2017 Fiscal Year Research-status Report
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15K03307
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Research Institution | Institute of Developing Economies, Japan External Trade Organization |
Principal Investigator |
川中 豪 独立行政法人日本貿易振興機構アジア経済研究所, 地域研究センター, 研究センター長 (40466066)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 政治体制 / 民主主義 / 権威主義 / 所得格差 / 東南アジア |
Outline of Annual Research Achievements |
研究対象としている東南アジア5カ国のうち、シンガポール、マレーシア、フィリピンにおいて現地調査を実施した。 シンガポールでは、シンガポール国立大学をはじめいくつかの研究機関に所属する有識者に聞き取りをするとともに、シンガポール国立大学政策研究所の実施した選挙直後の世論調査の個票データを入手することができた。 マレーシアにおいては、所得格差とエスニシティの亀裂について、関連資料、データを収集するとともに、現地の著名な研究者であるシャムスール教授に、マレーシア政治社会にとって所得格差がどのような意味を持ってきたかについて、歴史的、さらにはフィールドワークに基づいた有意義な示唆を得ることができた。 フィリピンでは、これまでの研究で打ち立てた仮説と実証について研究報告を二つの大学(デラサール大学、フィリピン大学)において実施し、フィリピンの文脈から見た本研究課題についてのコメントを得ることができた。 こうした現地調査とともに、年度後半は主にシンガポールで入手したデータを用い、計量的な分析を進める作業を行った。シンガポールにおいて現政治体制の将来的な継続に対する肯定的、否定的な態度は、世代間格差、所得格差、教育格差によって影響を受けている、という仮説を立て、検証した結果、現在のところ仮説を支持する結果が得られている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現地調査を3カ国で実施したことで、必要な情報がかなり収集できたのと、理論についての修正の方向性が見えるようになった。また、シンガポールで取得した個票データは、個票を収集したシンガポール国立大学政策研究所の記述統計の整理以外で本格的に分析に使用されたことがなく、本データおよび類似のデータも入手が容易ではないことから、かなり新しい実証的な検証が提示できる見込みが立った。今年度行った計量分析においては、所得格差が引き起こす政治的安定についての効果がある程度認められたとともに、政治的社会化を反映した世代間格差が認められたことで、新たな論点を発見することにもなった。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度収集したデータを基に論文の執筆を進め、学会等での報告を行うことで、さらに必要な理論の修正、追加で収集すべきデータを明らかにし、その上で、現地調査を再度実施する予定である。
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Causes of Carryover |
次年度においても研究対象となる東南アジア諸国に現地調査を実施する予定がある。また、論文の執筆状況の進展を見ながらではあるものの、研究発表のための出張を実施する予定である。
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