に置き、かつての周王朝の故地である関中盆地(陝西省)へ進出していく過程の出発点として、歴史地理学的に礼県が極めて重要な位置づけにあることが明らかとなった。
併せて、戦国秦の周縁を象徴する、戦国期の長城線を踏査した。甘粛省東部では、急峻な山地上に大規模な壁が設置されていることが確認でき、漢代における羌系ないし月氏系に連なるであろう勢力の進攻を防ごうという意図が確認できる。また、寧夏回族自治区固原の戦国秦長城をも実見し、堡塁の構造や間隔が甘粛東部のものと酷似していることを確認した。その上で、固原長城が後に関中盆地から黄河を渡河し西域へ向かうルート上にあるという点を考慮すると、固原長城は後の前漢後半期以降の敦煌・玉門関や陽関と同様の機能をも果たしていた可能性があり、周縁部とその外部とをどのように遮断もしくは接触させ、制御していくかという方法論について、戦国秦と前漢後半期のそれとを比較検討する必要性が高いことを明らかにした。
加えて、海外研究協力者の尽力により、甘粛省文物考古研究所において、上記と深く関連する極めて貴重な遺物を多数実見することができ、領域内にも存在した「異民族」を、秦・漢がどのように統治したかを考察する手がかりをえた。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

1: Research has progressed more than it was originally planned.

Reason

前年度に一年間の準備期間をおいて事前調査と協議を徹底しておいたこともあり、現地の踏査によって当初の想定を大きく上回る極めて多くの成果を得ることができた。特に、戦国秦の長城遺跡をはじめとする周縁領域の各種遺跡実見結果、また甘粛省文物考古研究所所蔵考古遺物の実験結果と、各種の文献史料・出土文字史料、さらに現地研究者の遺跡調査報告などを組み合わせることで、戦国秦の周縁地域支配の実情を相当程度明らかにできる見通しが立ったことは特筆しておきたい。里耶秦簡からみえる統一期の画一的な支配体制との差異も検討の重要な課題となろう。こうした支配とその変化によって、秦、そしてそれを受け継いだ漢という王朝が、逆にどのような影響を受けるに至ったのかについても、議論が深められると思われる。
さらに、遺跡の事前調査を徹底したことにより、遺跡の立地や遺構そのものについても各遺跡数時間ずつの踏査ながら多くの知見が得られたため、これらをまとめて公表することで、爾後同遺跡の情報を利用しようとする研究者に対しても情報提供が可能になった。
なおプラスの意味での誤算ではあるが、得られた材料が非常に豊富過ぎて、研究成果をまとめるのに相当の時間を要してしまう点が惜しまれる。すでに一部は関連する論考を公表しているが、他についてもできる限り早期に公表し、学界の批評を仰いだうえで、一般にもわかりやすく成果を伝えられるよう、研究分担者らとさらに協議していく予定である。
以上の点に鑑みて、当初予定を大きくこえる成果があったと評価できる。

Strategy for Future Research Activity

平成29(2017)年度にも内モンゴル自治区南西部・寧夏回族自治区北部の遺跡踏査を実施するため、今年度同様の成果を得られるよう、事前準備を考えており、すでに今年度下半期の10月より一部の事前調査を開始している。今年度同様、衛星写真・地図を利用し、文献史料等とも照合した事前調査により、効率よい現地踏査を実施する。
また、寧夏回族自治区固原の戦国時代における重要性が明らかになったため、来年度の踏査において再調査を実施して、未確認の城郭遺構なども含め、重要と思われる部分再確認する予定となっている。これによって、戦国秦と外部世界との門戸としての固原について検討を深めることとする。
併せて、現地博物館等への訪問によって判明した豊富な考古学的成果を生かして、前年度よりの懸案となっていた文献史料の少ない春秋期や戦国期についての検討を深められないか、研究分担者らと具体的な協議を実施していくことで、解決をはかる。

Causes of Carryover

当該使用額が発生した理由としては、第一に日本円と中国人民元の為替レートが1人民元あたり3円程度、研究計画策定時の想定レートより円高に振れ、実質的に旅費が2割程度安価になっている点があげられる。また第二に、無駄な出費を極力削減すべく、分担者と相談して経費節減に努めたことによるものである。

Expenditure Plan for Carryover Budget

当該使用額については、第一に、研究協力者謝金に充当して、得られた研究成果の整理を加速するために用いる。第二に、来年度調査において、調査遺跡を一か所増やすための原資として、旅費に充当する。第三に、近年公開された周縁領域関連資料の収集にあて、研究成果の拡充をはかる。

  • Research Products

    (3 results)

All 2017 2016

All Journal Article (2 results) (of which Peer Reviewed: 2 results,  Acknowledgement Compliant: 2 results) Presentation (1 results) (of which Invited: 1 results)

  • [Journal Article] 戦国秦の国境を越えた人びと――岳麓秦簡『為獄等状』の「邦亡」と「帰義」を中心に2017

    • Author(s)
      渡邉英幸
    • Journal Title

      高村武幸編『周縁領域からみた秦漢帝国』

      Volume: - Pages: 印刷中

    • Peer Reviewed / Acknowledgement Compliant
  • [Journal Article] 書評 鷹取祐司著「秦漢官文書の基礎的研究」2016

    • Author(s)
      高村武幸
    • Journal Title

      日本秦漢史研究

      Volume: 17 Pages: 198-209

    • Peer Reviewed / Acknowledgement Compliant
  • [Presentation] 秦統一前後の「邦」と畿内2016

    • Author(s)
      渡邉英幸
    • Organizer
      東洋史研究会
    • Place of Presentation
      京都大学
    • Year and Date
      2016-11-06
    • Invited

URL: 

Published: 2018-01-16  

Information User Guide FAQ News Terms of Use Attribution of KAKENHI

Powered by NII kakenhi