2016 Fiscal Year Research-status Report
権威主義体制下の憲法観―中国憲法と近代立憲主義との「距離」―
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15K03105
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
石塚 迅 山梨大学, 総合研究部, 准教授 (00434233)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森元 拓 山梨大学, 総合研究部, 准教授 (50374179)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 比較憲法 / 中国憲法 / 憲法観 / 憲法教育 / 権威主義 / 立憲主義 / 東アジア |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、1.中国の憲法学者をはじめとする知識人が現行の権威主義的な憲法体制の下でどのような憲法観を構想・提示しているのか、および2.知識人の憲法観の構想・提示が中国の一般市民の憲法観の形成にどのような影響を与えているのか、を比較憲法的視点から理論的・実証的に明らかにすることを目的としている。かかる研究を通じて、中国をはじめとする東アジア諸国の憲法体制と近代立憲主義との「距離」、およびそれが縮まる可能性について考察を深めたいと考えている。 研究2年目の2016年度は、まず、6月末に香港を訪問し、公立図書館、大学図書館において資料およびデータを収集し、7月1日の香港「返還」記念日における市民デモを参与観察することを通じて、権威主義体制の中国と向かい合う、香港の立憲主義と民主主義について思考した。また、8月に、「憲政」(立憲主義)に関する中日研究者交流会に(北海道大学)、11月に、日中公法学シンポジウムに(琉球大学)それぞれ参加し、中国と日本の立憲主義の歴史と現況について、日中両国の憲法(公法)研究者たちと意見・観点を交換した。さらに、10月には、中国・蘇州大学法学院の周永坤教授を山梨大学に招聘し、「中国憲法の変遷」というタイトルで報告いただき、有益な知見を得た。 収集した資料・データ、研究交流で得られた知見をもとに、研究成果の公表に着手している。小論「憲法と主権からみた台湾・香港・マカオの社会運動」は、台湾・香港・マカオの市民的公共圏の可能性と課題について探究する。小論「逆照射、歪み、接着剤」(森元拓と共著)は、日中両国の立憲主義の受容をめぐる問題を評論する。小論「市民公開・国際シンポジウム「映画『それでもボクはやってない』海を渡る―東アジアの法教育と大学生の法意識―」を開催して」は、そのタイトルのとおり2016年1月に開催したシンポジウムの意義を紹介する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1.中国の憲法学者をはじめとする知識人の憲法観および権威主義的憲法体制に対する認識と2.彼(女)らの憲法観の一般大衆(大学生)への影響とを明らかにすることが本研究の課題である。2015年度と2016年度を文献資料の収集・解読、授業見学・観察の実施およびその結果の整理・考察の年に、2017年度を前2年間で得られた知見の総括的分析、研究成果の公表の年にそれぞれあてて、3年間で研究の完成をめざしている。 2016年度も研究はおおむね順調に進展した。まず第一に、香港を訪問したことである。人権、立憲主義、民主主義を掲げて権威主義体制の中国と対峙する香港の市民社会について、その現状と課題を認識することができた。第二に、中日研究者交流会(2016年8月)、日中公法学シンポジウム(2016年11月)において、多様な研究交流を行えたことである。前者では、20世紀初頭(戦前・戦中)の日本・中国の立憲主義(憲政)観に関する諸報告に、後者では、日本・中国の地方自治・地方行政に関する諸報告に、それぞれ触れることができた。第三に、かねてからの念願であった、中国の著名な憲法学・法理学者の周永坤教授(蘇州大学法学院)の山梨大学への招聘が実現したことである。中国憲法学者の憲法観、および実際の憲法教育について、理解を深めることができ、きわめて有意義であった。 中国の政治状況の変化で、中国大陸での授業観察がやや厳しくなっているが、その点は、海外研究協力者の協力および彼(女)らからの聞き取り、台湾・香港での授業観察の充実によって、十分に補えると考えており、特段心配はしていない。法(憲法)教育については、2016年1月に実施した市民公開・国際シンポジウム「映画『それでもボクはやってない』海を渡る―東アジアの法教育と大学生の法意識―」を1冊の図書にまとめ出版する予定であり、すでにその編集に着手している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方法については、特段の奇策があるわけではない。文献・資料・法令・裁判例の収集および解読、中国・台湾の立法・行政・司法機関の訪問調査、中国・台湾の憲法・人権法研究者や法曹関係者との研究交流等を通じて研究を地道に推進する。ただし、いくつかの工夫が必要である。 第一に、学際的・国際的なものも含めた多方面にわたる研究交流・学術対話を引き続き重視する。本研究の核心テーマである「憲法観」および「憲法教育」に関しては、歴史学、政治学、教育学による研究蓄積も少なくない。2016年度においても、研究代表者石塚と研究分担者森元は、それぞれ日中比較憲法、歴史学、政治学、教育学の学会やシンポジウムで研究討議に参加したが、今後もそうした研究交流・学術対話を維持・発展させていき、本研究の推進にあたり有益な知見を獲得したい。2017年度は、研究代表者石塚が、6月にアジア政経学会において、10月に日本公法学会において、それぞれ研究発表を行うことがすでに決まっている。 第二に、よりいっそう、現地研究者と緊密に連携する。「憲法観」についてその機微を知るには、文献研究だけでなく、現地(主として中国、台湾)に赴き、憲法・人権法研究者や法曹関係者と直接対話することが不可欠である。2017年度は、研究代表者石塚が、6月に中国・鄭州を訪れ、日中公法学シンポジウムに参加し、中国の憲法・行政法研究者と意見・情報交換を行う予定である。 中国政府の憲法・人権法研究者や弁護士、NGO団体に対する政治的圧力・干渉はいっそう深刻さを増し、こうした現況が今後の現地研究者との研究交流に何らかの暗い影を落とすことが予想される。しかしながら、こうした状況が現出することは、本研究課題を設定した時から、ある程度想定していたことであり、必要に応じて、調査・訪問先や招聘者を変更する等、臨機応変の対応を考えたい。
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Causes of Carryover |
当初2016年9月に予定していた中国・北京への訪問が、訪問先の不都合、および研究代表者石塚の体調不良のために中止せざるをえなかったのが最大の理由である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額については、文献・資料の購入、および国内外の研究出張(文献・資料収集、研究交流)に充てられる予定である。
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Research Products
(6 results)