2016 Fiscal Year Research-status Report
将来の出来事の発生確率がわからない場合の非完備市場における取引の研究
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15K03546
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Research Institution | Hokkai-Gakuen University |
Principal Investigator |
吉川 大介 北海学園大学, 経営学部, 准教授 (90735424)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 不確実性 / モデル・リスク / 効用無差別価格 / 派生証券市場 |
Outline of Annual Research Achievements |
派生証券市場に関する初年度までの研究により、金融資産の将来の分布について十分な情報を持たないまま特にリスクに備えた引当てをおかない投資家は市場に参加することさえできないことが明らかになった。 この結果を論文にまとめ、"Analyzing Equilibrium in Incomplete Markets with Model Uncertainty"としてInternational Review of Financeへ投稿し掲載許可を得た。 ただし、ここまでの研究では投資家の選好のタイプは指数効用に限定していたので、2016年度においては効用関数をより一般のInada条件を満たす凹関数に拡張して議論を展開した。そして、特に金融資産の将来の分布について情報を持たない代わりにリスクに備え引き当てを行う投資家に焦点をあてた分析を行い、派生証券価格の均衡価格の導出を行った。 具体的には、上記したより一般の効用関数のもとで投資家がどのような価格を市場にオファーするかを以下の4つの段階を経て順次分析した。(i)金融資産に関する十分な情報をもたずリスク引き当てをあてない(ii)十分な情報を持つがリスク引き当てはあてない(iii)十分な情報をもち、リスク引き当ても行う。以上の3つのケースについて分析したのち、最後に(iv)情報を持たないがリスク引き当てを行う投資家のオファー価格を導出した。 その結果、市場における買い手に対する売り手の割合の増加は派生証券価格を増加させるという直感に合致する結論が得られただけでなく、両者の割合は市場における派生証券の取引量にはなんらの影響も及ぼさないという新たな知見を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定では、指数型の効用関数を仮定したうえで派生証券市場の分析を行った後、原資産市場の分析を行う予定だった。そして、その後に可能であれば一般化した効用関数での分析を行うこととしていた。しかし、研究を行う中で、一般化した効用関数のもとでの分析も見通しがついたので、実施してみたところ想定通りの結果が得られた。 以上の成果から、研究は予定通り順調に進んでいると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
上記した2016年度の成果をまとめたワーキングペーパーの査読付き学術雑誌への掲載を目指すとともに内外の学会での発表を行い研究成果のアピールに努める。 また派生証券だけでなく原資産の取引についても、不確実性がある中で投資家がどのようにふるまうかについて分析を進める。
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Causes of Carryover |
2016年度中の成果をまとめたワーキングペーパーについて英文校正および学術雑誌への投稿にあてるための費用として40000円を予定していたが、予算執行期間中にはワーキングペーパーは完成したものの英文校正を依頼する時間がなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
ワーキングペーパーの英文校正および学術雑誌への投稿費に充てる予定である。
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Research Products
(2 results)