2019 Fiscal Year Research-status Report
古代の灯火―先史時代から近世にいたる灯明具に関する研究
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15K03001
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Research Institution | Nara National Research Institute for Cultural Properties |
Principal Investigator |
深澤 芳樹 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 都城発掘調査部, 客員研究員 (40156740)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
神野 恵 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 都城発掘調査部, 上席研究員 (60332194)
桑田 訓也 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 都城発掘調査部, 主任研究員 (50568764)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 光 / 考古資料 / 民俗資料 |
Outline of Annual Research Achievements |
人類の生活にとって、火は大いなる貢献をしてきた。物質が燃焼という化学変化で、光と熱を発する。本研究は、このうち光という側面に、文化的なスポットをあてる。本年度は、縄文時代以降近・現代まで、対象とした資料調査をおこない、愛知県から福岡県におよんだ。考古資料は、おもに土器を検討対象にした。土器は本年度も、飛鳥・奈良時代以降に典型的にみられる灯明皿の灯心の部分の煤の付着痕跡が、古墳時代以前にさかのぼってあるかを課題の一つに据えた。 また本年度は、新潟県津南町歴史民俗資料館所蔵の民具で、灯火にかかわる資料を研究する石澤貴司氏を、奈良文化財研究所に招いて、研究所所員とともに実際の奈良時代の灯火器について、その比較検討をおこなった。さらに岐阜県博物館において、文献史学を専攻する同博物館学芸員近藤大典氏、和船を調査研究する神奈川大学教授昆政明氏を同博物館に招き、古代と和船の灯りとりの実態について情報交換をおこなった。特に、船上での灯りとりは、揺れる船中で失火の危険を避け、かつ灯明を持続するための工夫がこらされた実態を検討する機会になった。 また中国考古学を専攻する中村晃子氏は、中国北京に出張し灯明の実態調査を実施した。中国国家博物館で、実物資料の検討をおこない、館員から中国の灯明に関する情報を得た。 そして韓国から石室墳を研究する金武重氏と韓国の灯火器を研究する忠南大学百済研究所助教李相日氏を、奈文研に招き、日韓双方の研究者による発表と検討の場を設けた。これは、これまでの調査研究による成果を総括する機会になった。 本年度は、調査研究に併行して、これまでの検討成果について、中国・韓国、さらには民俗学の研究者を招いて、総括をおこなった。ただしその成果は多岐におよぶので、これをまとめるには、さらに1年の延長を必要とする旨申請したところ、これが許可された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
愛知県から福岡県におよぶ地域で、考古・民俗資料を実地調査し、情報を収集した。 中国で調査を実施し、韓国と日本の考古学研究者による発表・意見交換の場をもった。このように、本研究の比較対照地域を、本年度は中国・韓国に広げた。それぞれの場で、各国の研究者と積極的な意見交換をおこなった。 また民俗資料の研究者に考古資料を閲覧してもらい、考古資料と比較対照した。その場でも、考古学研究者をともに閲覧するように心がけた。 この成果を充分にまとめるために、1年の延長を申請し、許可された。
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Strategy for Future Research Activity |
1年の延長期間は、これまで5年におよぶ調査研究の成果を不足なくまとめることに費やす。 それは、考古学から民俗学、文献史学におよぶ。考古学については、中国、韓国の成果を取りこみ、これによって日本列島での灯火の物質的な位置づけを試みる。機能面について、民俗学研究の成果を援用する。個別文化的な位置づけは、文献史学の成果を取り入れたい。このようにして、灯火に多角的な視点でせまり、文化史上に位置づける。
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Causes of Carryover |
最終年度におこなった韓国との共同研究によって、日本の灯火器は、出現期にいて朝鮮半島からの影響を大きく受けていることがわかり、中国および韓国の調査成果との精査や、確認を行う必要が生じた。そのため、次年度に成果のとりまとめと、公表に関わる経費をおくることにした。
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Research Products
(4 results)