2015 Fiscal Year Research-status Report
冷戦期日本の国連外交における西側とアジア・アフリカ-調整と対立の過程に関する研究
Project/Area Number |
15K03309
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
潘 亮 筑波大学, 人文社会系, 教授 (80400612)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 国連 / 日本 / 冷戦 / アジア / アフリカ / 専門機関 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は本プロジェクトの初年度に当たり、主に①冷戦期国連外交と対アジア・アフリカ政策に関する日本側の一次資料の調査・収集及び解読の作業、②政治安全保障面以外の分野において国連をめぐる日本とアジア諸国(特に中国)との関係に関する研究成果のまとめと公表に専念してきた。 ①の資料調査及び解読について、2015年4月以降、凡そ10カ月をかけて外務省外交史料館にて公開されている外交文書のなかから、関係文書約110冊を抽出し、重点的に調査を実施した。その結果、うちの89冊のファイルに更に焦点を絞り、計4000頁余りの文書を複写・撮影してきた。他方、まだ秘密解除されていなかった文書については当方から改めて情報開示の手続を取っておいた。その上、単に情報を収集するだけでなく、解読の作業も急いできた。その際、日本でかき集めた資料のみならず、欧米の文書館からこれまで収集してきたものも洗い直しつつ、日本語及び英文のソースブックにまとめる作業を行ってきた。 ①の作業と並行する形で、本年度当初より、②の研究成果のまとめ作業にも力を入れてきた。本プロジェクトは国連機関における日本とアジア・アフリカ諸国との関係に焦点を当てているが、その一環として手元にある冷戦初期のユネスコにおける日中関係に関する資料を吟味し、そこから得た初歩的な研究成果を2本の論文にまとめた。一本目は日本国際政治学会研究大会で報告したところ、頗る好評を得た。二本目の論文は中国側の視点に立って戦後初期のユネスコにおける日中両国の活躍を比較しながら議論を進めるもので、学会誌『国際政治』の特集号に投稿し、採用された。現在、刊行に向けて最終調整に入っているところである。 平成27年度中は長期的に本プロジェクトの総仕上げになる単著の出版に関する企画も進めており、既に出版社の編集者との間で協議が行なわれている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
一年間の作業を通して、本プロジェクトに関係する重要な一次資料を入手することができ、今後の研究遂行と論文執筆作業の道筋はだいぶはっきりと見えてきた。特に、資料調査を経て政策的に最も注目すべき領域が確認できただけでなく、資料事情によって執筆可能な課題とそうでないものの区分けもできるようになり、今後、研究成果をまとめる段階でトピックの選定をめぐり、的確な判断が下せるようになったといえよう。 今年度の研究で当初、海外における資料調査も並行して実施する予定であったが、4月から6月の間、外交史料館で作業を行ってみたところ、日本側の資料は思ったより豊富であり、その分、より時間をかけて調査する必要があることに気づいた。そのため、海外調査を次年度以降に回し、日本における調査を優先させることにした。海外の資料は量的に日本に比べ少なく、今までの経験で、短期間で集中的に調査することができるので、その多少の遅延は計画全体を進行させる上、大きな支障をきたす可能性は低い。 ユネスコにおける日中関係についての研究や論文執筆を通じて、国連における日本とアジア・アフリカの関係をめぐる新たな問題意識も芽生えているが、もともと本プロジェクトの方向性と一致するものであり、今後の研究にとって生かせるところが多い。 総じていえば、一年間の作業を経て、本プロジェクトは資料面と研究面の両方においておおむね順調に進んでいるといえよう。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究成果に踏まえ、次年度以降、三つの側面から本プロジェクトの深化を目指したい。 まず、資料面において解読作業を進めると同時に、ソースブックを整理し、データが比較的に豊富な課題と更に補充が必要な課題を析出し、後者については海外における調査・収集を通じて補う。 資料の充実を図りつつ、論文に適する分野については積極的に執筆計画を立て、速やかに作業に入るよう心がけていく。また、昨年度、学会発表などを経てある程度進展のあった研究成果について、ジャーナル論文などにまとめ上げる作業を並行して行なう。 単著執筆の準備を出版社との協議の状況に踏まえ、更に進めていく。可能ならば、一部執筆作業を開始することも考えている。 ユネスコをはじめ、国連専門機関における日本の行動に関する問題意識を一層深めつつ、それに関する論文執筆の準備も始めたい。
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Causes of Carryover |
本年度は当初、海外における資料調査を実施する予定であったが、4月以降、外務省外交史料館において本研究に関係する一次資料が大量に公開されたため、それらに関する調査及び開示請求を優先させることにした。その結果、日本国内における資料調査が予定より時間がかかってしまい、海外における調査は次年度以降実施することになった次第である。(ただ、海外における資料の所在と分量については今年度中の予備調査を通じて既に確実な情報を把握しており、その実施は比較的に効率的に行えると予想している。)
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度において、まず、日本国内にある資料について、本年度に開示請求し、まだ結果を待っている資料に関する調査と収集の作業は引続き行なう予定である。海外にある資料については優先順位をつけて、順次、現地調査を実施する考えである。(なお、実施に当って所蔵資料の内容に鑑み、米国や豪州の公文書館を優先させる。) 更に、本年度から収集してきた資料のデータの解読は既に一段落がついたものの、それらを整理する作業はなるべく早く完了したい。その際、アシスタントの短期雇用などを含め、効率を上げる所存である。なお、近年、本プロジェクトに関連する日本国内外の新しい研究成果が複数公表されているが、それらを早急に購入し、本研究の深化に活用したい。最後に、資料収集に当って、現在使用しているカメラは既に10000枚以上の資料を撮影し、頻繁に故障するようになっている。予算状況に鑑みながらカメラの新調も計画している。
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