2015 Fiscal Year Research-status Report
両大戦間期東欧の多民族性と非領域的文化自治―バルト三国を事例として
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15K02958
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
小森 宏美 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 教授 (50353454)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中井 遼 立教大学, 法学部, 助教 (10546328)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 文化自治 / 少数民族 / 二重国籍 / バルト・ドイツ人 / エストニア / ラトヴィア |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)国内研究会および研究打合せ:研究計画に従い、先行研究のレビューならびに研究分担者および協力者間での知見の共有を行った。第1回の研究会は平成27年8月10日(於早稲田大学)に開催し、小森が、David Smith and John Hiden, Ethnic Diversity and the Nation State: National cultural autonomy revisited(2012)を中心に、先行研究のレビューを行った。そこでは、国民国家内の多数派と少数派の関係が、時代によって変化するその変化の仕方を指摘し、現在ではそれが「二重国籍」という現象になっていることを確認した。またその際、Constantin Iordachi氏の西ヨーロッパにおける「二重国籍」の容認はリベラルだが、東のそれはナショナリスティックであるという指摘に着目すべきことが共有された。第2回の研究会は、平成28年3月26日(於早稲田大学)に開催し、北海道大学文学研究科修士課程の植松正明氏に「マイノリティ問題の中のバルト・ドイツ人:1920年代前半の農地改革と文化的権利の観点から」と題する報告を行ってもらった。 上記研究会のほか、他の予算で来日した(平成28年1月)アンドレス・カセカンプ氏と打合せを行った。 (2)現地調査:平成27年度は、小森(エストニア)および中井(ラトヴィア)が各自で現地調査を行った。中井は現地でのインタビュー調査などを通じて情報を収集した。小森は主として占領博物館での資料収集から、当時の人々のアイデンティティの諸相について検討した。 (3)研究成果の公開:京都大学地域研究統合情報センターの記念ワークショップ(平成28年4月)にて、小森がラトヴィアの国籍問題を中心に研究成果を発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度は、日本においてICCEESSの国際大会が開催されたため、その際に来日した多くの関係研究者と意見交換を行うことができた。とくに、ラトヴィアのダウガウピルス大学のイレーネ・サルニエツェ氏と独立回復後のダウガウピルス市の民族的多様性・アイデンティティの複雑さについて議論を行ったことは、本研究遂行上意義が大きかった。そうした交流等から、研究の方向性を計画時点でのものからやや修正する可能性も生じたが、この点については、研究協力者・分担者との議論により、さらに検討したい。
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Strategy for Future Research Activity |
基本的には、研究計画どおりに国内研究会と現地調査を中心に進める。新たな研究等も発表されているので、それらも踏まえつつ、議論を進めたい。
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Causes of Carryover |
次年度使用額は、当初予定されていなかった、研究協力者の学振採用に伴い生じたものである(同協力者の旅費として予定していた経費が使用されなかったため)。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
少数民族の文化自治問題を、対象時期を広げて比較するために、モルドヴァ等の旧ソ連・東欧諸国での調査に使用する。
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Research Products
(3 results)