2015 Fiscal Year Research-status Report
日本の製造業におけるキーパーソン人材と組織の関係分析
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15K03715
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Research Institution | Ritsumeikan Asia Pacific University |
Principal Investigator |
藤井 誠一 立命館アジア太平洋大学, 国際経営学部, 准教授 (00623430)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
李 根煕 立命館アジア太平洋大学, 国際経営学部, 准教授 (20635487)
中村 友哉 広島大学, 社会科学研究科, 特任講師 (20618128)
川上 智子 早稲田大学, 商学学術院, 教授 (10330169)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 新製品開発 / ラジカルイノベーション / キーパーソン人材 / プロダクト・チャンピオン / シリアル・イノベーター |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、日本の製造業を対象にして、新製品開発の成功要因であるキーパーソン人材と組織との関係に焦点を当て、既存研究の主流であった単発的なプロジェクトでの成功要因に留まらず、長期的スパンでのキーパーソン人材の組織的育成や、世代間での知識継承の方法について、調査ならびに分析を行う。平成27年度は、次の3つの施策を中心に進めた。 (1)先行研究のレビュー:新製品開発の成功に貢献する人材に関する先行研究を探索し、レビューを行った。これまではキーパーソン人材としてのプロダクト・チャンピオンに焦点を当てて研究を進めてきたが、他のキーパーソン人材と比較することでプロダクト・チャンピオンの特徴をより明確にすること、また他のキーパーソン人材の概念も取り入れた方が良いこと、の見識を得た。 (2)海外研究者との意見交換:キーパーソン人材に詳しい海外の研究者と、メールや学会で意見交換を行った。その中で、別のキーパーソンであるシリアル・イノベーターの研究者グループの一人と情報交換を行う事ができた。このグループの研究は、シリアル・イノベーターとプロダクト・チャンピオンやイノベーターとの関係を定義しており、「新製品開発のプロセスの違いにより異なるキーパーソン人材のニーズがある」との情報を得た。 (3)定量調査の実施:先行研究や海外研究者との意見交換から浮かび上がった情報を基に、約100問の設問を設定した。これらは、新製品開発の成功要因とそれに貢献するキーパーソン人材に関わる関係性を明らかにしようとするものである。その設問集を用いて、300万人以上の登録者がいるネット調査会社に委託し、調査票調査を実施した。その結果、目標の100サンプルが収集でき、また回答内容も充実したものであった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度において、順調に推移したと考える根拠は、主に三つある。 まず一つ目は、キーパーソン人材の概念が広がったことである。これまではプロダクト・チャンピオンを中心に行ってきたが、前回の科研費研究課題(基盤C:24530514)で行ったインタビュー調査ではこの概念に十分には当てはまらない人材を確認していた。このため、平成27年度から始まった今回の研究では、他の概念を取り込むことを意識し、より分野を広げて研究に取り掛かった。先行研究のレビューや海外研究者との意見交換から、変革型リーダーシップ、ゲートキーパー、パワープロモーター、社内起業家、などいくつかの他の人材に注目した方が良いことが分かり、平成27年度の調査では特にシリアル・イノベーターも取り入れた形で調査を行うことができた。 次に、予定していた定量調査を行う事ができた点である。特に心配していたのは、設問数の問題と委託先の登録者の質の整合問題であったが、サンプル数目標をクリアすることができた。委託した外注先は、消費者あるいは一般ユーザー向けの社会系あるいは政府系の調査が多いという事であり、ビジネスを対象とした調査経験が少ないという事も事前に聞いていたが、自由記述の内容を見る限り、調査意図を十分に反映した回答となっていた。 最後に、これら定量調査時にもう一つの目標であった”次のステップのためのきっかけ作り”も行うことができた。100サンプル(100人の回答者)収集時に調査結果をフィードバックするという形を取ったことで、平成28年度に展開する予定であるインタビュー調査への協力を依頼するきっかけを作る事が出来た。具体的には、協力依頼用連絡先リストを入手することができた。 このように平成27年度は、キーパーソン人材の概念をより拡充させながら、さらなる調査への確実な足掛かりを構築することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は、次の施策を実施する予定である。 (1)インタビュー調査の実施:平成27年度に実施した定量調査は、設問数が多い。また、キーパーソン人材の概念やその他新製品開発の成功要因の概念を盛り込んだことで、様々な分析の切り口が可能となっている。現状は、概要の分析を済ませたところであり、いくつかのモデルを設定した上で、因果関係を明らかにするような分析を行う事を目標としている。その上で、定量調査協力者に対してコンタクトを行い、インタビュー調査を実現する予定である。4人の研究者間で分担を行い、合計で20社(20名)以上のインタビューを実施する予定である。 (2)海外の研究者との交流の継続:3年連続で参加してきた米国のPDMA(Product Development and Management Association)や未参加である欧州のEIASM(the European Institute for Advanced Studies in Management)の国際会議、へ参加しながら、そこに集まる研究者との交流を図る。平成27年度は、概念の拡充に大きな貢献を果たしており、地道な情報交換を行う。平成28年度6月に開催されるEIASMへの参加登録や事前の情報交換はすでに済ませており、何らかの接触が可能な状況にある。 (3)海外での学会発表への準備:新製品開発あるいはイノベーションを中心的に取り扱っている米国のPDMAあるいは欧州のEIASMの国際会議で、平成27年度の定量調査あるいは平成28年度のインタビュー調査(定性調査)のいずれか、あるいは両方、の内容を盛り込んだ学会発表の準備をする予定である。このためには、基盤となるコンセプトを十分に練ることが求められるため、研究者間で十分な議論を実施する。
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