2017 Fiscal Year Research-status Report
フランス地方都市における都市化と社会政治空間―ローカルガバナンス・アプローチ
Project/Area Number |
15K02925
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
小田中 直樹 東北大学, 経済学研究科, 教授 (70233559)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 都市史 / 都市政策 / 都市問題 / フランス / 社会問題 |
Outline of Annual Research Achievements |
モンペリエ市(フランス、オクシタニ地域圏、エロー県)の北西部に位置するセヴェンヌ地区に建設された県営団地「ペルゴラ(La Pergola)」について、隣接する民営団地「プティ・バール(Le Petit Bard)」との比較を念頭に置き、1960年代に建設されてから今日に至るまでの歴史を明らかにする作業を遂行した。 作業の遂行に際しては、基本的なリサーチとして、2016年度まで主要な分析対象としてきたモンペリエ市立文書館所蔵資料にひきつづき、エロー県文書館に移管された(ペルゴラを建設および維持管理してきた)エロー県低廉住宅公社(Office Public des Habitations a Loyer Modere du Departement de l'Herault)資料を収集し、分析した。 また、資料の分析に際しては、不動産市場メカニズムの機能、住民の集団的アイデンティティの特徴と強度、そして団地の管理運営に関わるローカルなガバナンスのありかたに着目した。 具体的には、プティ・バールに比して、ペルゴラではいわゆる「都市問題」の現れ方が低かったことが知られているが、その背景には、いちはやく1990年代はじめに大規模改修工事が施されたことがある。この点を重視し、同工事が実施されるに至った意思決定プロセス、同工事の実現を可能にしたエロー県低廉住宅公社の財務状況、そして同工事の空間的な特色を明らかにすることを、主要な目的とした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
モンペリエでは、ペルゴラも含んで、市内の都市計画の計画と実施をおもに担うのは市役所であるが、同市役所の資料を所収する同市文書館は、2018年3月の時点で、依然として保管庫の閉鎖が続いている。同文書館資料保管庫の一部天井にアスベストが使用されていることが判明したためである。また再開のメドは立っていない。 一方エロー県文書館に移管されたエロー県低廉住宅公社の所蔵資料については、さいわいにも、そのほぼ全て(2箱のみプライバシーにかかわるとして閲覧が拒否された)の閲覧を認められた。そけゆえ、2017年度は、これら資料の閲覧・チェック・複写・分析をおこなった。しかしながら同資料は合計で300箱をこえる分量であり、それら全ての閲覧・チェック・複写まではおこないえたが、分析は中途でとどまった。
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Strategy for Future Research Activity |
エロー県低廉住宅公社資料のうちペルゴラにかかわるものについて、分析を終了する。その際、引き続き、不動産市場メカニズムの機能、住民の集団的アイデンティティの特徴と強度、そして団地の管理運営に関わるローカルなガバナンスのありかたに着目する。そのうえで、これらの分析から得た知見をプティ・バールに関してすでに得ている知見と比較し、不動産市場メカニズム・住民の集団的アイデンティティ・管理運営ガバナンスが都市問題のありかたをいかに規定するかを確認する。 そのうえで、プティ・バールとペルゴラを事例として、都市化と社会政治空間のあいだにおけるフィードバック・ループと、このうち都市化のメカニズムにおける人口移動と都市政策のあいだにおけるフィードバック・ループのありかたについて、そこに介入するローカルなガバナンスの性格という観点から、両者の特徴を明らかにする。
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