2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K03197
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
常岡 史子 横浜国立大学, 大学院国際社会科学研究院, 教授 (50299145)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 夫婦財産制 / 財産分与 / 相続法改正 / 居住用不動産 / 配偶者相続権 / ドイツ法 / アメリカ法 / ヨーロッパ家族法 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.わが国における婚姻住居をめぐる裁判例の調査と分析 わが国の近時の離婚における裁判例を見ると、財産分与をなすことが困難と考えられる事案が特に婚姻住居の処理に関して増えている。その理由として、財産分与の内容が当事者間で必ずしも明確でない事案や、財産分与の取決めをしないまま、あるいは一部の取決めのみをして、離婚が成立し、その後の夫婦の財産関係の処理が建物明渡請求や賃料相当損害金の請求等という形で争われる事案の増加が上げられる。そこで、平成28年度は居住用不動産を中心とする婚姻財産の清算に焦点をあて、わが国の近時の裁判例の動向を検証した。 2.アメリカを中心とした夫婦財産関係法の調査研究 アメリカでは別産制州においても、婚姻解消時の配偶者の経済的保護を目的として、離婚時の生活保障、死亡解消時の被相続人の遺産に対する選択的相続分や家産手当・家族手当等を法律によって保障する。これらの諸制度の背景には、婚姻を経済的なパートナーシップ関係と見るか扶養関係と見るかという理念の対立があり、いずれにウエイトを置くかでその規律内容が異なってくる。これが顕著に表れるのが選択的相続分である。これは、生存配偶者が被相続人の遺言に従って遺産を取得するか又は当該遺言を放棄し被相続人の遺産の一定持分を取得するかの選択権を与えられることに由来するもので、婚姻財産に対する所有者たる被相続人の私的自治・処分の自由と生存配偶者の権利の衝突を示すものとなっている。婚姻財産という観点からは、統一婚姻財産法典等にみられる離婚時の夫婦の財産概念も影響を与えている。 そこで平成28年度は、前年度からのドイツ法に関する調査と並行して、アメリカにおける別産制州の婚姻解消時の婚姻財産の処理に関する研究を行った。そこでは、文献資料に基づく考察とともに、大学休業期間を利用してドイツとアメリカでの資料調査・収集も実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1.平成29年2月21日から25日までドイツのマックス・プランク・ヨーロッパ法史研究所において前年度の調査の補完を行った。また、アメリカ法についても平成29年3月19日から23日までアメリカ・ワシントン州のワシントン大学において婚姻財産に関する資料を調査・収集した。これにより次年度における本研究遂行のための基礎的資料を整えることができた。 2.平成28年3月26日に民法学研究会(於:同志社大学)において、わが国の裁判例の分析をもとに「近時の財産分与事情」に関する報告を行い、その成果を「財産分与をめぐる近時の課題」として『大改正時代における民法学の課題と展望 』(平成29年9月発刊予定)に公表する予定である。 3.婚姻におけるパートナーシップ理論について、アメリカ法2015-2号(平成28年4月)に紹介(「婚姻の買取り」)を公表した。 4.アメリカにおける相続・遺言制度と検認裁判所の発展に関する考察をもとに、配偶者の権利についてわが国の相続法改正の動向も踏まえながら検討し、その成果を「配偶者相続権と法の役割-アメリカにおける検認裁判所の発展と配偶者の権利-」ケース研究328号(平成29年2月)として公表した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度及び平成28年度において実施した研究の成果を分析し、婚姻の財産的効果の体系的な枠組みの析出を行う。ドイツ、アメリカにおける法状況を検証しつつ、わが国における相続法改正の動向を踏まえながら、婚姻財産概念の定立を図る。 さらに、必要に応じてドイツ、アメリカにおいて再調査を実施し、分析の正確性を確保する。特に、手続法の観点から、ドイツの家庭裁判所(Familiengericht)・遺産裁判所(Nachlassgericht)、アメリカの家庭裁判所(Family Court)・検認裁判所(Probate Court)とわが国の家庭裁判所との比較考察を行うことに重点を置く。
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Research Products
(3 results)
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[Presentation] 婚姻の効力2016
Author(s)
常岡史子
Organizer
日本家族<社会と法>学会
Place of Presentation
上智大学
Year and Date
2016-11-06 – 2016-11-06