2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K03355
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
今井 亮一 九州大学, 学内共同利用施設等, 准教授 (10298507)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
工藤 教孝 名古屋大学, 経済学研究科(研究院), 教授 (80334598)
宮本 弘暁 東京大学, その他の研究科, 准教授 (10348831)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | サーチ理論 / 労働市場 / 貨幣理論 / 住宅市場モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
当研究費の支出目的は研究会の実施および同一テーマにおける研究代表者の個人研究の推進である。それぞれについで平成27年度における成果を紹介する。 平成27年度の研究会は、(1)Summer Workshop for Economic Theoryにおけるサーチ理論部会、および(2)STW冬の会として開催した。それぞれ4~5人の国内外で活躍するサーチ理論研究者が報告をした。前者については会の運営に必要な経費を研究分担者である工藤氏(当時北海道大学)に分配した。詳細はSTWホームページに紹介されている。http://japanese-economy.la.coocan.jp/STW.htm 研究代表者(今井亮一)による個人的サーチ理論研究は、平成27年度については「住宅市場のサーチモデル」となった。サーチ理論による住宅市場のモデル化は古くはWheaton(Journal of Political Ecnomy, 1990)によって行われたが、当時はあまり注目されず、その後、サーチ理論研究がノーベル賞を受賞するに伴い再び注目されるようになった。今井の研究は、取引仲介者(不動産屋)を導入することによって、次のような市場の非効率を明らかにした。(1)取引仲介者は個別の質的ショック(idyiosyncratic shock)の影響を受けないし、家計より優れた探索技術を持つから、家計が直接他の家計に売るより、不動産屋に買い取ってもらった方が社会的に効率的であるはず。(2)しかるに、実際の市場取引を見ると家計と家計の直接取引が、不動産屋と家計の間接取引より圧倒的に多い。(3)取引仲介者利用の個人的便益は、社会的便益より小さいことが計算で示される。(4)家計が間接取引より直接取引を望むのはその方が高く売れるからだが、それはゼロサムゲームに過ぎず社会的便益ではない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では、2年目に国際コンファレンスを実施することになっており、1年目はその準備期間にあたるので、平成27年度に2回の研究会を実施できたことは、順調な進捗状況である。 研究代表者の研究テーマについても、一つのテーマについて論文をほぼ書き終え、今は公刊準備中なので順調と言えると思う。当該分野の研究展望論文を一篇、日本語専門誌に寄稿した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は、研究分担者及び国内外のサーチ理論の研究者と連絡を重ね、国際コンファレンスの実施準備を行いたい。 研究代表者の個人研究は、引き続き住宅市場のサーチモデル化を軸に展開される予定である。具体的には、不動産利用の形式として保有以外に賃貸も可能とすることによって発生するパターンの違いの究明である。通例、住宅市場は売買(保有)のみだから価格が高騰すると言われる。賃貸が可能であれば、買わずに賃貸で済ませることができ、コストも安いと言われる。さらに本当に高級住宅地では賃貸は少なくほぼすべて売買と言われる。これらの特徴は競争市場モデルでは出て来ない。何らかの取引摩擦を前提とする市場を検討する必要があると考えられる。
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Causes of Carryover |
当初より、当プロジェクトでは2年目に国際コンファレンスを実施することを予定しており、1年目に特に追加的に国内研究会を実施する必要がない場合は残金を次年度に回すことを予定していた。周知のとおり、国際コンファレンスはコストが大きく、コストを増加させる不確実性も大きい。したがって、次年度使用額が発生するのは合理的である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額は全額、国内コンファレンス及び国際コンファレンスの実施費用の一部に充当する予定である。
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Research Products
(3 results)