2017 Fiscal Year Research-status Report
戦前の社会主義思想と検閲―テキストの生成・流通と検閲に関する基礎的研究―
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15K03377
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| Research Institution | Tohoku University |
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Principal Investigator |
久保 誠二郎 東北大学, 経済学研究科, 博士研究員 (80400216)
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| Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉川 圭太 神戸大学, 人文学研究科, 特命講師 (80645408)
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| Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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| Keywords | マルクス主義の普及史/受容史 / 社会主義思想 / 検閲 / 発禁 / 戦前期日本 |
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| Outline of Annual Research Achievements |
科研費研究課題の対象として植民地でのマルクス主義文献の流通を組み込むことがふさわしいと判断し、本年度から台湾を選定した。事前の調査から、台湾にも戦前に刊行された日本語のマルクス主義文献が所蔵されていることが判明しており、次の図書館を訪問して実見を行なった。国立台湾大学社会科学院辜振甫先生紀念図書館、同大学図書館（総合）、国立台湾図書館。
これらで蔵書印などの痕跡を調査した。旧台北帝国大学図書館、旧台北高等商業学校などの蔵書印を確認でき、戦前の植民地において諸種の日本語マルクス主義文献が所蔵されていたことを確認できた。また、この調査では興味深い資料を見出した。『国家と革命』（レーニン、司法省刑事局訳）である。マル秘の印、「取扱注意No.33」と押印され、台北帝大図書館の蔵書印がある。少なくとも33部は印刷されたのであろうが、この書物は現在国内では３つの図書館にしか所蔵されていないようである。『国家と革命』はおよそ発禁本であり、取り締まり用に配布されたのかもしれないが詳細不明である。この経緯は今後調べてみたい。
他方では、内務省部内資料『出版警察報』に記載のある「差し押さえ成績表」（検閲によって処分された出版物のタイトル、発行年月、処分年月、発行部数、差押え部数）のリスト化（データベース化）の課題は、昨年度でいったん完成に近い状態まで仕上げたものの、追加すべき情報（タイトルの出版社名―これは『出版警察報』に記載がなくこちらで調べるしかない）があることが判明し、さらに手間取ることになってしまった。現在では不明というべき出版社も多くある。一通りの出版社名を追加し、このリストはいったんこれで完成とすることにした。
また、米国議会図書館所蔵の「検閲正本」について画像を収集し、整理を進めた。
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| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
遅れている理由は、これまでと同様であるが、『出版警察報』「差し押さえ成績表」のリスト化（データベース化）に予想以上に手間取ったからである。これは昨年度も報告した。昨年度で一定の完成を見たのだが、その後、資料としての利用を考えた際には出版社がリストに含まれるとよいと考えた。これは『出版警察報』に記載がなく、こちらで調べて入力する必要が生じた。不十分さはあるが（現在では出版社名がわからない等）、入力を終えて、これでいったん完成とすることにした。このリスト作成に大きく手間取ったことが他の課題に後れを生じさせた原因である。
上記の理由から、初版と改定版とのテキスト比較の課題への取り組みは遅れている。
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| Strategy for Future Research Activity |
H30年度は、当初の研究計画に記した計画の遅延の際の対応に準じて取り組む。「検閲正本」の痕跡を記録する課題は、対象となる出版物を重要なものに絞り込む。それに応じて、『出版警察報』「禁止要項」欄も対象を限定して取り組む。初版（発禁）と改訂版とのテキスト比較についても対象とする文献を限定する。もちろん、限定する際の選択は慎重にしたい。
これらの対策によって研究目的の達成と研究計画の遂行が可能であると考える。
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| Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた主な理由は、平成29年度末を念頭に東京出張による調査（主に国立国会図書館）を集中的に行う予定であったが、仕事が多忙を極め、それを実行することができなかった。これは平成30年度5月以降、順次、実施していく予定である。
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Research Products
(2 results)
