2017 Fiscal Year Research-status Report
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15K03150
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
小畑 史子 京都大学, 人間・環境学研究科, 教授 (00262494)
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Project Period (FY) |
2015-10-21 – 2019-03-31
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Keywords | ダイバーシティ・マネジメント / 労働法 / ワーク・ライフ・バランス / 女性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、ダイバーシティ・マネジメントと労働法の関係を明らかにすることを目的としている。 2017年度は、昨年度までの研究をもとに、日本労働法学会春季大会のシンポジウムⅢ「女性活躍推進と労働法」において、第一報告「女性活躍推進法の意義」を行い、学会誌にもそれを掲載した。9月22-28日のスウェーデン出張においては、EUのダイバーシティ・マネジメントを研究しているスウェーデン経営者団体の研究者達と意見交換を行い知識を深めた。10月28日~11月4日には女性の雇用において先進的なスウェーデンの大学教授を京都大学に招き、同教授による基調講演を中心とする「女性活躍推進に関するシンポジウム」を、日本の大学教授もパネリストとして招聘して開催した。また、スウェーデンの教授とイスラム教に精通したマレーシア人の大学研究者と私の3人でパネリストを務め、「職場におけるイスラム女性のヘッドスカーフ着用に関するディスカッション」を、学生を交えて行った。 それらの研究から、ダイバーシティ・マネジメントにおける労働時間規制の問題の重要性を痛感するにいたり、それらの研究にも着手した。その成果を、最高裁判所に招かれて行った時間外労働規制に関する講演で披露し意見交換を行った。またダイバーシティ・マネジメントに関連する複数の裁判例につき、判例研究の原稿をまとめ発表した。 他方で企業の社会的責任としてのダイバーシティ・マネジメントおよびその法的規制に関して、わが国でこの四半世紀にいかなる進展が見られたかを、論文にまとめた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ダイバーシティ・マネジメント研究の柱である女性労働者の職場における活躍に関して、これまでの研究を踏まえた学会発表及び学会誌への掲載を行うことができた。 また、海外の研究者との議論等を通じて、職場に異なる信仰を持つ労働者や障がい・疾病を抱える労働者がいることに関連して発生する課題についても研究を進めることができた。 四半世紀という時間軸の中で、わが国のダイバーシティ・マネジメントと労働法がどのように進展してきたかについての論文も執筆することができた。 それらの研究の中で、ダイバーシティマネジメントに密接に関連する規制の一つが労働時間規制であることを強く認識し、労働時間の法規制に関する研究を進めなければ本研究は完結しないとの考えから、発展的な課題である、職場におけるダイバーシティ実現のための労働時間規制の研究も開始した。
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Strategy for Future Research Activity |
ダイバーシティ・マネジメントと労働法に関してまとめた研究を更に充実させると共に、ダイバーシティ・マネジメント全体にとって重要な鍵となる労働時間規制に関する研究を更に進め、長時間労働の難しい高齢労働者や障がい・疾病を抱える労働者、育児・介護に時間をとられる労働者、労働時間中に礼拝を行う宗教を信仰する労働者等が阻害されない職場や雇用社会をいかにして構築するかを検討する。 また、高齢労働者、障がい・疾病を有する労働者、外国人労働者等が阻害され、職場でハラスメントを受けることがないよう、ハラスメント及びそれによる精神疾患に関する法的な研究も行う。 これらの研究は、現在進行している働き方改革と関連するため、それに関する研究者・実務家等へのヒアリングを行い、また関連裁判例の分析も行う。
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Causes of Carryover |
2017年度に海外から更に多くの研究者を京都に招く予定であったが、国際情勢、特に東アジアの情勢が不安定であったことや、先方の事情等で実現に至らなかった。また、アンケート調査を計画していたところ、以前から関係している研究教育団体において同趣旨のアンケートが行われることとなり、支出が不要となった。 2018年度は、発展的課題も含めた、海外の研究者との意見交換や調査を行うとともに、わが国の実務家や企業、業界団体、労働組合等のヒアリングを実施し、より現実の課題解決に近接した研究をまとめたい。特に現在進行している働き方改革と関連する課題については、研究者や行政関係者、実際の企業の現場の情報を有する関係者へのヒアリングを実施し、改革の進行状況や方向性、及び現場への浸透の方策を把握・検討し、研究に反映させたい。
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Research Products
(6 results)