2016 Fiscal Year Research-status Report
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15K03642
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
木下 幸雄 岩手大学, 農学部, 准教授 (90323477)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 農業経営 / 人的資源管理 / 経営者能力 / 稲作 / 構造方程式モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
日本農業の成長には、農業経営の革新が不可欠である。そこで本研究では、1)農業経営力の定性的・定量的把握とその理論的考察、2)農業経営力の国際比較、3)農業経営力を具現化する実践的方策の検討を行っている。 昨年度と比べて今年度は、農業経営力の定性的・定量的把握と理論化、ならびに農業経営力の国際比較に関して深化を図ることができた。これまでに収集してきたデータについて多角的に分析を進める作業に取り組み、多くの有意義な知見を得ることができた。農外から参入した農業経営体と農家出自の農業法人とを比較したところ、いずれも、概して経営の企業化(近代化)が進んでいないことが明らかとなった。この結果は、農外参入企業の経営力優位が専門家の一般的な見解であることに対して、重要な知見であるといえる。したがって、農業経営力の向上は、従来の農業経営体と農外参入企業の双方に共通した基本的な課題であることを浮き彫りにし、農業経営の仕組みづくりとマネジメントをどう実践するかが問われているといえる。これまでの研究成果は、農業経営者等向けのテキストや報告書として刊行することによって社会還元を図っており、その実践的活用が期待されるところである。 また、競争環境が激変する日本の稲作経営体について、その農業経営力の現状と構造、さらには経営力の観点から競争優位性を解明することに成功しており、その成果を国際的に発信することにも努めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
多様な属性を有する経営体について多角的な分析を行ったことで、農業経営力創成のメカニズムを実証的に解明することに成功し、その理論的考察から有意義な知見が得られている。 これらの研究成果は、実践性の観点からその一部を取り込みつつ農業経営者・指導者向けのテキストとして刊行したところでもある。
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Strategy for Future Research Activity |
農外参入企業の経営力データを分析した結果、農業経営力創成の特徴とメカニズムが明らかとなったので、国内学会と国際学会で年度前半期に公表する予定である(農外参入企業のマネジメントは優れているか?:Are emerging farming corporations from non-agricultural sector superior in management to conventional farmers in Japan?)。 また、米国カリフォルニア州とオーストラリアの稲作農場を比較対象とし、日本の米作法人経営のベンチマーキングを試みる(書籍化予定)。さらに、ドイツの研究機関と連携して海外での農業経営力調査の展開を図り、日本の農業経営力の位置づけを明確にする。 年度後半期には、国内外の農業分野の経営教育をレビューし、その現代的特徴と実践性について検証する。これらの調査結果をもとに、農業経営力の観点から日本農業の国際競争力を評価し、農業経営政策に関する提言に触れる。そして、実践農業経営学の基本的コンセプトの提示を試みたい。
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Causes of Carryover |
海外調査の準備が遅れたため、そのための調査旅行を実施できなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
国際学会出席と合わせて海外調査を行うための外国旅費にあてる。
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Research Products
(5 results)