2016 Fiscal Year Research-status Report
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15K03617
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
牛島 辰男 慶應義塾大学, 商学部(三田), 教授 (80365014)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 多角化 / 財務政策 / 従業員給与 / 役員報酬 / 内部資本市場 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度においては、多角化が企業の財務政策(資本構造)に及ぼす影響の分析を日本語、英語双方の論文としてまとめると共に、多角化が従業員給与と役員報酬にもたらす効果の分析を行った。
前者の分析では多角化が企業の財務柔軟性を高め、より高いレバレッジ(負債依存度)と低い現金保有を可能にすることを明らかにした。こうした傾向を日本企業について明らかにするのは、本研究が初めてである。日本語論文は、書籍の一章とし発表済みである。英語論文は、独立行政法人経済産業研究所のディスカッションペーパーとして公開した。また、分析内容をさらに充実させたものを、国際学術誌へと投稿済み(査読審査中)である。
従業員給与と役員報酬については、両者の分析を1つの英語論文にまとめたものを作成し、Asian Finance Associationの年次大会(タイ)とWorld Finance Conference(米国)にて報告し、貴重なコメントを得た。その後、分析の焦点をより明確にするため、従業員給与の分析のみを取りだし、独立した英語論文としてまとめた。この論文の主たる発見は、多角化が賃金に及ぼす影響が、労働組合の有無など従業員の交渉力により質的に差異化されることである。こうした傾向は国内外で報告されておらず、独自性の高い成果といえる。論文は経済産業研究所のディスカッションペーパーとして公開した。また、同研究所や、政策投資銀行設備投資研究所、早稲田大学といった機関におけるワークショップ、研究会で報告を行い、フィードバックを得た。それらを踏まえた上で、分析内容の一層の充実と国際学術誌への投稿に向けて論文の改訂を進めているところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上述のように財務政策の分析については、すでに具体的な成果を生み出している。査読審査中の英語論文については、修正のための作業が必要になる可能性があるものの、実質的な分析はすでに終了している。
従業員給与の分析も主要な貢献となる結果を既に得ており、現在における作業の中心は論文としての取りまとめと、学会、研究会等における発表になっている。これは当初計画よりも速いペースでの進捗である。
経営者報酬の分析も概ね終了しているが、分析方法等に改善の余地がある。ただ、研究課題の中心は財務政策と従業員給与の分析であるため、総じて順調に進展しているものと判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
財務政策の分析については、投稿中の英語論文の修正作業が中心となる。なるべく平成29年度中に受理となるように、優先的に作業を進めていきたい。この分析について、平成29年度における新たな学会等での報告は予定していない。
従業員給与の分析は、英語論文の完成と海外での学会報告が中心となる。経営学系とファイナンス系、双方の学会で報告の予定である。また、平成29年度中のなるべく早い段階で、国際学術誌への投稿を行い、出版へとつなげていきたい。
経営者報酬の分析については、核となる結果を確定させるべく、実証分析をさらに進めていく予定である。必要に応じて、データの追加取得を行う。
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Causes of Carryover |
平成28年12月に国際学会(フランス)での研究報告を予定していたものの、校務のため参加することができなかった。このため、未使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
未使用分は、平成29年度における学会発表(海外)のための旅費として使用する計画である。
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Research Products
(3 results)