2016 Fiscal Year Research-status Report
冷戦期日本の国連外交における西側とアジア・アフリカ-調整と対立の過程に関する研究
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15K03309
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
潘 亮 筑波大学, 人文社会系, 教授 (80400612)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 国連・専門機関 / 日本 / 冷戦 / アジア・アフリカ |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度においては主に三つの方面で同時進行的にプロジェクト関連の研究を進めてきた。 (1)冷戦期国連外交に関する史料の発掘と解読作業を急ぎ、それに基づいて単著の構想を精緻化すること。前年度に続き、本年度も一年間を通して外務省外交史料館における史料調査を行い、冷戦期国連外交に関する貴重な未公開史料を多数入手できた。更に、2016年夏以降、国立国会図書館憲政資料室における調査も始め、国連外交に関与した個人の文書や戦前の国際組織関係の資料を大量に収集した。こうした国内の史料を入念に解読し、そこから見出した問題点を手掛りにして2017年3月に、米国第二国立公文書館(National Archives II)における海外史料調査も実施した。現地に滞在する一週間のうち、計2000頁以上の文書を調べ、延べ400頁以上を撮影・複写した。これらの史料と日本国内の史料と突き合わせながら、単著執筆用のデータの整理にも取り掛かり、現時点でおよそ200頁のソースブックを作成した。また、史料の調査と解読につれ、単著の輪郭も次第に明確になりつつあった。 (2)冷戦期国連外交に関する単著執筆を開始すること。2016年秋より、資料調査とともに、単著の執筆も部分的に開始した。現時点で既に2章まで進んでいる。更に、今後の執筆計画について出版社との間で打ち合わせを行い、仕上がりまでのロードマップもできている。 (3)現時点での研究成果の公表。前年度に続き、本年度中も研究成果の公表を積極的に行っている。その結果、2016年12月に、二十世紀の多国間組織における日本の活躍と中国のそれとの比較研究を英語共著の一部としてケンブリッジ大学出版会より刊行された。2017年3月に、冷戦初期のユネスコにおける日中関係に関するジャーナル論文も公表された。また、国連外交と日本の国内政治に関する研究発表を世界政治研究会において行なった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の作業の進展により、資料面と執筆面の両方において、より明確なビジョンを得ることができた。 前者の場合、昨年度から取り掛かってきた日本側の史料群への調査は今年度の作業の結果、かなりの程度まで実施することができ、今後、よりピンポイント的に補充調査を行えば、資料面でのニーズは十分満たされると思われる。また、昨年度、課題となった海外での調査も始まっており、一定の成果を得ている。 後者については、本年度は従来から計画していた単著、共著、並びにジャーナル論文の執筆作業は順調に進んでおり、一部成果の刊行まで漕ぎつけることができた。単著の執筆については、もともと構想のスケールが大きかったため、構想の微修正と原稿執筆を行き来することも時折あるが、それは長期的にみれば後での大きい修正を回避するに必要なプロセスであり、計画自体を大幅に遅らせることはないように思える。 かくして、全体的に本年度の研究作業は計画通り、順調に進んでいるとみて妥当であろう。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の成果を生かしながら、次年度中、引き続き、史料調査に力を入れ、良質なデータに基づく高質な研究成果を目ざして行きたい。そのためにはまず、日本国内における史料調査と史料開示請求の効率を上げるよう、なるべく早い段階から史料調査の計画を立てたい。さらに、データの整理は大変時間のかかる作業であるが、その効率化を図るため、収集・整理・執筆の三段階を効率よく連関させる形で研究活動を行なうよう心がけたい。 執筆作業にあたって、既に単著の執筆が始まっている以上、次年度より、そちらを優先させる形で作業計画を立てる。単著執筆の段階で新たな問題意識が生れることがしばしばあるため、それらの問題意識を単著に反映させるか、または別個の研究として生かしていくかについて慎重に判断していきたい。
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Causes of Carryover |
本年度は海外(2回)と国内における史料調査を並行して行う計画であったが、研究成果の刊行のための執筆作業に専念するため、夏休みに予定されていた米国における史料調査は年度末の3月中旬に変更し、その結果、2回予定されていた海外調査は1回になった。それと関連して、海外での調査に合せて検討していたカメラなど機材の新調を本年度中に実行しておらず、データ処理のアシスタントの短期雇用も部分的にしか実行できなかったのである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は残っている海外史料調査並びに日本国内の史料収集のため、機材の更新とアシスタントの雇用を実行する予定である。その上、それまでの調査は一次史料の発掘を優先してきたが、次年度以降、英語、日本語、並びに中国語の二次文献の収集と調査に一層力を入れる考えであり、そのための費用と経費も必要となっている。
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