2017 Fiscal Year Research-status Report
地域雇用の非正規化:国際分業の地域労働市場への影響
Project/Area Number |
15K03533
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Research Institution | Institute of Developing Economies, Japan External Trade Organization |
Principal Investigator |
町北 朋洋 独立行政法人日本貿易振興機構アジア経済研究所, 開発研究センター 経済統合研究グループ, 研究員 (70377042)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 雇用の非正規化 / 経済のグローバル化 / アウトソーシング / 外国人労働力 / 国際生産網 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、各地域労働市場がグローバル化に関与する程度の差が地域毎に異なる雇用の非正規化の進展度をどれ位説明するのか、実証分析する。研究の背景として、国際貿易が地域労働市場の調整に与える影響について実証研究が蓄積しつつあるが、企業内における雇用の構成とその変化については、未だ十分な蓄積がない。本研究では、雇用の非正規化という直接的な雇用構成変化の指標を用い、それを各地域労働市場で計測する。同時に、国際生産網の形成と分布に注目しながら、全国の地域労働市場に対するグローバル化の浸透度を測定し、地域経済がグローバル化に深く関与するに伴い、企業・産業内部でどの程度雇用の非正規化が変動したかを把握する。
次に、企業は自社内のどのタスクを自社外にアウトソースするかを決定する理論モデルの作成を行う。そこでは自社内における正規雇用の減少を、正規労働者から非正規労働者・外国へのタスクのアウトソーシングとして捉え、自社内部での非正規雇用の増大から外国への業務移転までを統一的に表現する。つまり、雇用の非正規化は外国への業務移転の一歩手前の状態としてモデルを作成し、雇用の非正規化が起きやすい条件、外国への業務移転にまで至る条件を理論的に明らかにする。
最後に、過去30年程度の地域労働市場データを用いて、理論モデルが指し示す実証仮説のテストと頑健性の確認を行う。 昨年度までに地域労働市場における非正規雇用に関する統計的事実発掘に注力し、パートタイム労働者のみならず、若年無業者(2016年3月時点の「労働力調査」で約79万人)の地域分布の把握を行った。更に、技能実習生を含めた日本の外国人労働力の地域分布についても労働供給・需要面から再整理を行い、外国人労働力の立地パターンは在留資格別に大きく異なることを把握した。更に、資本設備リース化についても地域レベルのデータを整備している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
地域労働市場の変化を、経済のグローバル化だけでなく、外国人労働力の導入や、資本設備のリース化という面からも把握する必要が出てきたため、これらの新しい変数についても地域レベルのより精緻かつ長期のデータベースを追加的に整備する必要が出てきた。しかしながら、研究全体の方針に影響を与えるものではなく、むしろ地域雇用の非正規化の源泉をより精緻に把握するために必要な作業でもあり、作業を継続中である。
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Strategy for Future Research Activity |
理論面では、タスク・アウトソーシングの理論モデルを用いて、自社内部での非正規雇用の増と外国への業務移転を統表現するモデルを作成する。このモデルを用いて、自社の非正規雇用割合の減少を雇用の非正規化と外国への業務移転の進行の和として表現し、雇用の非正規化が直接経済のグローバル化と結びついているという仮説を導出する。実証面ではデータベースの精緻化、長期化を進めている。
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Causes of Carryover |
地域雇用の非正規化についてのデータベースをより精緻化、長期化する必要が生じ、昨年度はその作業に集中し、当初予定していた学会発表、外国出張、英文校正、研究補助員の雇用等を行うことができなかった。このため、翌年度に約100万円を請求し、これを学会発表、外国出張、英文校正等、研究発表のための費用として使用を計画している。
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