2015 Fiscal Year Research-status Report
岡山県南部地域における縄文~弥生時代の古地形復元と遺跡動態に関する考古学的研究
Project/Area Number |
15K02980
|
Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
山本 悦世 岡山大学, 学内共同利用施設等, 教授 (60174778)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山口 雄治 岡山大学, 学内共同利用施設等, 助教 (00632796)
岩崎 志保 (山下志保) 岡山大学, 学内共同利用施設等, 助教 (30239967)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 古地形復元 / 縄文海進 / ボーリングコア / 縄文時代 / 貝塚 / 岡山平野 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.古地形復元:ボーリング調査を専門業者に依頼し、岡山平野に位置する岡山大学津島キャンパス(岡山市津島中)の西端部で2箇所、約10mのボーリングコアを採取した。コアの一部試料は、専門業者に依頼して年代測定・珪藻の分析を行い、既に入手済みのボーリングコア試料の分析結果と合わせ、海水準変動を中心とした古環境変遷の仮説を立てることができた。また、岡山平野に位置する朝寝鼻貝塚や津島岡大遺跡周辺の発掘調査の考古学的あるいは自然科学的調査成果から、縄文時代の情報を分析するとともに、GISを用いた1m数値コンタ図を作成した。これらの作業を総合的にまとめ、研究対象地域全体について、縄文海進後の各時期(前期・中期・後期・晩期)の海岸線を具体的に描き出した。その成果の中には、海進ピーク時の海水準高が標高1m程度はあること、縄文中期の海退痕跡、後期の再海進などの具体的な手がかりも多く含まれており、遺跡の動態を理解する上で、既存の評価に再考を促すような重要な視点を得ることができた。 2.遺跡のデータベース化:縄文時代の遺跡を対象とした。貝塚については、必要な情報のデータベース化を完了し、中四国縄文研究会の発表要旨集に掲載した。それ以外の遺跡は、補助者を雇用して位置情報のデータ集成を終了した。 3.遺跡調査:研究対象地域の東半に位置する縄文貝塚について現地踏査を実施し、同地域の地形環境を確認した。また、旭川下流域(岡山市域)の百間川沢田遺跡、足守川下流域の矢部奥田貝塚、倉敷市域の船倉貝塚の貝種に関する調査を行い、各地域の海環境やその変化の違いを復元する手がかりを得た。 4.研究成果の発信・公開:研究成果を、研究チームが所属する岡山大学埋蔵文化財調査研究センターの展示会で発表した。パネル展示のみならずボーリングコアも展示し、研究者のほか広く一般への情報発信を積極的に行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度の研究目標は、研究対象地域の東半について、1.古地形復元と2.遺跡のデータベース化を実施することであった。 1.古地形復元:ボーリング調査、数値地図からの現地形図の作成を予定通りに完了した。ボーリング調査では、比較的良好な試料を入手することができたため、予定を前倒しして、同試料の数点について、数点の年代測定と珪藻分析を行い、古地形復元に重要なデータを得た。発掘データの分析も合わせて実施した古地形復元は、研究対象地域全体に及ぶこととなり、予定の東半分を大きく上回ることとなった。また、研究対象時期では、縄文時代を3段階程度に分けて地形復元を行う予定であったが、結果的には5段階にまで細分することが可能となった。この成果は、古地形復元にとどまらず、縄文海進後の地形変化、具体的には海岸線移動と沿岸部の遺跡(貝塚)との関係を理解する上で、重要な視点を提供することとなった。以上の点で、達成度は非常に高いといえる。ただし、対象とした時期は、当初、縄文~弥生時代であったが、本年度は縄文時代を詳細に分析したため、弥生時代は次年度におくることとなった。この点では、達成度はやや下がる。 2.遺跡のデータベース化:2年計画で縄文・弥生時代の遺跡を扱う予定であるが、本年度は縄文時代を対象とし、貝塚について完了した。それ以外については、位置情報までの終了となった。 3.情報発信ほか:次年度の実施予定であったが、中四国縄文研究会において紙上発表を行い、また、一般向けには展示会形式で情報を発信した。招待講演の機会もあり、予定以上の達成度といえよう。 その他に、遺跡の現地踏査・貝塚資料の調査なども実施しており、全体として概ね順調に進展している。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は、以下の4点を目標とする。 1.前年度に行った縄文時代における古地形の変化と遺跡動態の関連性に対する仮説を検証する。具体的には、前年度に入手したボーリングコアの科学的分析を本格的に進め、年代測定・珪藻分析・花粉分析など多角的分析を実施する。さらに、岡山平野内の他のボーリングコアの調査も加えて、試料の蓄積を図る。研究対象地域の西半(足守川下流域以西)について、縄文時代の貝塚遺跡の踏査あるいは貝種の調査を実施すると共に、発掘調査成果の分析を進める。 2.対象時期を弥生時代に移し、研究対象地域全体に対して古地形の変化を復元する。縄文時代の古地形復元からの継続的な作業であり、具体的な作業手順は前年度を踏襲する。 3.遺跡のデータベース化を進める。縄文時代を完了するとともに、対象を弥生時代の遺跡に拡大する。 4.研究成果の情報発信を進める。例えば、ボーリング調査を実施した津島岡大遺跡は、本研究チームが所属する機関が発掘調査を実施していることから、同センターの紀要に研究成果を掲載するなど、機会を捉えて積極的に取り組む。
|
Causes of Carryover |
研究補助者の雇用に際して、勤務予定時間と実績との間に多少の差額が生じたため、若干の金額が残ることとなった。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
翌年度分の請求額は110万円であり、残金1672円とあわせると、総額は1101672円となる。その内訳は、消耗品5万円、旅費20万円、補助者などの謝金15万円、分析他70万円を予定している。同期間の研究で重要となるのがボーリングコアの試料分析である。可能な限り十分な分析を行うために、前年度の残金も含めて、重点的に経費に充てる予定である。
|
Research Products
(2 results)