2015 Fiscal Year Research-status Report
裁判外ワークアウトの活用による事業再生の迅速化のための比較法的研究
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15K03224
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
山本 研 早稲田大学, 法学学術院, 教授 (90289661)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 倒産法 / 事業再生 / 事業再生ADR / 倒産ADR / 早期事業再生 / 裁判外ワークアウト / 連邦倒産法 |
Outline of Annual Research Achievements |
1 研究目的 本研究においては、裁判外ワークアウト(債務整理に関する事前調整)の活用による、事業再生の迅速化・効率化という観点から、アメリカにおける事前調整型の事業再建の手法につき、アメリカを拠点として調査・分析を進め、最新の議論状況・実務における運用状況を踏まえて総合的に検討することを通じて、わが国における立法論、さらには、事業再生の促進に向けた解釈論・運用論という側面において寄与することを目的としている。 2 本研究の実施状況 (1)事前調査・準備期間(平成27年4月~8月) アメリカにおける事前調整型の事業再建の手法のアウトラインについて概括的な分析を試み、アメリカにおける調査研究の実施にあたり重点的に検討すべき点として、①プレ・パッケージ型手続の運用状況、②連邦倒産法363条セールによる事業譲渡、③手続開始前のスポンサー選定の手法、④法的手続の潜脱をめぐる問題、⑤商取引債権の処遇、以上の5点を抽出した。あわせて、わが国における将来的な制度構想についても、「事業再生に関する紛争解決手続のさらなる円滑化に関する検討会」の委員として検討を進め、その検討結果の一部について、平成27年7月22日に開催された「多数決による事業再生ADR」(事業再生実務家協会主催)においてパネリストとして参加し、報告をした。 (2)アメリカにおける調査研究(平成27年9月~平成28年3月) University of Wisconsin Law Schoolを研究拠点として、文献調査を進めるとともに、同ロースクールのMegan McDermott教授など倒産実務に詳しい実務家出身の研究者、および、連邦破産裁判所判事(HON. ROBERT D. MARTIN)、連邦管財官(Mary R. Jensen)にインタビューを行い、主にアメリカにおける倒産実務の運用状況についての聞き取り調査を実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成27年度前半(4月~8月)の日本における事前調査・準備については、概ね順調に進行していたが、7月に本研究テーマに関するシンポジウム(「多数決による事業再生ADR」)にパネリストとして参加することとなり、その準備のため、アメリカ法についての事前分析に関して若干の遅れが生じ、各検討項目の具体的内容についての予備的検討までは進めることができず、検討すべき項目を概括的に抽出するにとどまった。 平成27年度後半(9月~3月)のアメリカにおける調査研究についても、当初の計画に比べると「やや遅れている」状況にある。その理由としては、上述した事前分析の遅れとともに、各個別項目について分析するにあたっては、その前提として、1978年の立法以降、数次にわたる改正を経てきた連邦倒産法の現状(とりわけ、2007年の経済不況後の運用状況)について正しく把握することが必要であると考えるに至り、UW Law Schoolにおける倒産法の授業に参加するとともに、McDermott教授との意見交換、倒産実務家からの聞き取り調査などを通じて、連邦倒産法全体についての現状把握に取り組んだため、個別項目の検討については、若干の遅れが生ずることとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
【現在までの進捗状況】において述べたとおり、アメリカを拠点とした研究調査について、当初の計画に比して若干の遅れが生じているため、平成28年8月末までを予定していた滞在期間を半年延長し(特別研究期間の延長/本務校における承認済み)、平成29年2月末までアメリカを拠点として、調査研究を継続する。また、この間、文献調査を引きつづき実施するとともに、研究拠点(ウィスコンシン)に近接したシカゴの法律事務所にビジティング・リサーチャーとして滞在し、アメリカにおける倒産処理の実務に触れる機会を設けてもらう方向で調整を進めている。 平成29年3月の帰国以降は、アメリカにおける調査結果を踏まえ、まずは日本において必ずしも十分な紹介がされていない個別項目を中心に、調査・分析結果を論文等にまとめる作業を進めることを予定している。
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Causes of Carryover |
アメリカを拠点とした研究調査について若干の遅れが生じたことに伴い、個別の検討項目に関する文献資料の購入数が予定していたよりも少なくなったことによる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
アメリカにおける滞在調査期間を6ヶ月延長することに伴い、文献資料の購入額、および米国内における旅費が当初の予定額を上回ることが想定されるため、次年度使用額をこれに充当することを予定している。
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