2018 Fiscal Year Research-status Report
戦前の社会主義思想と検閲―テキストの生成・流通と検閲に関する基礎的研究―
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15K03377
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| Research Institution | Tohoku University |
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Principal Investigator |
久保 誠二郎 東北大学, 経済学研究科, 博士研究員 (80400216)
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| Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉川 圭太 神戸大学, 人文学研究科, 特命講師 (80645408)
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| Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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| Keywords | マルクス主義の普及史/受容史 / 社会主義思想 / 検閲 / 発禁 / 戦前期日本 |
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| Outline of Annual Research Achievements |
当該年度は、国立国会図書館でデジタル資料として公開された「内務省検閲発禁図書」の調査を主におこなった。これらの資料は現在は米国議会図書館に所蔵される旧内務省資料であり、検閲を受けて処分された出版物の現物である。これらには、検閲官が実際に読み、検閲基準に抵触する箇所にチェックを入れた「検閲正本」と呼ばれる現物が多数存在する。それらには「風俗」の基準に抵触したものもあれば、「安寧」の基準に抵触したものの両方が含まれている。本研究課題の調査対象は主にマルクス主義に関する出版物であるから、「安寧」に関わる出版物となる。
当該年度では1920年代を中心に約100点ほどの主にマルクス主義に関する出版物を調査し、必要な複写をおこなった。いまだ一部の資料の調査にとどまるが、検閲官による本文中へのチェック箇所、検閲官の処分意見、検閲官や内務省警保局印や分類の印等の検閲の痕跡を収集することができた。また、「内務省検閲発禁図書」に含まれるものは「検閲正本」だけでなく、「副本」も多数あることが分かった。（「副本」には検閲の痕跡があまり残されていない。）興味深いものとしては、「安寧不問」（発売してよい）とされたものが「禁止」と変化した痕跡、また検閲官の本文へのチェック箇所の妥当性がよくわからないものが見出され、検閲の実態を把握するうえで重要な資料であることが改めてわかった。
次年度もこの調査を継続する予定である。
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| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究課題の基礎資料となるもののひとつは旧内務省が保管した「検閲正本」である。これらの資料は戦後に米国に接収され、現在は米国議会図書館と国立国会図書館の双方に分かれて資料が所蔵されている。本研究課題が当初計画していたのは、資料活用の利便性から国立国会図書館に所蔵される「検閲正本」であった。
しかし、米国議会図書館に所蔵される旧内務省検閲資料が「内務省検閲発禁図書」として2017年に国立国会図書館から鮮明なカラーでのデジタル画像で公開された。本研究申請時には知りえない事情であり、申請時の計画では国会図書館での白黒のマイクロでの閲覧をもとに、米国議会図書館で数十から100点の程度の「予備的」調査を行う予定であった。予備的というのは、この結果を受けて別途の研究計画をもって本格的に調査を行うことを想定していたからである。しかし、これらの資料が国内でほぼ十分な利用が可能になったことを受け、また本研究課題における基礎資料であることから、これらの資料を調査対象にきちんと組み入れる必要があると認識するに至った。つまり公開された「内務省検閲発禁図書」約1300点を新たに調査対象とすることにした。そのため、研究の進行に遅れが生じている。
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| Strategy for Future Research Activity |
調査対象となる資料（旧内務省検閲関連資料、すなわち「検閲正本」）が大幅に増加したが、昨年度の「実施状況報告書」および今回の「研究実績の概要」記載のとおり、資料全体に目を配りながらも、より精密な調査研究については対象資料を絞り込むことで本研究課題を遂行させたい。また、これら「検閲正本」の研究は本研究課題の中心のひとつであることから、他の課題よりも優先させて取り組んでいくことにする。
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| Causes of Carryover |
当初計画で予定していた米国議会図書館での資料調査は、国立国会図書館で当該資料がデジタル画像で公開されたことを受けて必要性が減じたため取りやめることとした。この調査旅費が浮いたことが次年度使用額が生じた主な理由である。しかし、国会図書館での資料公開により、調査対象となる資料が大幅に増大して大量のカラー複写が必要となること、また国立国会図書館での調査の機会も増えるため、それらの費用として次年度使用額を充当する。
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Research Products
(1 results)
